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薬屋のひとりごと9 /日向夏

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薬屋のひとりごと9 (ヒーロー文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年2月刊。
前巻ラストのあの衝撃から続く第9巻。
そして今回もまた最後の最後に衝撃が走り・・・・・・めちゃめちゃびっくりした・・・!

☆あらすじ☆
シリーズ累計600万部! 待望の最新刊では二人の「その後」が明らかに! 猫猫と壬氏が船旅に?
壬氏の一世一代の行動の結果、とんでもない秘密を共有することとなってしまった猫猫。
折しも後宮は年末年始の休暇に入る時期。
実家に帰りたくない姚は、猫猫の家に泊まりたいと言い出した。
とはいえお嬢様を花街に連れていくわけにもいかず、姚と燕燕は紹介された羅半の家に泊まることになる。
一方、口外できない怪我を負った壬氏のために、猫猫は秘密裏に壬氏のもとに通わなくてはならなかった。
できる範囲で治療を施していくが、医官付き官女という曖昧な立場に悩まされる。
壬氏が今後さらに怪我を負わないとも限らないが、医官にはなれない猫猫は医術を学ぶことはできない。
そこで、羅門に医術の教えを乞おうと決めるのだが――。

以下、ネタバレありの感想です。

 

前巻の感想で「お肉焼けるニオイと共に一生残りそうな記憶をプレゼント」とブログに書いたんですが、壬氏の手当をしながら猫猫が焼肉食べたいとか考えていて笑いました。ハートが強すぎる。やはり似合いのカップルなのでは??

 

で、腹に重い火傷を負ったわけだから、その治療が数日で簡単に終わるはずもなく。
今回はいつもよりも壬氏と猫猫が一緒にいるシーンが多かった気がします。
楽しい。愉しい。壬氏さま、猫猫に甲斐甲斐しく手当されてるの、めちゃめちゃ嬉しそうですよね。
お腹にさらしを巻く時って抱きつくような格好になるのかな。幸せ者め〜〜(ヤンデレ〜〜〜)

 

仕事はできるはずなのに、頭も切れるはずなのに、猫猫のことになると色々な螺子が吹っ飛んでしまう壬氏。
またいつ大怪我をしでかすか分からない壬氏のために、猫猫も自分の技術を更に向上させることを決意します。
このあたり、流れ的に自然な帰結なんだけど、なんだかんだ言って壬氏のために行動してる猫猫の姿にムズムズします。
まぁ半強制的な道ではあるんだけど。それは分かってるんだけどね。
でも壬氏とこれからも付き合うこと(付きまとわれること)が前提っていうのが、こう、ね。

 

そんなこんなで、物語は猫猫修行回のような方向へ。

 

必要となるのは外科的な医療技術。
そこで踏み込んでいくのは、人体解剖の禁忌。

医学や科学の発展と倫理の衝突という問題は、人類史に常に付きまとうものなのでしょうが、それに正面から触れつつも猫猫自身が揺らがないのは流石でした。
そのへんの忌避感を燕燕たちを通して描いていたのも上手かったなぁ。
猫猫が突き抜けて理性的かつ合理的なぶん、この世界観における常識人の配置って大事ですよね。

 

もはや薬屋なのか医者なのか分からなくなってきたところで、それを見越すかのように猫猫が「私は薬屋だから」とアイデンティティを再確認していたのも印象的でした。
彼女の誇りは「薬屋」であること。
必要な技術は貪欲に手に入れるけれど、根幹にあるものは決してぶれない。だってそれは唯一敬愛する人が与えてくれたものだから。
こういうところが好きな主人公だな、と改めて思いました。軸が揺れない安定感。
猫猫の羅門に対する愛情って、彼女の人間くさい部分を一番瑞々しく描いてくれていると思うんです。ある意味かなりのファザコンかもしれない(実父にはアレだが)

 

そんな猫猫が壬氏の中に羅門との共通点をみて、だからこそ放っておけないと思うのも、言わば当然の心の動きなのかもしれません。
確かに変なところ(損なところ)が似ている二人なのかも。
情を捨てられない人を、それで自分を削る人を、もどかしくも腹立たしく思う。
そういう猫猫の心にこそ、私は愛を感じてしまうのです。

 

でも、そうは言っても、ラストのアレはびっくりしたよね!!!!

 

壁ドンして(「壁凸」笑った)優しい言葉をかけて、そ、そして、え、え、じ、自分から、ほっぺに???(動揺)
諦めたというか腹をくくったというか開き直ったというか、これはそういうことで宜しいか?
ていうか目隠ししてる挿絵のエモさやっっっば・・・・・・

 

とりあえず壬氏さまおめでとうございます。

でもやっぱマゾじゃん!そこは抱擁でよかったじゃん!なぜビンタ!?しかもおかわり希望!?
強めに鞭を打ったあとのご褒美の飴が甘すぎて目覚めちゃうやつじゃないですか・・・・・・いやもう目覚めてたか・・・・・・

 

気づけば猫猫も二十歳になっているわけで、これはそろそろお赤飯をスタンバイしても良いんでしょうか。
楽しみすぎるーーー!

 

さてさて、今回も最後の最後で爆弾を放り投げて終わってくれましたが、物語全体の内容的にも新たな展開に入りました。

玉葉后の故郷である西都でみられる不穏な動き。
羅漢を動かさねばならないほどのキナ臭い気配。

一体何が起こっているのでしょうか。もしやラブコメに浮かれてる場合じゃない感じ?

 

ところでヤブ医者の名前はグエンと言うそうですね。なんだか聞き覚えがある響きだ。
ここにきてやぶが後宮医官になった経緯が明らかになったけれど、なんというか、うん。大した話ではないんだけど大した運だと思いました。きっと今の状況(囮役)でもやぶは運だけで切り抜けられるよ。間違いない。
結構ひどい扱い受けてるのに、幸せそうなんですよね。恋する乙女の顔をしてるし(あのやぶと壬氏のシーンに挿絵指定したの誰ですか!良い仕事だ!)

 

それと今回目立っていたのは、新キャラ・をはじめとする馬ファミリー。
高順さんのご家族、濃すぎません??
特に雀さんのキャラがとても好きです。諜報の一族の出身らしいけれど、なんとも忍者っぽい。変な足音たてるのもわざとでしょ。
普段から目立つ動きをしていた方が、それを止めた時に誰も存在を気づかないとか・・・・・・それ変装のテクじゃん!これは曲者!
書籍版でもかなりのオモシロお姉さんですが、WEB版よりも自重してるらしい。気になるから後で見に行こうと思います。

 

さてさて、濃厚なメンツで始まった新展開。
パパも張り切っていますが、猫猫と壬氏の関係に割り込めるのでしょうか。今回の件を知ったらやばそう。壬氏の命が。

 

続きも楽しみです。
あ、今回の特装版のドラマCDはちゃんと買ったんですが、まだ聞けていません。こちらも早く聞かねば!

created by Rinker
主婦の友社
著者 日向夏 イラストレータ しのとうこ

 


異世界拷問姫9 /綾里けいし

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異世界拷問姫9 (MF文庫J)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2020年2月刊。
醜悪で美麗なダークファンタジー完結巻。
まるでクライマックスのような苦難を、繰り返し描いてきたシリーズでした。
いったい何度「あれよりも酷い地獄があったのか?」と震えたことか。
そしてこれが本当のクライマックス。
一気に駆け抜けた最終巻でした。最後までとても面白かったです。

☆あらすじ☆
至高のダークファンタジー、終劇。
「どうか、皆、みーんな、一緒に死んでください」
最愛の父・ルイスを失い、【異世界拷問姫】アリスは世界を壊し始める。
かつて最愛の従者・瀬名櫂人を失った【拷問姫】エリザベートは世界を守り続ける。
それは鏡映し、共にあり得た可能性。
それ故に決定的に交わらない二つの道。
だから二人の拷問姫は“彼ら”の遺志を継ぎ、各々に世界へと立ち向かう。
「どうして、私だけお父様を失うの? 『瀬名櫂人』のエリザベートは生きているのに!」
「この【拷問姫】が全てを賭けるのだ──【異世界拷問姫】が受けずして、どうする?」
これが神話に至る物語。
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る至高のダークファンタジー、最終巻。

以下、ネタバレありの感想です。

 

愛する者の願いによって、世界を滅ぼそうとするアリス。
愛する者に救われたから、世界を守ると決めたエリザベート。

二人の拷問姫の衝突は最終局面へと向かい、エリザベートは絶望的な戦いへ身を投じていくのです。

 

最後の最後まで緊張から解放されない最終巻でした。
一手間違えれば世界は滅ぶ。そのギリギリの駆け引きのなかで、あっさりと消えていく数多の命。
誰も彼もが世界を守るため凛々しく立ち上がり、そして虚しく散っていく。
これが滅びの美しさなのでしょうか。そのあまりに無情な結末が深く心に残りました。

 

特に涙なくして読めなかったのが、イザベラとジャンヌの最期。
もうね、めちゃめちゃ泣いた。
二人の間に悲壮感はなくて、あくまでもいつも通りで、どこまでも愛に満ちていて、余計に泣いた。
病めるときも、健やかなるときも、・・・・・・たとえ犬死にするときも。
二人は共に在り、共に戦い、共に死ぬのです。
それはあまりにも美しく、どこまでも残酷で。
その鮮烈な姿が心に焼き付いて消えないんだけど、本当にどうしてくれるんだ?思い出してまた泣くんですけど!

 

戦った人の命があっさりと消え、それを悼む暇もなく突き進む最終決戦。
敵であるアリスが憎みきれたらまだ良かったのに、それすらも迷わせる作者のドSっぷりよ。
アリスはあくまでも悲運の子どもであり、どこまでも不幸な娘にしか見えなくてね・・・・・・
かと言って、はっきりとトドメが刺されなかったのが救いかと言われると「いや、どうかな・・・」となるんです。
壊れてしまったアリスは、きっとあの世界でひとりぼっちだよ。それが彼女が受けるべき報いなのかもしれないけれど。

 

このアリスの顛末、割と唐突だったんですよね。
でもそれがこのシリーズらしいな、とも感じました。
突如として理不尽に始まった地獄は、突如として理不尽に終わるのです・・・・・・これこそがまさに神の所業なのかもしれない。

 

決死の覚悟で戦い抜き、多くの仲間を失って、ようやく阻止できた世界滅亡。
個人的に一番肝心なのは、エリザベートは救われるのか?という点だったのだけど、これに関しては大満足の結末でした。
時間はかかったけれど、とても納得できた。そして安心しました。本当に良かった。本当に。

 

あと、何気に生き残っていたリュートの姿にはホロっと涙が。
死にそうで死なないキャラかと思っていただけに中盤のショックが半端なかったのだけど、やはり彼は死にそうで死なないキャラでした。大好き。死んだ人々の分まで長生きしてほしい・・・!

 

最後の最後まで残酷で美しく、心に残るダークファンタジーでした。
とても面白かったです。綾里さんの次回作もめちゃくちゃ期待しています!

 

余談。
この最終巻のカラーイラスト、最高すぎません??
表紙の部分だけでも素晴らしいエモさ(読む前から嫌な予感をプンプンさせる美しさ)だったんだけど、中を開いてみたら更に凄い一枚絵がでてきて感動しました。
みんな安らかに眠っている・・・・・・とても安らかに・・・・・・

 

モノノケ踊りて、絵師が狩る。―月下鴨川奇譚― /水守糸子

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モノノケ踊りて、絵師が狩る。 ―月下鴨川奇譚― (集英社オレンジ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★★
2020年2月刊。
これはやばい。やばい小説が出てきたぞ・・・!

怪奇現象を引き起こす妖怪画を探しだし、その憑き物落としを行う男女を描いた現代ファンタジー。
妖怪退治系のお話としても面白いのですが、本作で何よりも推したいのは「主人公二人の関係性」です。

過保護な兄と世話のやける妹のような「幼なじみ」の二人。
一見すると優しくて穏やかな雰囲気なのに、その奥底には荒れ狂うような執着と情念が秘められているのです。

誰よりも近くて、もどかしいほど遠い。そして遠いからこそ執着する。
届きそうで届かないものにこそ、人は必死に手を伸ばすのかもしれません。なりふり構わず、本音を隠して。

二人の関係に隠された業の深さを知れば、その運命的なしがらみに、読者はときめきが止まらなくなることでしょう。
はぁ、もう、どうしましょうか。私の胸の動悸がやばい。

あまりにも性癖に刺さる作品でした。
求める女と、つれない男。焦がれる男と、気づかぬ女。
そういうのお好きな人、ぜひ読みましょう。

☆あらすじ☆
江戸末期の絵師・月舟が描いた妖怪画には、本物が封じ込められているという。そして現代。月舟の子孫・詩子は、美大に通う学生だが、もうひとつの顔があった。散逸した月舟の妖怪画を探し、憑きものを落とす家業を継いでいたのだ。幼馴染みの青年・七森が持ち込んだ情報によると、月舟の絵を所有する画廊のオーナーが足を火で炙られるような痛みを訴えているらしく?
【目次】一 猫又/二 ろくろ首/三 面霊気/四 鬼女/結 無題

以下、ネタバレありの感想です。

 

江戸時代末期に活躍した妖怪絵師・月舟による百鬼夜行の連作「月舟シリーズ」。
月舟の死後散逸したその連作には、本物のモノノケが封じられ、持ち主を憑き殺すという噂があった。

月舟の子孫である時川詩子は、代々受け継がれた技によって憑き物落としをすることができる女性絵師。
自分ではモノノケを見ることができない詩子は、美術研究所に勤める幼馴染・七森叶の目を借りて、彼とともに「月舟シリーズ」が引き起こす騒動に首を突っ込んでいくのです。

 

ジャンル的には、男女バディの妖怪退治ものに当たるでしょうか。
モノノケが見えない拝み屋の女と、彼女に変わってモノノケを見る男。
七森の言葉に従って詩子はモノノケの姿を描き、そうして封じ込めたモノノケたちを異界に返す。
それを何度も繰り返していく2人組のお話なのです。

