Quantcast
Channel: 晴れたら読書を
Viewing all 1679 articles
Browse latest View live

椅子職人ヴィクトール&杏の怪奇録2 カンパネルラの恋路の果てに /糸森環

$
0
0


椅子職人ヴィクトール&杏の怪奇録(2)カンパネルラの恋路の果てに (ウィングス・ノヴェル)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年2月刊。
椅子を愛して人類を憎む変人オーナーと、霊感持ちバイト女子高生。
そんな二人が、椅子にまつわる幽霊騒動に巻き込まれるホラー・ミステリー第2弾。
相変わらず怖かった・・・!ぶるぶる震えるような怖さじゃなくて、ぞわっと瞬間的に鳥肌が立つ感じ!
でも面白いです。1巻に続き、椅子薀蓄と謎解きに読み応えがある作品です。
そしてヴィクトールと杏の関係が本当に楽しい。
糸森環印のヒーロー、「気にするのそこ!?」っていうズレたヤキモチが可愛すぎてときめくんですよね。

☆あらすじ☆
霊感体質の女子高生・杏はアンティーク椅子工房「TSUKURA」でバイトを続けている。極悪人顔揃いの職人たちは相変わらずみんな心優しく親切だし、死にたがりで人類嫌いで変人美貌のヴィクトールからは人類扱いされず、時に楽しく椅子談義が弾んだりもする。アレさえ出なければ本当に良い職場なのだ。ところが、ある二つの椅子が工房へ持ち込まれて以来、杏はたびたび恐ろしい目に遭うようになってしまい……?
バイト継続の危機勃発、ふんわりオカルティック・ラブ第二幕!

以下、ネタバレありの感想です。

 

またも「TSUKURA」に幽霊がご来店。
しかもとても怖い。私の脳内イメージは椅子に座る貞子でした。怖すぎ・・・!

シェーカーチェアに取り憑き、杏に嫌がらせをする謎の幽霊。
ロマンと恐怖を刺激する、廃車となった鉄道のボックスシート。

二つの「椅子」は様々な怪奇現象を呼び、更に「別の恐怖」が杏を襲うことになり―― という第2弾。

 

本当に怖いのは生きている人間、というのはホラーの話題でよくある言い回しだけど、正直どっちも怖いよ!
貞子みたいな幽霊にまとわりつかれるのも、人気のない屋内にお面かぶった男が現れるのも、同じくらい怖いよ!!

あの状況で「椅子が汚れるから汗かきたくない・・・」と考える杏の静かなるパニックにゾッとしました。
しかも助けてくれたのも幽霊っていう。杏って他のシーンでも「幽霊に襲われるところを幽霊に助けられてたりしてましたよね。大丈夫かな。ちょっとだいぶアッチ寄りの存在になりつつあるような・・・・・・

 

杏、ヴィクトールや「TSUKURA」のために幽霊騒動を解決しようと意気込んでいるけど、それってなんだか深淵をのぞいてるような不安感に襲われるんですよね。
彼女は死人を見つめすぎだと思う。生者と死者の区別がついてないから無理もないんだけど(普通に会話したあとで「誰と喋ってたの?」はやめろー!)、心配でたまらない。
本当はヴィクトールのように我関せずで「何も見えてないし感じてません!」と目を閉じ耳を塞いでるのが正しい反応なんだろうなぁ・・・・・・それで済む状況じゃないから結局ヴィクトールも逃げられないんだけど。

 

そんな訳で、またも怪異現象から逃げられなくなった二人が挑む今回の事件。
ミステリー的にも面白い話でした。
「禁断」が何重にも重なる関係で、しかし想いの深さが食い違ったゆえの悲劇。
そのドラマには切なくなったけれど、それでも「ハレルヤ。恋は幸いだ」と言いきる姿には不思議な清々しさがありました。
あのセリフはとても印象的だったし、透明な恋心が好きだと思った。
あんな結末になってもそう言えるのが、その愚直なまでの恋が、なんだか美しくて。