 

そんな彼らの憑き物落としを通して、連作短編形式に描かれていくのは、絵の所有者たちが抱える人間ドラマ。
各エピソードの読み口は苦かったり優しかったりと様々なのだけど、その結末の「解釈」が特に面白かった。
目の前に提示された「絵」は同じなのに、人によって見方も意味あいも変わる。
それはまるで絵画鑑賞のようだし、その一筋縄ではいかない読後感が楽しくて仕方ないんです。
七森の現実的な解釈と、詩子の感傷的な解釈の対比も印象的なんですよねぇ。

 

妖怪の逸話と所有者たちの事情をリンクさせるところも絶妙でした。
個人的には「ろくろ首」にまつわる絵師とパトロンの歪んだ関係がお気に入りだったりして。
身勝手に自分を捕らえた男へ、首をするすると伸ばして口づけする女。
こういう他人の理解を必要としない閉じられた関係、とても好きですね・・・・・・その末路も悪夢的で実に良い。

 

ただし、本作で最もエモくて性癖に刺さる関係性といえば、主人公である詩子と七森の関係なのですが。

 

この二人の関係については何から語れば良いのか、どんな言葉で表現すればいいのか、とても難しくて悩みます。
エモい!って叫ぶだけじゃ伝わらないよな・・・・・・でもエモいんだ。

人とモノノケの間で絵筆をとり、将来有望な絵師でもある詩子。
詩子の良き理解者であり、憑き物落としの協力者でもある七森。

幼馴染で仕事のパートナーとくれば、そこに甘酸っぱい感情を期待してしまう私ですが、いやぁ、ちょっと予想していた以上に途方もないモノが出てきてしまいました。

 

まず心を鷲掴みにされたのは、詩子の七森に対する執着の底知れなさ。

第一印象はあまり他人に興味がない浮世離れした少女、という感じだったのに。
幼い日の七森との思い出はガラス細工のように美しく、それを大切に心にしまいこむ姿は恋する乙女さながらの可憐さなのに。

しかし、物語が進むにつれて、暴きたて抉りだすように描かれるのは、詩子の中にある怖い怖い女の情念なのです。

 

わたしはいっとう大事なものは、縛りつけて所有する。そういう女だ。

重すぎる愛情を他の男で発散させた母と違い、詩子の愛はただ一人に注ぎ尽くされるのでしょう。
逃げないように、どこにも行かないように、自分のもとに居続けるように。
あどけない少女のように手を伸ばして、したたかな女のように絡め取ろうとする詩子。
なんて淫靡で純粋な執着だろうか。そして強欲。
こわいこわい。好きです、こういう拗らせたヒロイン。

 

その執着が向けられる七森はというと、これがまたクセ者な男なんですよ。

先祖代々受け継がれてきた、天才絵師へ執着する贋作師の血。
贋作師としての七森の苦悩や葛藤に集中していたら不意打ちで殴られた!って人は私だけではないはず。

相手に執着しているのは詩子だけなのか。
捕らえたのは、囚われたのは、果たしてどちらの方なのか。

先祖の妄執を無自覚に叶えてしまった気持ちはどう?って聞きたい。
まるで呪いのように運命的。確かに鬼が笑うほどに根が深い関係です。でもそれが良いんじゃあないか・・・・・・

 

それでも、時川詩子という絵師に、最初に狂わされたのは俺だ。

このセリフで更にエモさが爆発。
狂えばいいのに、と詩子は願っていたのに。
あの子の執着を素知らぬ顔でかわしといて、よくもまぁぬけぬけと・・・・・・ずるい男め!(好き!)

自分が最初の一人であることを確認する七森の心は何を意味するのでしょうか。
優越感だろうか。誇らしさだろうか。
何にせよ、ただならぬ執着だけはひしひしと伝わってきますよね。

詩子に対する憧憬とか、過保護な振る舞いとか、そういう七森の(ニヤニヤしてしまう)心の機微はもとから丁寧に描かれていたんだけど、この最後の総括はあまりにも秀逸でした。

 

必死に縛り付けようとする詩子だけが知らない七森の本音。
いっとう大事なものが、誰をいっとう贔屓にしているのか。彼女が知るのはいつになるのやら。
それがまた滑稽で可愛らしく、切なくてもどかしい二人の「近くて遠い距離」を改めて感じさせるのです。
きっとこれからも隣にいながら、まだ届かないと求め続けるのでしょう。はぁ、、、美味しいな!

 

とても楽しかったです。
めちゃめちゃ良い作品を読めて大満足。最高でした〜〜

 

2020年2月のおすすめライトノベル

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先月の記事に「うがい手洗いを徹底します」と書いたあと、感染性胃腸炎になりました。つらかった。
なんかもう病気リスクってそこらへんに転がってるもんですね。

そんな2月でしたが、面白い作品が多くてラノベ読み的には大満足でした。
それでは特に面白かった作品を紹介していきます。どうぞお付き合いくださいませ。

 


2月発売の新作の中で、最も私の性癖に刺さった作品がこちら。

持ち主を憑き殺す妖怪画を探し、その憑き物落としを行う男女の物語。
現代舞台の妖怪退治ものとしても面白いのだけど、ぜひ注目していただきたいのは主役2人の関係性です。

優しくて穏やかな「幼馴染」という関係の奥に潜む、心を掻き乱すような情念の渦。
近くて遠い人だからこそ、なりふり構わず、本音を隠して、執着する。

二人の関係に秘められた業の深さを知れば、動悸が激しくなること間違いなしです。
彼らがなぜ二人で憑き物落としをしてるのか・・・・・・ぜひ答えを知って悶えてほしい。

 


『ぬばたまおろち、しらたまおろち』の白鷺あおいさんによる、魔女学校三部作開幕。

時は大正、舞台は横浜。そして今度の主役は魔女学校に通う妖怪3人娘です。
レトロでモダンでとびきり可愛い大正女学生の魅力が詰まっている作品だと思います。

妖怪娘の可愛さとトンデモなさを見るがいい!

横浜から始まる物語は意外な方向にすっ飛んでいくのだけど、そこもまた(妖怪女学生ものとしての)味があって楽しいんですよ。
続きも期待できそうな感じでワクワクします。

 

滅んだ世界で旅をする話がお好きな方、ぜひどうぞ。
多くの人が結晶と化した異世界。
そこで出会い、共に旅をするようになった迷い人の少年とハーフエルフの少女。

たくさんのものを失って、その先に希望があるのかも分からない。
それでも生きていくことには、どんな意味はあるのでしょうか。

二人の旅を通して描かれる、孤独と優しさがとても印象に残る物語でした。
他には何もないからこそ、大切なことが鮮やかに浮かび上がるのかもしれません。

 


明るくて笑い上戸な後輩女子と、訳アリで挙動不審な先輩男子の新米恋人ラブコメ。

初々しくて可愛いイチャラブなんだけど、先輩からヒロインに向けられた愛が強すぎてニヤニヤが止まらない作品です。この男、愛情がストレートすぎる。
ヒロインもすごく良い子なんですよ。大天使。これは惚れるよ。

何気に変化球ラブコメなんだけど詳しく言うとネタバレになるのかもしれないので、、、ぜひ実際に確かめてみてくださいね。

 

結婚初夜、謎の男に殺されてしまった主人公。
無残な死を遂げるはずだった彼女を待っていたのは、初夜の数時間を何度も繰り返し、何度も殺されるというデスループ。

犯人は誰なのか。狙いは何なのか。そもそも、このループは一体・・・?
果たして主人公は「犯人絶対泣かす!」という目標をやり遂げ、このループから脱出することができるのでしょうか。

猪突猛進脳筋ヒロインのキャラが魅力的で、ループミステリーとしてもラブコメとしても楽しい作品でした。
たった数時間を延々と繰り返すんだけど、全く展開に飽きさせない構成がとても上手いと思う。
少し消化不良な部分もあるのだけど、そこらへんは続刊が出ることに期待しつつ(だから皆買おう!)

 


乙女ゲームの悪役女王に転生したことから始まる、処刑エンド回避物語。

言葉がすべて暴言に変換される呪いを抱えたことで、じりじりと迫ってくる破滅の運命。
絶体絶命の事態に追い詰められながらも、協力者を得てを運命を乗り越えようとする主人公の奮闘を描いていきます。

「不思議の国のアリス」をベースにした世界観は可愛いくて、強制ツンデレの主人公と助っ人翻訳機のヒーローの掛け合いは楽しい作品でした。
1冊で綺麗に話をまとめているものの、もう少し続きが読みたいなぁ。
ぜひシリーズ化してほしい新作です。

 


ラノベ作家たちの青春ラブコメ群像劇、14巻にして完結です。
ぶっちゃけすぎな業界事情にも、変人揃いのキャラクターにも、本当にたくさん笑ってしまうシリーズでした。
クライマックスシーンは、ちょっと予想外なくらい心を刺されたし・・・・・・
大満足です。良い作品でした。

 

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KADOKAWA
著者 綾里けいし イラスト 鵜飼沙樹

醜悪で美しいダークファンタジー完結巻。
3巻ごとにクライマックスがくるシリーズでしたが、真のクライマックスはボロボロに泣きました。
本当にすごく良いシリーズだった。。。

 


いぶそう、やっぱりめちゃくちゃ面白いと思うんだ。
まるまる1冊、主人公以外が語り手を努めてこれだけ面白いってどういうことだろうか。
そしてラブコメしてました。いぶそう、やっぱりラブコメだったんだ!?

 


特装版のドラマCD聞きました。
ザガンとネフィのイチャラブは期待通り堪能できたし、予想以上にバルバロス×シャスティルでした。これはすごいぞ。聴いてよかった・・・!

 

created by Rinker
主婦の友社
著者 日向夏 イラストレータ しのとうこ

特装版のドラマCDまだ全部は聴けていません。
本編は「猫猫ーーーー!」って叫びました。ムチが痛いほど舐める飴は甘いんだ!

 

以上です。
世の中が大変な時期ですが、本は読めるので本を読みます。
3月もどうぞよろしくお願い致します。

 

やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中 /永瀬さらさ

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やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中 (角川ビーンズ文庫)

評価:★★★★☆
2020年3月刊。
とっても面白かった!

婚約者に殺される瞬間、なぜか6年前に戻っていた主人公。
身体は10歳の幼女。中身は強大な魔力を操る「軍神令嬢」。
そんなギャップありすぎる存在となった彼女は、本来あるべき未来を物理で捻じ曲げ、人生のやり直しを目指すのです。

その鍵を握るのは、勢いで夫婦になった敵国の皇帝。
乙女ムーブが可愛い皇帝と、匂い立つ幼女趣味疑惑に戦慄する主人公。
この二人の攻防が楽しすぎました。なんて癖が強いラブコメ!

自分は恋に落ちたくないが、相手は落とす!という強い覚悟と甘い罠。愛は戦争。女は度胸。
それぞれの思惑が交錯する中で、果たしてジルは未来をやり直すことができるのか。

武闘派ヒロインならではの格好良いアクションも大満足でした。これは続きも期待できそう!

☆あらすじ☆
人生2周目は、10歳の竜妃サマ!? しかも敵だった陛下に求婚してました
婚約者の王太子から処刑を言い渡された令嬢・ジル。だけど死ぬ間際に、6年前婚約が決まったパーティーに時間が戻る。
破滅ルートを避けるべく、とっさに後ろにいた人に求婚すると最大の敵だった皇帝・ハディス!? 彼が闇落ちする未来を知っている……慌てて撤回するも、喜んだハディスはジルを城へ連れ帰り、ごはんを作る始末。胃袋をつかまれたジルは決めた。
「あなたを必ず更生――いえ、しあわせにします」 いざ、人生やり直し!
累計550万PV突破! WEBの超・話題作!
強すぎた少女×孤独だった陛下の、年の差ラブ・ファンタジー!

以下、ネタバレありの感想です。

 

実妹との禁断愛という婚約者ジェラルド王子の秘密を知ったことで、冤罪をかけられ処刑が決まった主人公ジル・サーヴェル
ジェラルドが放った槍に貫かれた瞬間、気づけばジルは6年前に戻っていた。

しかもそこは、ジルとジェラルド王子の婚約が決まったパーティ会場。

何が起こっているのか分からないものの、王子との婚約だけは避けようと、ジルは適当にそのへんにいた大人に求婚をします。
その相手こそ、先の未来で戦争が起こる敵国・ラーヴェ帝国の皇帝ハディスだったのです。

 

なぜか子どものプロポーズを真に受け、大喜びでジルを国に連れ帰るハディス。
腐れシスコン男から逃げることができたと思ったら、ロリコン疑惑男を釣り上げてしまい、呆然とするジル。

あまりに面白すぎる男運に笑ってしまったのだけど、勿論笑いごとではありません。

 

しかしこの状況はジルにとって都合が良いものでもある。

ハディスは身体が弱いし、心はもっと弱いし、すぐ闇落ちしかけるし、なんか恋愛知識が偏ってるし、そもそも「嫁の条件は14歳以下」という疑惑も問題も山盛りな男。
でもジェラルド王子を退けるには都合が良いし、ハディス自身についても今ならまだ恐怖政治を敷く暴君になることを防げるかもしれない。
何より、ジルはハディスに約束したのです。「わたしが幸せにする」と。

 

だからジルはハディスの更生を目指すことを決意します。
自分の未来と共に、彼を待つ暗い未来もやり直そうとするのです。

 

というわけで闇落ち予定の竜帝陛下を攻略することになった10歳の軍神令嬢。

このヒロインがね、め・・・・・・っちゃくちゃ格好良いんですよ!

魔力がチート級でとにかく強いし、天然タラシ系のイケメンオーラ垂れ流し。
素が出ると軍人(騎士?)っぽくなり、頼りがいもアップ。
アクションシーンは全てが最高に痛快でした。船をぶん投げるシーンが特に好き。

 

そういうヒーロー然としたジルが、「攻略」という言葉がぴったりな感じで、ハディスのハートを握り潰しにかかるんです。
幼女趣味はただの疑惑だったはずなのに、幼女が無闇矢鱈にときめかせるからガチになってるんだけど、どうするのこれ。
やればできるで事案が発生してる!

 

さて、そんな攻略対象の竜帝陛下は一癖も二癖も・・・・・・というか驚きの癖だらけ男でした。
お菓子作りでジルの胃袋をつかもうとしたり、ジルのイケメンムーブにきゅんきゅんして乙女になったり、すごく可愛いヒーローなんだけど、それだけじゃなくて。

彼の精神は現時点ですでにボロボロ。6年待たずともほぼ闇落ち状態。
理性と狂気の境界線ギリギリのところで踏みとどまっているハディス。

普段は可愛いポンコツのくせに、「なるほど、このままだと恐怖政治一直線だな」と予感させる場面が多々あり、その度に背筋がひやりと凍るんです。
でもその危うさがとても色っぽいんですよね・・・・・・負の魅力がすごい。

 

そんなわけで、本作は最強イケメン幼女と乙女系メンヘラ男の即席夫婦ラブコメなのです。やはり癖が強い!
ジルもハディスも互いに攻略しようとしつつ、自分が相手を好きになることは避けたいと考えていて、それがまた二人の攻防を楽しく盛り上げていました。
ふたりとも簡単に攻略できそうに見えて意外とできないんですよね。
ポンコツなくせに手強い。チョロいくせに頑固。・・・・・・でもやっぱりチョロいかもしれなくて(笑)

 

ままごと夫婦がおかしな攻防を繰り広げつつ、物語は6年後の未来に向けて動きはじめました。
ラーヴェ帝国内の問題、ジェラルド王子の執着、そして神話から持ち込んだ因縁。
これからも問題は山積みで、私の期待は高まるばかりです。

コミカライズも決まっているようだし、安心して続きを待ちたいと思います。

 

鬼恋語リ /永瀬さらさ

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鬼恋語リ (集英社オレンジ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2020年2月刊。
鬼と人が争う世界で、和平のために鬼の頭領へ嫁ぐことになった幼い少女。
兄の首を落とした男の妻となった主人公は、兄の死を巡る陰謀を探っていくことになります。

なかなかにサスペンス要素の強い和風ファンタジーでした。
全体的にダークな雰囲気なのだけど、主人公の夫である鬼の天然具合が可愛くてシリアス中にもふふっと笑えることが多々ありました。
キャラがとにかく魅力的な作品だと思います。
おにロリならぬ鬼ロリ・・・とかくだらぬことも考えてしまった。

心に棘を残すような終わり方も良かったと思います。
ただ、もう少し掘り下げてほしかった部分や、世界観・設定が掴みにくいところがあったので、続刊があればそのへんにフォローがあれば嬉しいかも。
期待します。

☆あらすじ☆
泥沼化した鬼と人間の争いに終止符を打つため、戦の最前線を担った椿ノ郷の郷長の妹・冬霞は、兄を討った鬼の頭領・緋天へ嫁ぐことに。兄は以前、「自分の首を取る者がいたら、それは親友だ」と語っていた。その死になにか秘密があると感じた冬霞は、自分がしあわせになるためにも真相を探るべく奔走する。少しずつ真相へ近づく中、冬霞は緋天の心にふれ――?

以下、ネタバレありの感想です。

 

人を食らう鬼が出没する国・櫻斗国。
人と鬼は長い間争ってきたが、人間側の英雄・椿臣雪疾が鬼の頭領・緋天に討たれたことで、朝廷は鬼から提示された降伏勧告を受け入れることになる。
その条件のひとつは、雪疾の妹・冬霞が緋天に嫁入りすることだった――

 

種として捕食者であり、兄の仇でもある鬼のもとに嫁ぐことになった主人公・冬霞。
弱冠12歳の少女でありながら、厳しい環境で育った彼女の心に幼さはなく、冬霞は毅然とした態度で緋天のもとに向かうのです。

 

まず、この冬霞のキャラクターがとても良かったと思います。
冬霞は子ども扱いされることに怒るんだけど、確かに彼女の精神性はすでに「子ども」と侮ることはできないレベル。
冷静に物事を見極め、感情に振り回されず、時に大人たちをやり込める。
相手が朝廷の偉い人であろうと怖い鬼であろうと、落ち着いた態度で堂々と渡り合う姿は「英雄の妹」と呼ぶに相応しい。

まぁ「子ども扱いされて怒るうちは子ども」という部分もあるっちゃあるんだけど、そこがまた愛嬌でもあって。
大人の皮を被った子どもというよりは、背伸びして大人になろうとする(あるいは、ならざるを得なかった)子ども、という印象を受けるんですよね。
子どもでも大人でもない歪さが不思議な存在感を生んでいたし、そんな自分の二面性を目的のために利用できる強かさが好ましい主人公でした。

 

不思議な存在感といえば、冬霞に負けず劣らず面白いキャラクターをしていたのが夫である緋天。
寡黙を超えてコミュ障の域に達している・・・・・・いや、それすら超えるド天然な鬼でした。
何を考えているのか分からないというより「こやつ、何も考えていないのでは・・・!?」と思わせるんですよね。終盤でそのまんまのセリフが本人から飛び出してきてめっちゃ笑いました。
緋天、後半にかけてどんどんキャラが良くなっていくんですよね。
頭領がこれだと下は苦労するだろう。「なんだその自己完結は!?」が最高でした。

 

さて、そんな濃いキャラ同士が夫婦になる話ではあるんだけど、恋愛要素はあるにはあるけど、薄いと言えば薄い。
冬霞が夫に恋をする様子は面白かったものの、緋天の側がそこまでたどり着かなかったので(最後は意味深に締めたけど)
緋天の冬霞に対する感情が気になるなぁ。続刊があれば、もっと詳しく掘り下げられるのでしょうか。

 

それはさておき。

 

物語の本題は「なぜ雪疾は死んだのか」という点にあり、鬼の里に入った冬霞はその謎を追っていくことになります。
このサスペンス要素も面白かったです。
陰謀の黒幕は割とあからさまだったけれど、最後の最後でゾッとさせてくれたのが良かった。
情念と執念の末路。いつか冬霞にも彼女の気持ちが分かるようになるのでしょうか。それが分かるような、恐ろしい女になるのかな。
それはそれでちょっと楽しみな成長かもしれません。なにせ彼女は鬼の花嫁なのだから。

 

女の情念といえば、兄の想い人の話はもう少し掘り下げがほしいと感じました。
というか彼女と雪疾の間に何があったのか詳しく知りたかった。
あまり細かく描くと蛇足になったのかもしれませんが、親友本人ではなく彼女に託した割に、実際に二人の関係がどの程度のものだったのか、いまいち分かりにくくてモヤモヤしてしまいました。

 

あと、少し気になったのは鬼の領地となる椿ノ郷が具体的にどうなるのかという点。
「人を食う」と言いつつ食べなくても問題ないらしいけれど、鬼の里で生活するのかな。それとも隷属?鬼の里での人の扱いが上手くイメージできなくて。唯一のサンプルがああいう感じでしたし・・・・・・
まぁ緋天が何も考えてなかったから不透明に見えたというのもありそう。本当に大丈夫か、あのリーダー!笑

 

引っかかった部分については続刊に期待します。
キャラはとても良かったし、冬霞と緋天の夫婦生活がもっと見たい!
シリーズ化待ってます。

 

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集英社
著者 永瀬さらさ イラストレータ ねぎしきょうこ

 

マフィアの落胤、異世界ではのんびり生きたいのでファミリーを創る /殻半ひよこ

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マフィアの落胤、異世界ではのんびり生きたいのでファミリーを創る (ファミ通文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2020年2月刊。
マフィアの後継者として生きるはずが、暗殺されかけて異世界へ。
ようやく手にした平穏な日々が壊されたとき、少年は大切なものを踏みにじる「秩序」への反逆を決意するのです。
孤独な少年が薄幸の少女と出会い、彼女を守るために戦いを繰り広げる物語としては、展開がすごく好みだったし、要所要所でケレン味もあって楽しかったです。

ただ、マフィア×異世界召喚の異色ファンタジーを期待して読むと、やや物足りなさを感じるかも。
特にマフィア要素はもっと悪どい部分が見たかったかなぁ。

ちなみに表紙とタイトルでスローライフを想像して買ったんですがスローライフではありません(あらすじを読め、私)

☆あらすじ☆
目には目を歯には歯を、悪しき法には“正しき悪”を——。
伝説的なマフィアの後継として育てられた安納辰己は、跡目争いで暗殺され……たはずが、とある女神によって異世界へ招かれた。瀕死のところを助けてもらった少女シーパとともに、今度こそ平穏な人生をすごせると思ったのも束の間、貴族の圧政によりシーパが神への生贄として連れ去られてしまう。辰己は彼女を守るため、女神からもらった魔眼の力と身に染みた “”マフィアとしてのやりかた “”を解禁する——!! 異世界ゴッドファーザー物語、開幕!

以下、ネタバレありの感想です。

 

唯一の肉親だった祖母を亡くした七年前、顔も知らない祖父の正体がマフィアの伝説的なゴッドファーザーであることを聞かされた少年・安納辰巳
祖父の後継となるべくマフィアの英才教育が始まったものの、突然の暗殺と、異世界の女神・ミハテによって、辰巳の運命は大きく変化することに。

異世界で自分を救ってくれた少女シーパと、自分をあたたかく受け入れてくれたミハテ村が抱える裏の事情を知った辰巳は自らの持つ「武器」をふるい、彼らを虐げる「秩序」を壊そうと決意するのです。

 

その武器とは、祖父譲りのカリスマ性と、7年間受けてきたマフィアの教え。
そして、女神によって与えられた血を媒介として運命を動かす能力。

生まれと教育と異能。その3つの力を武器に、辰巳は強大な敵へ苛烈に立ち向かっていきます。
この設定はとても良かった。特に、普段温厚な辰巳が意識を切り替えるためのルーティンが格好良いんですよね。
「屈辱には報復を。侵略には赤き血を。我らの掟は是即ち、魂の反逆である」
呪文を唱えれば片目から血を流し、その盟約によって運命を突き動かしていく―― 正直、めっちゃ好きです。格好良い・・・・・・

 

辰巳が敵対するのが「秩序」だというのも良い。
腐れ果てた秩序への反抗。
レジスタンスとして様々な工作を行いつつ、果てしなく遠い敵に牙を向けていくわけです。
反逆の物語としてはかなり好みな部類でした。特に反逆の理由が「少女を守るため」というのが大変に私のツボでした。

 

話のテンポもすごく良かったと思うんだけど、駆け足に感じる部分は結構あって。
うーん、エピソードの取捨選択が、いまいち私の期待からはズレてたんですよね。完璧に好みの話なんですが。
個人的には辰巳が「マフィアのやり方」で力を蓄えていく過程が見たかったんです。
落陽民を「ファミリー」にして裏社会を牛耳っていくくだりが正に期待していたソレだったんだけど、ここはファミリー結成後のエピソードがザックリと切られていて。
二つの商会を裏から手を回して強制的に和解させた話、詳しく読みたかったなぁ・・・・・・
その代わり主人公じゃない女性キャラ2人の因縁が深く描かれていたりして、それ自体は面白いんだけど「そっちを重視するのかー・・・」というモヤモヤがあったりしました。

 

まぁレジスタンスものとして読むなら十分に面白い作品なんですけどね。
私はもう少し辰巳が悪どいことをしてるエピソードが欲しかったけれど、「秩序」側が悪すぎて主人公が悪になる暇がないというのもある。
なんだかんだ言っていたけど、辰巳はひたすら善行しかしてないような??

 

色々引っかかりはあれど、辰巳自身のキャラクターは魅力的でした。
敵へのハッタリと、周囲へのハッパのかけ方が特に好き。
そういう辰巳のセリフとか、この作品のマフィアものを意識したような気取った言い回し(褒めてる!)がとても楽しかったです。

 

一応最初のボスを倒して終わったけれど、残す敵はまだまだ山盛り。
さっそく2番めの敵が登場しましたが、果たして無事にシリーズ化できるのか。楽しみに待ちたいと思います。

 

魔神少女と孤独の騎士1 /三月ふゆ

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魔神少女と孤独の騎士 1 (ヒーロー文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年2月刊。
やや人には勧めにくいけど(独特な雰囲気なので)、私はとても好きな系統の作品でした。

内気で自罰的で吃音気味のいじめられっ子。
何かあればすぐ謝り、他者と上手くコミュニケーションを取れない自分に嫌悪して、更に内へ内へと逃げていく。
そういう女の子が、残酷な異世界に突き落とされ、望まぬ力を手に入れて波乱の運命を歩みだす物語です。

まさにダークファンタジーという感じで、主人公のキャラクターも合わさり、物語は常にどんよりと暗く重い空気をまとっています。

けれど、そこで主人公は少しずつ変わっていくのです。
3歩進んで2歩下がるように、繰り返されていく成長と後退。
自分がどんな存在になったのかも知らないまま、主人公は異世界の迷宮を進むことになります。
彼女が罪を犯して眷属とした、哀れな騎士と共に。

異世界と現実世界の交錯や、迷宮を巡る各国の思惑、そして人を惑わす「魔」の恐怖。
今まさに動乱が起こりつつある異世界で、少女の運命はどこへ転がっていくのか。

まだまだ謎の多い物語です。続きも楽しみ。

☆あらすじ☆
内気な女子中学生が、亡国の騎士を従えて魔の王になる。現実と異世界が交差する、残酷で美しい珠玉の異世界冒険譚。
気が弱く、クラスで孤立している女子中学生・篠原七子。
ある日、七子は同級生の活発な少女・瑞樹優花 に、秘密にしていたノートを貸してほしいと頼まれる。
そのノートが翌日クラスで回し読みされていることを知り、ショックで図書館へと逃げ込むが、そこで不思議な本と出会う。
「この世界から逃げ出したいなら、お手伝いしてあげる——」
七子は本に取り込まれ、気がつくと異世界にいた。
恐怖に震えながら森を彷徨っていると、血まみれの騎士に会い、「眷属」へと変えていく。
内気な少女・七子と、無口な孤独の騎士・エリアス。
歪な主従関係の二人は、「魔の森」を歩きだすのだが……。
これは一人の少女が残酷世界を生きていく物語である。

以下、ネタバレありの感想です。

 

クラスに馴染めず、大切な趣味を笑われ、ひとり泣いていた女子中学生・篠原七子
逃げ込んだ図書館で不思議な黒い本 《□□□で□□になる方法》 を見つけた七子は、その本に頭から飲み込まれてしまう。

気づけば異世界の「魔の森」にいた七子。
そこは世界に五つ出現した「大迷宮」の中にあり、この大迷宮から現れる「魔」の脅威にさらされる異世界の人々が迷宮を休眠期に移行させようと踏破を目指していた。

そして、なぜか人々から「高位の魔」と呼ばれる七子は、自分が人ではないものとなっていることに気づき、底しれぬ恐怖に襲われることになり―― というストーリー。

 

女子中学生が本に捕食されるというショッキングな幕開けをした本作は、非常に重苦しい雰囲気で物語が動いていきます。

この暗い雰囲気づくりに一役も二役も買っているのは、主人公である七子のキャラクター。
これがね、本当にネガティブで内向的な子なんですよ。
もどかしくて堪らないくらい、ひたすら自分で自分をいじめ続ける七子。
何かあれば「私のせい」。少しでもやらかしたと思えば「ごめんなさい」。
周囲全てに怯えて縮こまる様は見ていて可哀想になるし、同時に少し苛立たしく感じます。

 

そういう子が、たった一人で異世界に突き落とされた。
しかも、出会ったばかりの騎士・エリアスを衝動的に食べて(※比喩ではない)、彼を「眷属」とし、そのことで恨みをぶつけられ、拒絶されてしまうのです。

誰も知る人のない世界で、眷属となったエリアスは七子にとって保護者に等しい存在。

でも彼は七子に心を許さない。決して味方ではないのです。

七子の仕草を真似るエリアスをみて、「彼から信仰を奪った」と気づくシーンの恐ろしさよ・・・・・・
魔を憎む男を、魔が眷属にしたことの罪深さに心がギュッと絞られる。
互いに望まぬ主従関係は二人の間に溝をつくり、ギクシャクとした空気のまま、二人は迷宮を進むことになるのです。

 

こんな状況でメンタルがしんどくならないわけがない。
ただでさえボロボロの心は更に追い詰められ、七子はどんどん小さくなっていきます。
七子の暗い心情描写は執拗なほど丁寧に描かれていて、胃が重くなるのに読ませる圧は異様に強い。
こういう読み味、私は結構好きだったりします。

 

エリアスと迷宮を探索することになった七子は、その中で彼が抱えた事情や、この世界が抱える問題を知っていくことになります。
同時に、「高位の魔」と呼ばれる自分が何者なのか、何ができる者なのかを知ることになるのです。

 

何も分からない状態で始まり、迷宮の中で様々な経験と知見を得ていく七子。
「魔」に蹂躙され、あるいは「人」に蹂躙された命の声を聞くたびに、七子は少しずつ変化していきます。

それはとても頼りなく、鈍重な変化ではあるけれど、確かな変化でもあって。

元々、七子は軽率に謝る割に「これは自分を許すだけの謝罪」と客観的に評価する不思議な敏さもあって(そのバランスがあるから読みやすかった)、極端に臆病だけど決して愚者ではないんです。

だからこそ、少し心持ちを変えるだけで驚くほど見違える。

七子が自分を奮い立たせた瞬間に「おおっ!」とこちらも高揚感を得るんです。
小さなカタルシスが何度も起こる感じ。これがとても楽しかった。

 

まぁ、ポジティブモードは全然長続きしないんですけどね。
それでも一歩一歩、後退しながらも成長する七子をみて、この子がどんな道を歩んでいくのか固唾を呑んで見守りたくなるのです。

 

とはいえ、七子が歩む道はとても険しいものになりそうな予感。
活動期に入った迷宮から現れ、エリアスの祖国を滅ぼした魔神ジャムジャムアンフ
今なお諸国の中枢に入り込み、撹乱と誘惑を繰り返す魔神に対し、人々はどうやって立ち向かうのでしょうか。

 

また、迷宮に対する国家や宗教の思惑が錯綜している点も気になるところ。
裏から魔神が手を引いてる可能性があるとは言え、ハイリスクハイリターンな迷宮を前に人が割れるのも当然だと思うし、そこらへんもどう収拾をつけていくのか。

 

そして、七子とエリアスは動乱前夜のような世界で何を成すのか。
未だギクシャクしてる二人がマトモな関係を築けるのかも気になるところですが・・・・・・「エリアスさんと友達になりたい」という七子の願いは叶うのだろうか。
エリアスさん、こっそり七子を気にかけてる様子はあるんだけど、思考停止と口下手(「ここはどこですか」「森です」は笑った)とあれやこれやで溝が埋まる日は遠そうなんだよなぁ。

 

異世界に落とされたもうひとりの少女の動向も気になるし、やばそうな「英雄」(?)も何かしでかしそうだし、色々と先行きが不穏。本当にどうなっちゃうのでしょうか。
特にユウカちゃんは、状況だけ見れば女性向けラノベの主人公みたいなんだけど、裏側が丸見えだから悪夢の予感しかない。
うーん、これはワクワクしますね!(悪意)

 

ちなみにWEB版は完結している様子。
かなり続きが気になるし読んでしまおうか。でも書籍版の続きも楽しみに待ってます!

◎魔神少女と孤独の騎士(旧:異世界で魔王になる方法):小説家になろう
https://ncode.syosetu.com/n2506br/

 

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主婦の友社
著者 三月ふゆ イラストレータ ともぞ

 


パソコン持ち転生令嬢ですが、推しキャラと永遠の独房生活を満喫中です。 /和泉杏花

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パソコン持ち転生令嬢ですが、推しキャラと永遠の独房生活を満喫中です。【特典SS付】 (一迅社ノベルス)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2020年3月刊。
表紙買いです。綺麗な星空に惹かれまして。
乙女ゲー転生もので、冤罪によって謎空間に閉じ込められた主人公が謎能力で引きこもりライフを満喫するお話。
正直とても都合が良い設定が多く、特に深く説明もしない仕様なので、そのへんは微妙かな、と思いました。
ただ、主人公とヒーローがふたりぼっちの空間で互いの孤独を癒やし合う姿はとても良かった。
特にヒーロー側の、一度絶望を味わった心から生じる執着は大変にエモくて・・・・・・

☆あらすじ☆
監獄で、ふたりっきり。ゆっくりとした時間が、ふたりの傷ついた心と体を癒していく――。
昔から嫌われていた実の姉と元婚約者から裏切られ、真っ白な部屋に幽閉された撫子。彼女はそこで……笑みをこぼした。
「大成功、ってね」
ここは撫子が転生前にハマっていた和風乙女ゲームの世界。前世でGETした宝くじの当選金と、通販ができる不思議なパソコンで、自由な生活を満喫しよう!と思った矢先。心底好きだった、あの初期シリーズのキャラ蘇芳が目の前に現れる――。ずっとひとりぼっちだった彼の震える手を握って、たくさんの時間をいっしょに過ごした。家庭用のプラネタリウムで、星を眺めた。
「ねえ蘇芳さん」「ん?」「これから先どうなるかなんてわからないけど、ずっと一緒にいてね」「……ああ」
そんな中、撫子に“監獄の外に出られる”と綴られた手紙が届いて……。ふたりぼっちの監獄生活の行きつく先とは――?
※電子版はショートストーリー『白の牢獄での日常【蘇芳視点】』付。

以下、ネタバレありの感想です。

 

姉が仕掛けた冤罪を信じ込んだ元婚約者によって、永遠の幽閉の罰を与えられることになった主人公・撫子

それは何もない真白の空間で、年を取ることも死ぬこともできず、気が狂うまで閉じ込められる残酷な罰。

しかし撫子の手には、ネットショッピングが可能な、前世で愛用していたノートパソコンがあった。

注文すれば好きな商品が現れ、部屋のリフォームも自由自在。アニメも見れるし、ゲームもできる。

前世で当てた宝くじを資金にして快適空間を作り出した撫子は、そこで一人の青年・蘇芳と出会う。
百年前に幽閉され、正気を捨てきれずに彷徨っていた蘇芳は、実は撫子が前世でプレイした乙女ゲームのラスボスキャラだった―― というお話。

 

これはあまり深くは考えてはいけないタイプの作品なのでしょうか。
なぜ撫子がPC持ってるのかとか、なぜネットショッピング(しかも独房にちゃんと届く)できるのかとか、そういう不思議な現象について説明は一切ありませんでした。
「パソコン持ち転生」とタイトルで謳われている以上は、ある程度のご都合主義でも受け入れようと考えていたのだけど、うーん、個人的にはもう少し説明というか、突っ込んだ設定がほしかったな。
あれは撫子自身にもよく分からない不思議能力、ということで良かったの??

 

(理屈は謎だけど)そういう訳で、撫子の生い立ちや状況は不幸でも、投獄後の彼女に憂鬱な雰囲気は全くありません。
むしろ「満喫」という言葉に偽りなくめっちゃ楽しそうでした。タイトル通り。そこに詐欺がないのはとても良かったと思います。

 

ただ、正直に言えば、話の展開は私の好みではなかったです。
撫子を陥れた姉の対処も撫子の救出も、全部「ゲーム主人公」である親友・桔梗が担っていて、撫子自身は独房から事の成り行きを傍観して救出まで待機していただけ。
私、物語を動かさない主人公と、そういう構成の物語はあまり好きになれないんですよ・・・・・・

 

でもそれは作中ずっと大人しく「囚人」していたということでもあり、ある意味とても徹底した物語だと言えるのかもしれません。
つまりこれは、とても快適で居心地が良い空間で、傷ついてメンタルが弱ってる推しを励ましつつ、仲良くイチャイチャと暮らすお話なんですよ。
完全にタイトル通りだ。それ以上でもそれ以下でもないし、そこに魅力がある作品なのだと思います。

 

姉への嫌悪と父への失望を抱えた撫子と、百年彷徨った蘇芳。
他に誰もいない、どこにも行けない場所で、二人ぼっちの日々が描かれる本作。
不安定な蘇芳は撫子に執着し、撫子はそれを柔らかく受け入れ、そうして二人は少しずつ互いの心を癒やしていくのです。
この撫子と蘇芳の心の交流はとてもエモくて良かったです。似た傷を持った者同士ってなんか好き。

 

特に蘇芳はキャラクターも素敵でした。
撫子への依存心が少しずつ恋情に変わっていき、そこから暗い独占欲が滲んでいく感じ、たまらなく好きなやつ。
蘇芳は終盤にかけてどんどん魅力的になっていった気がします。

「ここにいてくれ、外になんて行かずに。ここで、俺と一緒に・・・・・・永遠とも呼べる長い時間をかけて、絶望の待つ未来へ進んでいってくれ」

これとかね。匂い立つメリーバッドエンドへのお誘い。
「閉鎖空間に二人ぼっち」というシチュエーションの締めくくりとして最高のセリフでした。

 

まぁこれ問題なくクリアできたんだけど。
この問題のなさも正直ご都合主義的ではあったのだけど、そこはまぁ、ハピエンだから良いのです。

 

侯爵令嬢の借金執事 許嫁となったお嬢様との同居生活がはじまりました /七野りく

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侯爵令嬢の借金執事 許嫁になったお嬢様との同居生活がはじまりました (角川スニーカー文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2020年3月刊。
借金のかたに結婚させられそうになった少年と、こっそりと乗り気なお嬢様の同居ラブコメ。
キャラと設定は好きなやつだし、ツンデレ甘々なやり取りも悪くなかったと思います。
ただ話に捻りがないというか、裏事情も最初から全部見せていく構成なので、読み応えには欠けるかなぁ。

☆あらすじ☆
(お金以外)何一つ不自由のない日常を謳歌!甘々なお屋敷生活が始まる!!
父の作った膨大な額の借金、さらに祖父と先代侯爵の遺した誓約
『子供達を結婚させ、一族となろう!』
により、侯爵令嬢エミリアの執事兼、許嫁となったジャック。
対するエミリアは——
「い、言っとくけど、貴方の許嫁になったつもりはないからっ!」
「! そうだよな! 破談になるよう頑張ろうな!」
「……バカ」
しかし、言葉とは裏腹に片時もジャックの側を離れようとせず、帝国魔導学院にジャックを入学させ、自分を頼るように仕向けるが——金はないけど器用なジャックは一人で何でもこなしてしまう!
(少しは私の気持ちも考えなさいよ……!)
ツンデレお嬢様×借金執事、甘々なお屋敷同居生活スタート!

以下、ネタバレありの感想です。

 

父が作った借金の返済を迫られた田舎の貧乏貴族の三男坊ジャック・アークライト
貸主である大貴族ロードランド侯爵は、祖父たちの約束を守り、侯爵令嬢エミリアと結婚するなら借金を帳消しにしようと申し出るが、何とか借金を返済したいというジャックの意思を受け、彼にエミリアの婚約者兼執事という立場を与えるのだった―― というのが本作の基本設定。

 

降って湧いた婚約者と執事業だったが、執事については姉の教育により難なく仕事をこなせるジャック。
最初からジャックとの婚約を意気込んでいるが、ツンデレ仕草によりジャックには気づかれないエミリア。

本作は、ポンコツ主従が軽い口喧嘩と甘いイチャつきを交わしつつ、騒がしくも仲良しな同居ライフを送るラブコメディです。

 

このジャックとエミリアの距離感、すごく近いんですよ。
普通に手を繋ぐし、ハグするし、なんか普通に一緒にベッドで寝てるし(あのシーンはページ飛ばしたのかと思った)、学校に通うようになってもずっと一緒。
二人の会話を聴いていなければただのラブラブバカップルです。二人の会話を聴いていればもっと強度のバカップルです。
ラブコメって少々捻くれてた方が甘さを感じるものですね!

 

最初からデレてるエミリアはともかく、ジャックはそれなりに往生際が悪いので、どちらかといえばこれはエミリアがジャックを攻略する話と言えるでしょう。
アプローチ下手くそなツンデレお嬢様の奮闘は可愛くて楽しかったです。

まぁジャックがまともに抵抗してたのは最初だけなんだけど。それこそ執事役を言い渡された時くらい?
婚約者兼執事の執事役をこなしているうちにセットの「婚約者」も自然と受け入れてた感じかなー。

 

そういう感じで、主従婚約ラブコメとしては割と好きな感じでした。
ただ、エミリアが最初からデレてたりジャック攻略がヌルゲーだった理由である二人は実は「幼馴染」だったというエピソードが、なんかこう、期待より盛り上がらなかったんですよね。私の中で。
特に雷竜のくだりは前後の流れがわからなかったなぁ。
ジャックの記憶が欠けているとはいえ、読者にはもう少し時系列に沿った説明がほしかったです。
事件以前から付き合いがある幼馴染なのに顔を覚えてなかった理由とか、エミリアが送った手紙がどこにいったのかとか、いまいち説明が足りてない感じがあって。

そもそもエミリアやカエデの言動から幼馴染設定が最初からバレバレなので、なんかこう、話のフックが足りないんですよね。。。

 

とは言え、嫌いじゃない作品でした。
あまり強くない主人公が、好きな子のために必死に戦うとか、そういうの好物だし。

次巻があれば読みたいです。

 

豚のレバーは加熱しろ /逆井卓馬

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豚のレバーは加熱しろ (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年3月刊。
第26回電撃小説大賞《金賞》受賞作。
公式PVにめちゃめちゃ笑ったので買いました。癖が強い!

豚になったオタクと底抜けに優しい少女の出会いから始まる異世界ファンタジー。
予想外にしんどくて、思った以上に面白い作品でした。

オタクの思考をもつ以外は正真正銘ただの豚。
そんな主人公は一人の少女のために何ができるのか。

終わり方が終わり方だから絶対にシリーズ化してほしい。続きを待ってます!

☆あらすじ☆
転生したら豚だった!美少女にお世話されるなら、こんな冒険も悪くない?
豚のレバーを生で食べて意識を失った、冴えないオタクの俺。異世界に転生したと思ったら、ただの豚になっていた!
豚小屋で転がる俺を助けてくれたのは、人の心を読み取れるという少女ジェス。
ブヒッ! かわいい! 豚の目線なら、スカートの裾からチラリと純白の……。
「あの、心の声が聞こえていますが……」
まずい! 欲望がだだ漏れだ!
「もしお望みでしたら、ちょっとだけなら」
え、ちょっ……!?
まるで獣のような俺の欲望も(ちょっぴり引き気味ながら)受け入れてくれる、純真な少女にお世話される生活。う〜ん、豚でいるのも悪くないな?
これはそんな俺たちのブヒブヒな大冒険……のはずだったんだが、なあジェス、なんでお前、命を狙われているんだ?
さあ魔法もスキルも持たぬブタよ、過酷な運命に囚われた少女を、知恵と機転と嗅覚で救い出せ!
第26回電撃小説大賞《金賞》受賞作、豚転生ファンタジー!

以下、ネタバレありの感想です。

 

豚の生レバーを食べたことで壮絶な痛みに襲われ、気づいたときには異世界の豚小屋にいた主人公。
なぜか豚の姿に変わっていた彼は、人の心を読める種族「イェスマ」の少女・ジェスと出会う。
現存する唯一の魔法使いである王様なら人の姿に戻せるかもしれないと聞いた豚は、丁度王都に向かう予定だったジェスと共に旅立つことになるが―― というストーリー。

 

人だった頃の名前は明かされず、ただ「豚」とのみ呼称される主人公。
その中身は「萌え豚」という死語(?)を連想させる古式ゆかしいオタクなのだけど、お前豚でも幸せそうじゃん・・・と思わずにいられないほど、異世界豚ライフをエンジョイしている豚でした。
まぁ分かる。ジェスがセットだと思えば分かる。豚には豚の幸せがあるんだと知った。

 

とは言え、彼は豚ではなく人なので。
スペック的にはただの豚でも、中の人は割と賢い理系オタク。
考える頭がある豚は、意外なほど上手に立ち回り、道中の様々なトラブルを乗り越えていくのです。
このあたりの主人公の活躍の仕方がとても楽しかったです。
魔法もチートもないけれど、豚の特技を人が活かす。
豚なのに格好良いんですよ!そして豚だから地の文でどれだけブヒブヒしてても挿絵のおかげで可愛く見える不思議。

 

そんな豚さんを、親身になってお世話するジェス。

底抜けに優しく善良な少女であり、大きな首輪も心ない差別も、全てをただ受け入れる少女。
彼女は一体何者なのか。彼女を待つのはどんな運命なのか。

可愛い少女に拾われた幸せな豚は、やがて彼女が何を抱えているのかを思い知ることになるのです。

 

これがねぇ、もう、予想外にしんどかった・・・!
イェスマってイエスマンからきてるんですね。
隷属させられ、決して抗わず、死ぬ確率が高い旅でも黙って進む、被差別の種族。
粛々と運命を受け入れる姿は見ていて苦しくなるほどで、イェスマの少女たちを襲う運命の残酷さに憂鬱な気分になりました。
特に打ちのめされたのが、イェスマの少女・ブレースの末路。
あれはもう吐きそうだった。
「この身体で人を惑わせた私が悪い」っていう述懐も辛いし、監禁下にあった彼女に何があったのか想像するのもきつい。
不犯のルールなんてイェスマ狩りは守ってないしね・・・・・・殺せばバレないって感じだったよね・・・・・・(腹無しって何だよ・・・)
それでも最期まで他人のために祈り続けたブレースの姿に、なんだか自分が加害者になったような罪悪感に襲われてしまいました。純粋に善人すぎて逆に歪んでる。

 

あまりにも哀しいイェスマの性質。
歪みを感じるほど、極端に善性に振られた少女たちの性格。

それが何に由来するものなのかが明らかになると、さらに胸糞悪さが倍増するんです。
豚と美少女がイチャイチャする話だよ〜で釣っといてコレか!!!と思った。

 

しかもこの胸糞悪い話を、この世界がそういう仕組みなら仕方ないね・・・で一旦閉じるんですよ。
びっくりしました。
このラストに至るまで、豚とジェスが少しずつ信頼と絆を積み上げていく様子を丁寧に描いてきたじゃないか。
それなのに、こんな誰も味方のいない場所でジェスの手を離す選択とかあり得るの・・・?
ていうか、この社会構造を良しとする王様は本当に味方といえるのか???

 

あまりにも受け入れがたい結末。
おかげで現代に戻り紡がれるエピローグを「いや、マジで終わるのか?」とドキドキしながら読む羽目になりました。
イェスマ狩りから逃げるシーンよりもドキドキした。
個人的に、この作品を好きか嫌いかの評価を分けるポイントだったので・・・・・・

 

でもこの引きなら良し。
あの終わりを本当の意味で受け入れず、豚がもう一度豚になるのであれば、きっと次こそ胸糞悪さをふっ飛ばしてくれるはず。
向こうはかなり面白い状況になってるようだし、この続きがとても楽しみです。

 

あと私はNTRダメ絶対の人なので、そのへんもよろしくお願いします・・・・・・何卒・・・!

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KADOKAWA
著者 逆井 卓馬 イラスト 遠坂あさぎ

 

蟲愛づる姫君の蜜月 /宮野美嘉

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蟲愛づる姫君の蜜月 (小学館文庫キャラブン!)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年3月刊。
愛されることに怯える王と、彼だけは愛さないと誓ってあげる寵姫。
歪に執着し合う夫婦の奇妙な関係を描く中華ファンタジー第3弾。
今回もとても面白かったです。
珍しく理不尽な玲琳にめちゃめちゃ笑った!

☆あらすじ☆
国王とその妃の、奇妙すぎる夫婦関係とは?
恐ろしい毒蟲たちと、それらが生み出す蠱毒をこよなく愛する変わり者の姫君・李玲琳と、その夫にして魁国の国王・楊鍠牙。若く美しく文武両道のパーフェクトキングのくせに、過去の諸々の経験ゆえにとことん不幸体質な鍠牙は、いつか妻に殺されることを夢見ているし、玲琳の夫の扱いときたら蟲以下だ。周囲から見れば奇妙すぎる夫婦だし、実は本当の意味ではまだ夫婦になっていないのだが、どうやらそこに愛はちゃんとあるらしい。
さて、大国・斎から玲琳が嫁いできて、はや八ヶ月が過ぎた。もともと小柄ながらそれなりに背も伸びて、少女から女性になり始めた玲琳と、鍠牙の夫婦関係が先に進むことを周囲の者たちは期待するが、肝心の国王夫婦にはまるでその気がないらしい。中でも気を揉むのは、斎国時代から玲琳に長年仕えてきた侍女の葉歌だ。彼女はある日、玲琳に「国王とずっと仲良くいられる毒」なるものを飲ませ、その翌日、忽然と姿を消してしまった。玲琳はいなくなった葉歌を探すため、蠱師として彼女を「呪う」ことにするが……。
大人気! 中華ファンタジー史上最高に奇妙な国王夫婦の物語、第3弾!

以下、ネタバレありの感想です。

 

相変わらず歪にイチャイチャしている魁の国王夫妻。
底の見えない執着をぶつけるくせに、愛されないことに安堵する鍠牙。
鍠牙の「毒」を愛するからこそ、未来永劫彼を愛さないと微笑む玲琳。

仲良きことは美しき哉・・・・・・とか思ってしまうので、この二人の毒っけは今回もとても甘美です。

 

さて、この第3巻は、玲琳の腹心の侍女・葉歌の失踪から事件が始まります。

意味深な言葉を残して、勝手にいなくなった葉歌。
彼女が飲ませた毒により、蟲師の力が失われた玲琳。

蟲を操れなくなった玲琳は、力と葉歌を取り戻すため、国を飛び出して里帰りを決行し――

 

普段通りの極まった冷徹さと変人っぷりを発揮しつつも、どこか焦った様子の今回の玲琳。
愛する蟲にそっぽを向かれ、何より信頼する侍女も傍にいないことで、流石の玲琳もメンタルをやられてしまったのか・・・・・・

「それなのに、お前がくるのが遅いから!!」

ここ、あまりにも理不尽すぎる罵倒にめちゃくちゃ笑ってしまいました。
主人公のギャン泣きでここまで笑えるのはこの作品くらいじゃないか??可愛すぎて面白すぎるよ!

鍠牙は「行かないでくれ」ってお願いしたのに毒を盛られて置き去りにされ、大嫌いな母親の力を借りてでも迎えにきたのにね。
それでこんな文句をぶつけられた鍠牙の心境を考えると、面白すぎて笑いが止まらなくなるんですが・・・!

そしてギャン泣き玲琳を前に途方に暮れる鍠牙という図が愛しすぎてキュンキュンしました。
普段が毒々しいやり取りばかりなだけに、まさに毒気が抜かれた感じ。
こういうの、もっと増やしてくれてもいいんですよ!

 

まぁでもあまり毒気が抜かれすぎるのも困る。
なんといっても本作の魅力は二人が分かち合う毒の空気にあるのだから。

「ならば――約束をあげるわ」
「私の死をあげる。お前がいない場所では死なないと約束するわ」
「そうね、ならばもう一つ約束をあげるわ。お前に死をあげる」
「万が一にも私が死ぬことがあれば、お前を道連れにするわ」

この一連の玲琳のセリフ、彼女らしさが極まっていて、とてもとても好きです。
傲慢で不遜。なのに鍠牙が求めるものを全て差し出すような慈悲を感じる不思議な感覚。
もう本当にゾクゾクするほど心地良い・・・・・・

 

一方の鍠牙は今回も立派に病んでました。
玲琳と国を天秤にかけて前者をあっさり選ぶような男の本領発揮。
この二人は魁のために早く後継者を作らねばならないと思う。
万が一のときは本当に心中を実行しそうな危うさがすごいんだよなぁ。その背徳的な執着関係がまた魅惑的なのですが。

 

こんなに歪な二人の関係を見せられた後じゃ今回の黒幕が抱えていた気持ちを「そんなの当たり前の感情じゃん」と切って捨てるのも、まぁ、分かる・・・・・・分かるかな???分かる気がする、かも????

 

なにはともあれ、一難去って元通り。
蟲師としても女性としても玲琳が成長をみせた回でした。性根は一切変わってないけどね!(そこが良い)

 

続くでしょうか?楽しみに待ちたいと思います。

 

浅草鬼嫁日記8 あやかし夫婦は吸血鬼と踊る。 /友麻碧

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浅草鬼嫁日記 八 あやかし夫婦は吸血鬼と踊る。 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年3月刊。
こ、これは・・・・・・凜音人気爆上げ回なのでは??
茨姫と凜音の関係性を紐解く第8巻。今回も面白かったです。

☆あらすじ☆
千年の忠誠と思慕を胸に秘め、吸血の鬼と「最強の鬼嫁」は競い合う!
茨木真紀は、かつてあやかしの国を治めた鬼姫“茨木童子”の生まれ変わり。前世の夫“酒呑童子”だった天酒馨らとともに暮らす浅草で、毎年恒例のお祭り行事を心待ちにしていた。
しかしその喧騒の裏で、吸血鬼による事件が見え隠れしはじめる。前世の眷属で吸血の鬼である凛音を心配する真紀だが、その凛音に真紀自身が攫われてしまった。
浅草に帰るため、在りし日の仲間と刃を交える真紀。それはやがて、茨木童子と凛音が出会った千年前の勝負の日々を、二人に思い起こさせて——。

以下、ネタバレありの感想です。

 

真紀を狙う西洋吸血鬼の魔の手が迫りつつあるなか、凜音の呼ぶ鈴の音を聞いた真紀。
凛音の作った結界の中に連れ去られた真紀は、元眷属の悲痛な真意を知ることになるのです。

 

というわけで、ついに来ました凛音回!
主へのクソデカ感情持ちばかりの元眷属のなかでも、特にこじらせてる気がする(スイとどちらがマシだろうか)ツンデレ吸血鬼のターンとあって、めちゃめちゃ楽しみにしていました。

 

そんな第8巻で描かれるのは、千年前の茨姫との出会いから始まる凛音の物語。

二人はいかにして主従になり、凜音は主にどんな想いを抱いていたのか。
酒天童子の死後、壊れてゆく茨姫の傍で何を見てきたのか。
彼女がいなくなった後に、凜音に何があったのか、
そして今、彼は何を思うのか。

ようやく凜音の全てが明らかになりました。
これ自体が1本のロマンス小説のようだった・・・・・・従者の片思いものって感じで。
とても読み応えがあったし面白かったです。そして凛音が好きになった。
徹底してツンツンしてるくせに、どこまでも愛が深い吸血鬼。
壊れた茨姫を必死で追いかけて、見てもらえないのに見届けて。
忠義と恋の混じり合った感情が、叶うことのないその想いが、とてもとても心に残ります。
あやかしの恋はこじらせるとしつこいですね。その健気さが、好きにならずにいられない。

 

凜音の過去エピソードだけでも好感度あがりっぱなしだったのに、更に上限突破したのがこのセリフ。

「貴様の片思いなど知るかっ!オレは千年、報われてない!!」

強い!
言葉に力と重みがありすぎて、あふれてる。
だって今回は1冊まるごと報われない片思いの話で埋まってたからね。
凜音の気合入った報われなさを知ったからには、このセリフに黙るしかないんですよ(笑ったけども)

 

不憫キャラVS不憫キャラの対決は拗らせ度合いで凛音の勝利。
とは言え、負けてしまった方もまた拗らせてはいるんだけど・・・・・・
しかもライはどうすれば救われるのか、今のところ想像もつかないんですよね。
馨が酒天童子の魂を吸収したらライはどうなるんだろう?
それ以前に、ミクズの罠にはまった後の彼の心境を思うと、だいぶ色々と心配が。
彼も酒天童子ではあるんだし、とすると、精神的ダメージは馨とあまり変わらないのでは・・・・・・

 

でもまぁ一番心配なのは真紀の容態なのだけど。

凜音の恋をどーんと受け止め(「見届けなさい」のセリフが格好良すぎたし、ようやく凜音は言ってもらえたんだと思うと感動的すぎた)、それでも馨への愛が揺るがない真紀に、やっぱりこの力強さが美しいヒロインだよなぁと改めて思ったのに。

 

さてさて、ココからどうなるのでしょうか。

今回、(美味しいところは掻っ攫ったものの)基本的に出番が少なかった馨。
次回は彼がメインで活躍するのでしょうか。地獄で?なんだか神話みたいな展開にワクワクしますね!

 

大魔縁茨木童子の真実も明らかになるとのこと。
続きもとても楽しみです。

 

どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。2 /六つ花えいこ

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どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。 : 2 (Mノベルスf)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2020年3月刊。
ときめきシーン大量放出!な第2巻。
めちゃめちゃ良かった〜〜
なんかもう多幸感に浸ってます。すごく笑ったから心地よい疲労感もある。
魔女と騎士の恋物語、最後までとても面白かったです。

☆あらすじ☆
片思い相手だった王宮騎士のハリージュに、惚れ薬を依頼されたことで、彼と心を通わせることができた魔女ロゼ。それだけでも嬉しいのに、ハリージュの婚約者として彼と一緒に住むことに!?
毎日会うハリージュにときめきの止まらないロゼだが、そんな彼女の元に、『魔女の弟子になりたい』という少女がやってきて…?
引きこもりだった魔女と、真面目で上から目線な騎士の、惚れ薬から始まった恋のおはなし。

以下、ネタバレありの感想です。

 

ハリージュの屋敷に食客として引っ越すことになったロゼ。
長年の想い人と両思いという状態になれないまま、ロゼは彼との結婚に向けた準備にとりかかるのです。

 

「結婚」とは何か。
ロゼにとって、ハリージュにとって、それは何を意味するものなのか。

人のルールに縛られない魔女であるロゼが、人の世の習わしである「結婚」について懸命に学び、考え、自分だけの答えをだしていく。
その姿が、あまりにもあまりにも可愛くて尊くてときめきが止まりませんでした。
人の常識を持たないからこそ、まっさらな状態で物事の意味を考えることができるんだろうなぁ。
彼女は自分を無知だと言うけれど、人の言葉を咀嚼して自分だけの答えを出すロゼの姿勢を笑うことなどできようか。

「(中略)結婚とは、そうして二人で作っていくものだと思ったんです。だから・・・・・・」
「結婚を・・・・・・こういう話を、貴方としていることがもう――私達にとっての結婚であると、私は、そう思いました」
「歩く道のりが違っても、向かう先が同じなら、きっとそれが『結婚』なのだと・・・・・・そう、思います」

ロゼにとって結婚とは儀式のことではなく、関係の区切りでもなく、法的な契約でもない。
「二人がそのような状態にあること」という本質だけを大切に見つめている。
その無垢な視点が愛しすぎる・・・・・・ハリージュがぎゅっと耐えたのすごいなって思えるくらい抱きしめたくなるんですが・・・!

 

そんな感じで、私ももう二人は「結婚」していると思ってるんですが、だからといってロゼがハリージュという男に慣れたのかと言うと、全然まったくこれっぽっちもそんなことはないのです。

 

相変わらず無表情の下で恋心がドッタンバッタン大騒ぎのカーニバル!
ロゼ、もうさぁ、ほんとさぁ、なんでこう可愛いかな・・・!
表情筋が硬直方向に仕事しすぎて両思いなのにすれ違ってるの面白すぎるでしょ。
この二人、なんでまだ両思いにクエスチョンが付いてるんだ???って私がクエスチョンですよ・・・・・・可愛すぎか!

 

スキヤキ事変とか、あまりにも面白可愛すぎてひたすら笑ってました。
「まるで初孫が初めて立とうとしてる場面」ってこういうシーンに使う喩えじゃないと思うんだけど、驚きのわかり易さでロゼとハリージュの間に漂う空気が伝わってくるんですよね。すごい。
しかも甘い空気を笑いで消し飛ばすのかと思いきや、ハリージュがガンガンに押していくから甘さがキープされている。ほんとすごい。ヒロインが出せない色気はヒーローがカバー!

 

その直後の展開もまた笑うしかなくて。
匍匐前進で必死に逃げるロゼは、さながらホラー映画のヒロインのようでした・・・・・・ジェイ●ンに襲われてるのか?
ハリージュはロゼを追い込むとき死ぬほど楽しそうですよね。生き生きしてる。
でも余裕があるわけじゃないってところにニヤニヤしちゃうんだよな〜〜〜!じっくりコトコト煮詰まっておられる。

 

そんなこんなで甘酸っぱくて賑やかで騒がしい同棲ラブコメの真っ只中にいるロゼとハリージュ。
一方で、ロゼは「魔女」のまま、ハリージュの世界に足を踏み入れていくのです。

 

侍女のモナやヤシュム王子という、ハリージュの近くにいる人々が「魔女」へ向ける隔絶。
今までは流してきた負の感情に、ロゼがどうにか折り合いをつけていくのだけど、その支えとなるのはもちろんハリージュ。
無表情とローブで守らねばならなかった「弱点」を、ハリージュが「長所」にしてくれた、というのが最高でした。
ひとり飛び込んだ世界で自分を絶対的に信じてくれる人がいることの頼もしさと愛しさよ・・・・・・こういうのロマンチックすぎて大好きだ。

 

そうして迎えたクライマックス。
黒いウェディングドレスも、破廉恥(笑)な誓いのキスも、ロゼの言葉を象徴するような「結婚」の儀式だったと思います。

これまで歩いてきた道のり、育ってきた環境、培ってきた価値観。
様々な違いを持つハリージュとロゼが、これから共に生きていくために。
二人は色んなことを話しあい、意見をすり合わせ、妥協点を見つけつつ、理解を深めていくのでしょう。

信じられないような違いにぶつかっても、あの結婚式のように、いっぱい騒ぎながら同じところに辿り着けるよう頑張るんだろうなぁ。
ロゼの悪戦苦闘はこれからも続くし、その結果としてたくさんの幸せを手にするんだろうと、そう思えるラストシーンでした。

 

とても満足。幸せな気持ちでいっぱいです。本当に楽しかった!

 

ロゼとティエンとの思い出話でうっかり泣きました。
ティエン、本当にちゃんとロゼの「家族」だったんだなって。
ロゼすら無自覚だった二人の絆を、ちゃんと繋いでくれたハリージュも素敵だ。

 

結婚式シーンのカラー絵、荘厳さが素晴らしくない??
こんな神秘的な黒ドレスで「目を瞑っていてください!」ってぷるぷる叫んでたの???
可愛すぎだし、絶対にみんな指の隙間があいてたでしょ(読者は堂々とばっちり見物できて最高でした)(挿絵が良い仕事しまくり)

 

茉莉花官吏伝8 三司の奴は詩をうたう /石田リンネ

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茉莉花官吏伝 八 三司の奴は詩をうたう (ビーズログ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年3月刊。
表紙の茉莉花の衣装が可愛すぎる・・・!
火種を抱えた異国を舞台にして、新章がスタート。
これまで様々な経験を積んできた茉莉花が、天性の記憶力と観察眼を駆使して次なるステージへ進むようです。
その様は控えめにいって怪物。そこにとてもゾクゾクしました。
本当に楽しいシリーズだ!

☆あらすじ☆
あるときは間諜、あるときは学者、あるときは愛人(候補)!? 茉莉花の立身出世物語(シンデレラストーリー)叉羅国編スタート!
叉羅(サーラ)国の高貴な客人ラーナシュに、王の証(コ・イ・ヌール)というとんでもないものを押し付けられた茉莉花は、視察と称して叉羅国に返してくるよう珀陽に頼まれる。
ところがその道中ラーナシュが命を狙われ、辛くも逃げ出した茉莉花は、あろうことかラーナシュと敵対中の家の当主シヴァンに助けを求めてしまう。
しかし、連れて行かれた邸でなぜかもてなされて——!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

新章の舞台はラーナシュの故郷・叉羅国。
王と三司四将によって統治されたこの国は、三年交代の二重王朝制という歪な体質を抱えていた。
「国」よりも「家」を大事にする気質ゆえに内乱が絶えず、憎しみの連鎖の中で疲弊していく国家。
弱体化を察した周辺諸国から国を守ろうとするラーナシュによって、王の証コ・イ・ヌールを押し付けられようとした珀陽は、視察という名目で茉莉花を叉羅国に送り込み、なんとかコ・イ・ヌールを手放そうとするが―― というのが今回のお話。

 

新たな国で、様々な人と出会い、異なる文化に触れていく茉莉花。
今回の茉莉花は、素性を隠して他国で活動しているので、なんというか、行動がすごく「間諜」のようでした。

そんな人たちを相手に身元を偽っていることへ、罪悪感を抱いてしまった。
(やっぱり、嘘はつきたくないな。わたし、間諜には向いていないみたい)

そんなことを最初の方で考えていたけれど、いやいやいや、訓練なしでコレはむしろ才能ありまくりでは???

 

下働きをしつつ、親切な同僚たちをじっと観察し、真似し、その人生を「設定」として吸収する茉莉花。
スパイが現地の人間に溶け込む展開ってあるけれど、そのスパイが「設定」を練り上げてる段階の話って私はあまり読んだことがなかったので、今回のお話はとても新鮮でした。

 

時間をかけることなく、みるみるうちに「異国人」が「その国の人間」へと変わっていくのは、なんとも不気味。
同僚たちの仕草、表情、言葉づかい、生まれ、育ち、考え方。
それら全てを完璧にコピーしていく茉莉花を「怖い」と思うのはごく自然な感情ではないでしょうか。
だってそんなの普通はできないし、しないからね。気づいた人が彼女を異質だと見るのは仕方ない。
ホラーサスペンスに出てくる怪物みたいな扱いで笑ったけれど・・・!
内心が相変わらずの茉莉花だからギャップがすごくて。
ただ、茉莉花を知る読者の目からみても、楽しそうに歓談したあとに鏡で口角を調整する茉莉花にはヒェ・・・っとなったりしましたが。

 

そんな風に徹底的に「設定」を練り上げ、「叉羅国のジャスミン」を作り上げて、茉莉花は何をしようとしているのか。

その意図がわかった終盤のシーンで、ようやく「不気味な怪物」ではなく「主人公の茉莉花」が戻ってきたように感じました。
「完璧な再現」は相手を探るためではなく、相手を理解するためにある・・・・・・茉莉花は「間諜」ではなく「官吏」として、しっかりお仕事をしたんだなって。
子星さんの言ったとおりの仕事ぶりだったわけです。

 

さて、茉莉花の間諜っぽい潜入展開は面白かったけども、叉羅国編はまだまだ終わらない様子。
二重王朝制の解消まで持ち込めるかな?
そして茉莉花はシヴァン&ラーナシュと仲良しトリオになるのでしょうか(そこか?)(国に置いてきた「友達」がヤキモチ焼くぞ)

 

いや、その前に戦の気配が怖いんだけども・・・・・・
ラーナシュにもシヴァンにも愛着がでてきたので、叉羅国が酷いことにならないでほしいと思ってしまう。
茉莉花は全てを無事にすませて、今回の案件を国に持ち帰らないと。上の人と相談しないと!

 

続きもとても楽しみです。

 


メイデーア転生物語2 この世界に怖いものなどない救世主 /友麻碧

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メイデーア転生物語 2 この世界に怖いものなどない救世主 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年3月刊。
魔法世界に転生し、恋した少年と引き裂かれた少女の、数奇な運命を描くファンタジー第2弾。
今回も面白かったです。魔法学園要素継続でよかったー!

☆あらすじ☆
王宮通いと魔法学校。救世主の守護者となったマキアの二重生活がはじまる
〈世界で一番悪い魔女〉の末裔マキアは、〈救世主の守護者〉となり引き離された元騎士のトールと、舞踏会で再会を果たした。ところがマキアに守護者の印が現れたことで、事態は一変。〈救世主の少女〉アイリの相談役として、王宮通いを始めることに。
トールに会えるようにはなったものの、使命の前に力不足を感じたマキアは、魔術師として成長するため魔法学校の授業に励む。だが救世主を狙う刺客は、否応なくマキアの前にも現れはじめ……。
魔法世界“メイデーア”に選ばれた者たちの物語は交差する。

以下、ネタバレありの感想です。

 

不明のままだった「四人目の救世主の守護者」となったマキア。
それは、当初いた「四人目の守護者」がどこかで死んだことによる繰り上げ選抜だった。
守護者と学生の二重生活を送ることになるマキアだが、一方で、王宮では救世主と守護者を狙う刺客の存在が問題となり―― という第2弾。

 

とりあえず学生生活続行でよかった。
このシリーズの学園描写すごく好きだからなぁ。アクション多めな授業風景も、マジカルな飯テロ描写も楽しいので。
でも「ポテト・レポート」には笑った!
ひたすら芋を調理して食べ続ける課題とか嫌なんですけど・・・・・・私なら途中から揚げ物系マヨ系ばかりになって顔がひどいことになりそう。だって醤油ないんでしょ。和だしをくれたら何とかなるが!おしゃれにジュノベーゼのニョッキとか作れない(悲)
そんな地獄の課題なのに、班の仲間たちで仲良く料理してるシーンはすごく楽しそうでニコニコしてしまいました。
この4人の仲良しな雰囲気ほんと好き。分担して調理してるときも、「もう芋はやだ・・・」ってなってるときも、一蓮托生感があって可愛い。

 

マキアの学園青春ストーリーが平常運行する一方で、少しずつ動いていくのは救世主まわりの話。

アイリがなぁ。「絶対に好きになれない女」って感じをぷんぷんと漂わせてるのがなぁ。
マキアが前世の秘密をバラしたことで、次巻以降は何か変わるのかもしれませんが。
恋敵になる前は親友だったのだし、仲直りの可能性もあるのかな?
なんだか、あまりにもキャラ設定が破滅フラグだらけで逆に心配してしまいます。
「この世界に怖いものなどない救世主」が進む道が明るいとは思えない・・・・・・

 

破滅フラグといえば、テンプレかよってくらい悪役令嬢ムーブしていたベアトリーチェは好感度がぐぐっと上がりました。
私はこういうベタなツンデレ少女、大好きだわ。
恋に目がくらんでるボンクラ王子なんかさっさと忘れて、隣にいる執事くんと末永く仲良くしてくれって思う。
あのボンクラ王子、アイリよりもイライラするせいか未だに名前を覚えられません。なんだったっけ(キャラ紹介ページをめくる労力すらかけたくない)

 

さてさて、色々と物語が動き出している気配がする第2巻。
エスカ司教とか、藤姫とか、前世関係者っぽいキャラがぞくぞくと登場しているし、「三人の魔術師」絡みの話も断片的に語られ、掘り下げが進んでいます。
となると、そろそろ「帰還」もあるか?楽しみですね。

 

楽しみといえば、明らかに何かを誤解したらしきトールと、それに気づいていないマキアの関係の行方も気になります。
前世を知る女と未だ知らない男という、めちゃくちゃエモくて大好きなシチュエーション。
こんなの期待が高まるよ!どうなっちゃうのでしょうか。ニヤニヤが止まらなくなりそう。

 

次巻が早く読みたいです。

 

俺の家に何故か学園の女神さまが入り浸っている件2 /紫ユウ

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俺の家に何故か学園の女神さまが入り浸っている件2 (角川スニーカー文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★☆☆
2020年3月刊。
餌付けした美少女から数万倍の勢いで餌付けされ返す学園ラブコメ第2弾。
ヒロインの猛攻に甘さが足され、とても糖度が高いです。
ラブコメとしては甘々で良いんだけど、物語としては安定しすぎているかも?

☆あらすじ☆
放課後限定の同棲生活×夏休み=ずっと一緒!? 好きアピールが加速中!
自堕落な一人暮らしを送る俺・常盤木翔和の部屋には、学年一の美少女・若宮凛が入り浸っている。
放課後限定で始まったこの関係も夏休みを迎え――
朝はうちに来る凛に起こしてもらい、バイトから帰ると彼女が待っている、“ずっと放課後”な日々になっていた!
ご飯を食べるのも、宿題をするのも、息抜きのゲームをするのも二人一緒。
「今晩、お世話になってもいいですか?」
ついには、凛がうちに泊まることになり!?
プールに、そして夏祭りに……誰にも邪魔されない二人っきりの同棲生活(なつやすみ)に、凛の好きアピールが加速する!!
WEBで圧倒的人気の甘々ラブコメ、距離が縮まる第2巻!

以下、ネタバレありの感想です。

 

相変わらず翔和の家に入り浸りの凛。
入り浸りを超えて同棲がスタートしてしまいました。
夫婦でイチャイチャするために娘を家から追い出して男の家に住まわせるの、正直どうかと思うよ!?

 

ちょっとどうかと思う母のアシストが入り、夏休み限定で始まった同棲生活。
元々アグレッシブに仕掛けていた凛だったけれど、2巻はもはや気持ちを隠す気がゼロってくらい攻めに攻めてましたね。甘々〜〜(良い〜)
これに耐えた上で平気な顔できる翔和の理性どうなってるの?

 

一方の翔和も、鉄壁ガードだったのは昔の話。
隠しきれずに溢れてる好意と、自分の家に凛がいて当たり前って感じの空気。
あの捻くれ者がよくもここまでデレたよなぁと思いました。
全然デレてないって顔してるけど、すごく素直にデレてる・・・!

 

そんな感じで、お付き合い半歩手前の最高に甘酸っぱい距離感にある二人が描かれた第2巻。
ただ、その状態で安定してしまった感じもあるんですよね。物語に波が少ない。
ひたすら二人の可愛い日常が描かれていくのは癒やされるけど、読み応えという点で少し物足りなさを感じました。

 

まぁでもラストに動きがあったので、次巻以降は期待できるかな?
翔和が頑なに恋愛感情を認めない理由は、やはり家庭環境にあるようなので、その辺りの掘り下げが楽しみです。

 

追放悪役令嬢の旦那様 /古森きり

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追放悪役令嬢の旦那様 (ツギクルブックス)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年12月刊。
これは好きな雰囲気!
悪役令嬢転生(※主人公はその夫)×辺境スローライフな異世界ファンタジー。
婚約破棄された悪役令嬢を助けたことで彼女を押し付けられ、棚からぼた餅式に幸せ(とトラブル)が舞い込んでくる青年貴族の物語です。
この主人公がとんでもない尽くし系ヒーローでした。愛する嫁のためにめっちゃ頑張るひと。しかしその頑張り方がチート級。
テンポも良くて楽しく読めたし、主人公がヒロインにどんどん惚れ込む姿にニヤニヤできたし、これは続きも期待したいな!

☆あらすじ☆
追放悪役令嬢が繰り広げる、ちょっと不運で最高にハッピーなファンタジー!
卒業パーティーで王太子アレファルドは、自身の婚約者であるエラーナを突き飛ばす。
その場で婚約破棄された彼女へ手を差し伸べたのが運の尽き。
翌日には彼女と共に国外追放&諸事情により交際0日結婚。
追放先の隣国で、のんびり牧場スローライフ!
……と、思ったけれど、どうやら彼女はちょっと変わった裏事情持ちらしい。
これは、そんな彼女の夫になった、ちょっと不運で最高に幸福な俺の話。

以下、ネタバレありの感想です。

 

王太子の「友人」ではあるものの、彼の人使いの粗さに辟易していた伯爵令息・ユーフラン
王太子が婚約者である公爵令嬢エラーナを手ひどく糾弾する現場に立ち会ったユーフランは、彼女に思わず手を差し伸べてしまう。
その姿を見た父親たちの意向により、婚約破棄&国外追放されることになったエラーナの道連れとなるべく彼女と結婚させられたユーフランだったが、それは、長年エラーナに横恋慕をしていた彼にとって、実は夢のように幸運な展開で―― というストーリー。

 

というわけで、悪役令嬢の夫が主人公の物語です。
この主人公ユーフランのデレっぷりがとても楽しい作品でした。
ずっと好きだった子と結婚することになり、内心ウキウキのルンルンで顔がにやけっぱなし。
でもそれを知られて嫌われるのも怖いから、ゆっくりじっくりエラーナとの距離をはかっていくユーフラン。
「国外追放」という事実を忘れそうになるくらい、浮かれ気分で新生活を満喫してるんですよね。めちゃめちゃ幸せそう。

 

そんな幸せだけど慣れない新生活を力強く支えていくのが、ユーフランのチート級な発明力。
異世界ファンタジーなのにどんどん家電が揃っていくの笑うでしょ。
最初からシュシュとかドライヤーとか作ってるから「こいつ実は転生キャラ?」と疑ったりもしたんだけど、れっきとした現地の人だそうです。すごいわ。きみが天才か。
正直かなりご都合主義なんだけど、それをそのまま「あなたはご都合主義のしわ寄せキャラクター!」という自虐みたいな設定でゴリ押してきたので笑いました。潔い!そうだ、悪いのは元ネタのラノベの作者!笑

 

この「発明の天才」という設定を通してユーフランのエラーナへの想いが存分に描かれていくんだけど、これがもうびっくりするほど甘酸っぱい。

物は作れるけれど発想力に乏しく、目上の人間に良いように搾取された結果、自己評価が著しく低かったユーフラン。
そんな彼を真正面から評価して、褒めて励まし、代わりに怒ってくれるエラーナ。

とても相性が良くて可愛いし、ほっこり和む二人なんですよね。
エラーナが何かする度に「ああ〜〜〜〜好き〜〜〜〜〜〜〜〜」と密かにゴロゴロと悶えるユーフランの姿にニヤニヤが止まりませんでした。
嫁のことが好きすぎる男なんですよ。彼の語りはエラーナへの恋心で8割埋まってる(言い過ぎか?)(でも体感それくらい)
ユーフランは最初から恋の沼の住人だったけれど、どうやらその沼は底なしだったようです。
エラーナがリクエストした物を作って、それでエラーナが喜んで、更に喜ばせたくてもっと作る―――何このカップル、永久機関かなにか?

 

そんな「夫」の恋心に気づかぬまま、ユーフランをどんどん惚れ込ませていくヒロイン・エラーナ。
彼女がどういう人物なのか、なぜこの世界に存在しないアイテムをどんどん思いつくのか、・・・・・・については置いといて。
エラーナに関しては、彼女のいう「第二部」の破滅シナリオが気になるかなぁ。
悪役令嬢もののお約束通りなら、シナリオは簡単に避けて通れるものではないだろうし。
そして勿論、ユーフランの恋が本当の意味で実るのかも気になるところ。
まだ夫婦カッコカリみたいな関係なんですよね。ユーフランが頑張って好感度を積み重ねているけれど、まだ両思いには至ってない感じ・・・・・・そのもどかしさが楽しいけれども、さてどうなることでしょうか。

 

ところで、エラーナが何度かユーフランのことを「モブじゃなかったのか・・・」みたいに言ってたじゃないですか。
とても失礼だけど、私はその気持ちが少しわかるような気がして。
いや、モブとは思わなかったんだけど主役にいそうなキャラとは違うよな〜準主役ラインだよな〜という意味で。

なんというか、「発明家」という点を除くとユーフランって少女漫画とか逆ハーものの人気ランキングで3番とか4番にいそうなキャラクターっぽくないです?
チャラくて軽薄で笑顔が胡散臭くて、でも裏で仕事はできる有能キャラで、遊び人っぽいけどヒロインに一途で・・・・・・みたいな。金髪ロン毛の騎士キャラとかにいそうな!(偏見)

ユーフランは赤毛だし遊び人設定もないけど、なんだかそれっぽいなーという、個人的な印象が強くてですね。
そういうキャラって大抵は不憫に貧乏くじを引くものですが、貧乏くじを引きそうだったユーフランが大逆転で当たりくじを引き当てた本作の構造が、なんだか面白いな〜と思ったのです。
ううむ・・・・・・超個人的なふわっとした感覚を長々と語ってしまった・・・・・・伝わらんだろこれ・・・・・・

 

まぁそんなことはどうでも良いのです。
この作品が面白かった!ってことが言いたいだけなので。

元悪役令嬢とご都合主義請負人の夫婦(仮)
そんな二人のスローライフはどうなっていくのか。
続きもとても楽しみです。

 

余談。
唐突な「はめふら」ネタに笑いました。リスペクトすごい。

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著者 古森きり イラストレーター ゆき哉

 

【おすすめラノベ紹介】ヒロイン大好き男主人公・ヒーロー大好き女主人公!

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主人公が愛されるのも良いけれど、愛されるより愛したい派の主人公も良いものだ!

というわけで、当ブログおすすめの「愛に生きてる主人公」「めちゃめちゃ恋してる主人公」のラノベを紹介していきます。

続きをどうぞー!

 

ヒロイン大好き男主人公!

コミュ障魔術師がエルフの美少女に一目惚れ。
勢いで連れ帰ったはいいものの、口下手すぎてうまく彼女と話せない主人公・ザガン。
心に深い傷を負いながらも、ザガンの不器用な優しさを知っていくヒロイン・ネフィ。
ギクシャクした空気から始まった同棲生活のなかで、孤独な二人は少しずつ距離を縮めていく物語です。

嫁が好きで好きで大好きで、嫁と家族を守るために巨大な力を手にしていく魔王さまが可愛くて格好良いんですよ。嫁の可愛さは更に上だけども。
コミカライズも最高なので、お試しにぜひどうぞ(下の公式サイトから全話読めます)

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?(コミックファイア)

 

アニメ化もされた電撃文庫の人気シリーズ。
ネトゲで出会って「結婚」した女の子の正体は、リアルとゲームの区別がつかないコミュ障の残念系女子だった!――という学園ラブコメディ。
初期はヒロイン・アコの猛攻に押されがちな主人公・ルシアンですが、シリーズが進むにつれて「これはルシアンの愛の方が地味に重いのでは・・・?」となること間違いなし。
えっちな表紙が多いシリーズですが、中身はド健全です。軽率でふしだらな行いは絶対にしません。
なぜならルシアンはめちゃめちゃ真剣にアコのことを考えているから。ちょっと真面目すぎるくらい。彼こそが真のイケメンなんです!

 

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宝島社
著 江本マシメサ イラスト あかねこ

一目惚れして連れ帰ったお嫁さんと送る、雪国ほのぼの夫婦生活(仮)。
本当の夫婦になるか否かを決めるお試し期間のなかで、少しずつ絆を育んでいく男女の物語です。
本作は、嫁の男前っぷりに惚れ込んでいく夫の可愛さが最高なんですよ。
ちなみに表紙の白い方が旦那で、赤い方が嫁です。どうだ、可愛かろう!
北欧先住民の暮らしぶりが緻密に描写されており、厳しい雪国の生活を鮮やかに感じられるところも魅力の作品です。

 

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著者 古森きり イラストレーター ゆき哉

人気ジャンルの悪役令嬢転生ものですが、本作の主人公は悪役令嬢の「旦那様」。

婚約破棄された悪役令嬢を助けたことで彼女を押し付けられ、一緒に仲良く国外追放。
そこから棚ぼた式に幸せ(とトラブル)が舞い込んでくる青年貴族の物語です。

決して報われない片思いだったはずが、何の因果か好きな子と結ばれることになり、ウキウキルンルン気分(でもこの気持ちが知られたら嫌われるかな!?俺はどうすれば!?)となる主人公・ユーフラン。
彼の語りの8割は、ヒロインへの恋心で埋まっている気がします。
好きな子に尽くして尽くして尽くしたい男の、チート級な尽くしっぷりに楽しくなる作品ですよ!

 

RPGによくある「途中で離脱する仲間」を主人公としたスローライフ・ファンタジー。
勇者パーティーを追い出され辺境に流れ着いた主人公が、元ツンデレの元お姫様と一緒に薬屋を開業する物語です。
この作品は主人公もヒロインが大好きだし、ヒロインも主人公が大好き。
特に初期は「互いの気持ちを理解した上で、あえて今の距離感での遠回りを楽しんでいる」雰囲気があって、これが転がり回ること必至の甘ったるさなんです。砂糖がぶがぶ飲んでる気分になれる。
イチャラブものが好きな人には、心の底からおすすめです。

 


カップルの視点を入れ替えつつ描かれるので、男主人公ものか微妙な作品ですが、とりあえずこっちで。

明るくて笑い上戸な後輩女子と、訳アリで挙動不審な先輩男子の恋人なりたてラブコメ。
本作はどこからネタバレになるのか判断が難しいので詳しい説明は避けますが、彼氏が彼女のことをどれだけ好きなのか、付き合う前からどれほど想っていたのか、滔々と語られていく物語です。
何度も何度も「戒理先輩、那乃ちゃんのこと大好きすぎか!」と悶えます。
一切の照れも恥じらいもなく、ひたすら正直な好意を彼女にぶつける彼氏のお話です・・・!(彼女の反応は表紙の通り)

 


ラブコメではないのだけど、「ヒロインへの愛に身を投じた主人公」を描いた作品として、本作を挙げないわけにはいきません。

この物語の主人公は怪人達を束ねる悪の結社の総帥。
そんな彼が戦うのは、怪人達の天敵として「正義」を振るう、彼の最愛の幼なじみなのです。
彼らの闘争と、その裏に隠された愛に衝撃を受けてほしい。あまりにも切なく苛烈な男の純愛がここにあります。
全3巻で綺麗に終わっているので一気読み推奨ですよ!

 

ヒーロー大好き女主人公!


決して届かない人に恋をしている魔女が、彼から惚れ薬を作って欲しいと頼まれる。
これって失恋じゃん!と落ち込みつつ、薬を作っている間だけは一緒にいられることに喜ぶ主人公ロゼ。
行き場のない恋心を持て余しすぎて常時パニック状態の魔女が可愛すぎてしんどいラブコメディです。
寝ても覚めても彼が好き。どこまでいっても彼が好き。

こんな恋なんて捨ててしまいたいと頭を抱えても、顔を合わせる度にもっと深く惚れ込んでしまう。
まさに底なし沼のような片思いに沈んでいく魔女の懊悩が、切なくもコミカルに描かれるお話です。

 


国の未来を憂い、血みどろの簒奪劇によって皇帝となった男・暁月。
その簒奪の現場に居合わせ、「ちょうどいいから」という理由で皇后となった少女・莉杏。
出会うまで夫の名前すら知らなかった莉杏は、彼の隣に立つ「皇后」として、その自覚と覚悟と抱いていく――

・・・・・・という硬い紹介文はなんか違うなーってくらい、主人公・莉杏のパワフルな「陛下大好き!」という気持ちに突き動かされていく中華ファンタジーです。

暁月の内面を知れば知るほど彼に惹かれ、全身全霊かつ体当たりの恋をする莉杏。
ちょっとお花畑な彼女の恋愛脳は、その想いの強さに呼応するように冴え渡り、後宮内で起こる様々なトラブルを見事に解決していきます。
ミステリー要素も楽しい作品です。姉妹作である『茉莉花官吏伝』と合わせてどうぞ。

 

密かに片思いをしていたクラスメイトの高遠くんが異世界召喚される現場を目撃し、慌てて滑り込んで後を追った女子高生アリア。
そんな彼女に神様から与えられたスキルは、人類の様々な最高記録を再現する能力。
汎用性強すぎるスキルのせいで守られるヒロインムーブはできない。「むしろ私が高遠くんを守るんだ!」と意気込む主人公アリアの活躍を描いた異世界召喚ファンタジーです。
能天気で恋愛脳全開なアリアの語り口が楽しく、ヒーローとの夫婦漫才も面白い本作。
めちゃめちゃ笑って超元気でますよ。気鬱なんて軽く吹っ飛びますよ!

 


前世が大妖怪の浅草在住女子高生が、あやかしたちを相手に奮闘する爽快活劇。
前世も今世も夫婦なカップルで、ジャイアンな鬼嫁が苦労性な夫を尻に敷いているような力関係。
しかし、この「嫁」の愛の深さがどんどん掘り下げられていく物語なのです。
彼女が夫に向ける途方もなく大きな愛情と、その業の深さ。
高校生夫婦が可愛くイチャイチャしてるかと思ったら、エモくて切なく壮大なラブストーリーが描かれるので、その温度差に心がやられることでしょう。

 


孤独を癒やしてくれた弟子に無償の愛を捧げ、彼に殺される瞬間まで彼の幸せを願った女。
託された悲願を隠して宿敵に弟子入りし、愛した女を失う代償として孤独となった男。

「殺した男と殺された女」という悲惨な関係から始まる物語ですが、「そんなことよりも弟子が可愛い!」という転生主人公アセビの無尽蔵な愛によって暗鬱な空気は押し流されていきます。この主人公の愛は強いぞ。

「愛してるけど殺さなきゃいけない」とか「愛してるから殺してあげる」とか、そういう関係性が好きな人にはたまらないと思う。
話の筋や設定はとても重いのだけど、主人公の明るさとコミカルなノリに包み込まれて意外なくらい楽しく読める作品ですよ。

 

乙女ゲーム世界に転生し、ゲーム内最推しキャラである斎の「幼なじみ」として育った主人公・紫緒。
神のごとく崇拝して愛を注ぐ斎の幸せのため、紫緒は彼とゲームヒロインとの恋の成就を画策する―― はずが、なぜか荒ぶる神によるアイアンクローを食らってしまうラブコメです。
斎のことが大切で仕方ないのに、愛ゆえの頑張りが受け入れられずに困惑する紫緒。
彼女の奮闘にイライラを募らせる斎の不憫さも見どころですが・・・・・・
果たして斎を褒め讃え崇め奉っている紫緒の気持ちは、本当に信仰心なのか、それとも?

 

以上です。
最近は憂鬱になるニュースが続いていますが、楽しいラブコメを読んだりして明るく元気にお過ごしください。

 

プロペラオペラ2 /犬村小六

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プロペラオペラ 2 (ガガガ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年3月刊。
飛行戦艦がぶつかり合う、恋と空戦の戦記ファンタジー第2弾。
戦闘シーンの理解が私には難しくて苦戦してしまったけれど、それを加味しても面白い作品だと思います。
思うままにならない不条理な圧力と戦い、圧倒的に不利な戦力差に立ち向かい、たったひとつの命を抱えて彼らはどこまで進むことができるのか。
戦争ものは読んでいて辛くなることが多いのだけど、そこできらめく命の輝きに、どうしようもなく目が奪われてしまいます。
あとやっぱりこの幼馴染ケンカップルが本当にいいんだわー!

☆あらすじ☆
美少女艦長+天才参謀、死の淵へダイブ!!
極東の島国・日之雄。その皇家第一王女・銀髪の美少女イザヤは18歳。
同い年で幼なじみのクロトは、10歳の時にイザヤにとんでもない“狼藉”をはたらき皇籍剥奪された曰く付き。
しかしふたりは今、タッグを組んで飛行戦艦「飛廉」を駆る国民的人気の艦隊司令官&超切れ者天才参謀である。互いを意識しているくせに素直になれないイザヤとクロト。イザヤと人気を二分する巨乳艦長リオ。彼女たちのためならいくつでも命を捨てたいファンもとい乗組員たち。その乗組員たちを我が手足として支配するために不謹慎で不埒な策略をこっそりと練るのが策略の天才クロト。
ということで、何も起こらないはずがない南の島のビーチでの休日……の後は、敵国リングランド艦隊との決戦が待っている!!
ファン待望の犬村小六真骨頂「空戦ファンタジー戦記」、スケール&面白さアップの堂々第二幕!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

戦争はまだまだ続く。
「井吹」から「飛簾」へと乗り換えたイザヤとクロトは新たな戦地へと赴くが―― という第2巻。

 

ここで突然の水着回!
冒頭からめっちゃ笑いました。
不敬全開(むしろ逆に敬意MAXか?)でプリンセスの水着を求める部下一同の素直すぎる欲求にお腹が痛くなる・・・!
クロトはクロトで多感な10代男子とは思えぬ無関心ぶりで更に笑います。
「生物学的希少性からいえば、おれのほうがあいつらの数十倍、撮影する価値がある」は大真面目なんだろうな・・・・・・何言ってるんだろう・・・・・・わからない何もわからない。

 

さて、そんなコメディ全開でスタートした第2巻は、本編で遊びをいれる余裕が(一部除き)なかったから冒頭に突っ込んだんだな・・・・・・と思わず納得するような内容でした。

若輩であるイザヤたちの活躍が気に入らない日之雄のお偉方。
日之雄への殺意全開で罠を仕掛けるガメリア軍。

とにかく上層部が話を聞いちゃくれない。献策も忠告も全部蹴る。
国の未来ではなく保身しか考えないから邪魔で邪魔で仕方ないんですよね。
一方の敵軍は格下相手にも油断せず、無理めに思える作戦をどんどん展開していくので有能さが際立つこと・・・・・・しかも使える人材も豊富。
傍から見てもこりゃ勝てねーわー、、、、と思っちゃいます。
やりにくい環境の中でなんとか最善を尽くすべく、罵り合いつつ話し合うクロトとイザヤの姿に同情がやまない。

 

そんな悪条件の中でも冴え渡るのはクロトの頭脳と「飛簾」の絆。
ぶっちゃけ私には艦隊戦はとても難しくて、必死に文字を追っても上手く頭にイメージができないことが多々あったのだけど、それでもやっぱり面白いのは面白い。状況を全て理解できなくても、戦場のドラマがちゃんと面白いから楽しめる。

立てまくってたフラグを見事に回収したクライマックスの衛角攻撃とかね。
予想通りで予定通りの展開なのに、あんなに泣けるシーンになるとは思わなかった。
船が体当たりするために何が必要かって、よく考えれば分かる話だった。
戦意高揚のために「アイドル」に徹する姫たちと、彼女たちの立場も覚悟も理解した上で命を支げる部下たちの絆が・・・・・・
その絆の美しさが、私にはとても怖い。戦争って本当に怖いと思ってしまう。
そのへんの欺瞞を無視せずに、けれどエンタメとして面白く仕上げているところがやはり上手いなぁと感じました。

 

クライマックスといえば、ラストシーンのクロトとイザヤの雰囲気が最高でした。
いつも喧嘩してるくせに、悪態ばかりのくせに、こういう時だけ素直になるのずるい・・・!
途中で新キャラのユーリが投げた「クロトが戦うのはイザヤを守るためなんですね!」という爆弾、なんてエモく爆発するのか。
イザヤもイザヤで、あんな揺れる乙女っぷりを披露してたくせに、どうしてそんな哀しい願いを託すのか。。。

わたしたちに幸福な結末はあり得ない。

死ぬことまでが仕事の「悲劇の王女」か・・・・・・
いやいや、それを覆してこそのカタルシスでしょ!クロトが全部ひっくり返すんだ!間違いない!!

 

戦況は相変わらず不利なのでドキドキしますが続きも楽しみです。
作戦行動を開始したスパイのユーリがどう動くのかも気になるんですよねぇ。寝返りそう〜〜〜笑

 

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