 

それにしても「恋は生きている間にするもの」だから、そのまま死ねば想いは永遠になるのかな。
この後に収録された短編で生きてる人間たちの醜悪な恋愛事情が描かれたものだから、余計にそう思ってしまいます。
「恋は幸いだ」と思えるうちに終わらなければ、恋は災いになりかねない・・・・・・

 

まぁそういう恋だの愛だのは、杏とヴィクトールにはまだ早い話の様子。
でもこの二人の距離感、とても好きです。
杏は必死に気持ちに蓋しようとしているけれど、どう見ても特別扱いされてるからなー。
人類嫌いのヴィクトールから「人類」の枠外だと言われた上に、フルネーム呼びでもなくなったし。
これを意識するなっていうのは酷だよ!笑

 

ヴィクトールの名前呼び、杏を引き止めるための特例的なアレかと思いきや(あのシーンで二人が交わす切実な空気がとても良かった)、その後も継続してましたからね。ちょっと意外だった。
恋愛否定派のヴィクトールがそう簡単に落ちるとは思わないけれど、この「結局どういう関係なんだ?」と突っ込みたくなる距離感が楽しくて仕方ないので、杏にはぜひとも今後も悶えてほしいと思います。

 

あとがきを読むに3巻も出るのかな?楽しみです。

 


七代勇者は謝れない2 /串木野たんぼ

$
0
0


七代勇者は謝れない2 (GA文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★☆☆
2020年3月刊。
妹襲来の第2巻。
途切れた兄妹愛の顛末がとても感動的でした。
が、ケンカップル分がちょっと足りてない気がする!?

☆あらすじ☆
妹セーネ登場! 聖剣争奪戦、再生の第2巻!!
「どーしよ。くっつくのそれ……?」
勇者の力を奪いあう八代勇者(仮)ジオと(元)七代勇者イリア。崩壊しかけるジオの体をなんだかんだで維持しつつ、折れた聖剣を直す手段を求めて、2人は協力して(故)六代勇者ミルカークの出身地アステリアに向かう。
そんななかジオたちの前に現れる、ジオの妹セーネ。何よりも大事に思っていた彼女の出現に、ジオは激しく動揺してしまう。なぜなら、セーネは2年前に死んでいたはずで……。
セーネを蘇らせたという魔王ヴェル=カの目的とは。そして、兄妹の失われた絆の行方は――?
2人の勇者候補が紡ぐ聖剣争奪ファンタジー、再生の第2巻!

以下、ネタバレありの感想です。

 

首がとれたジオ。
めちゃくちゃ笑いました。笑い事じゃないんだけど。
首どころか身体がバラバラになってる状態とか、悲惨なんだけど元気すぎて笑う。

 

そういうわけで人間から一歩踏み外しかけているジオを戻し、また、折れた聖剣を修理しなければならなくなったイリアとジオ。
そんな彼らの前に、魔族となった妹・セーネが現れ、ジオの心を荒波に放り込み―― というのが2巻のお話。

 

死んだはずの妹とそっくりな魔族が目の前に立った時、ジオは何を思うのか。
その答えはあまりにも頑なで、愚かで、哀れなものでした。
希望をもって裏切られるのが怖いなら、その希望そのものが怖くなるのは当然のことで。
極まったシスコンだけに、「妹らしき何か」を受け入れられないというの、よく考えたらあまりにもジオらしい。

 

そんな兄の心境をよく理解しているセーネがとても健気なんですよ。
兄の心に負担をかけないように、でも妹であることを受け入れてもらえるように、不器用に立ち回るセーネちゃんが可愛すぎた。
こんな妹だったら確かに愛しすぎちゃうよなぁ。良い子だもの。

 

色々と問題はあれど、無事に兄妹の絆を取り戻せてよかったです。
ジオは往生際悪くも完全には認めてないけどねそのなけなしの抵抗は何!?と問い詰めたくなる。
名前で呼ばないけど「妹」であることは認める謎論理。
まぁそれも彼が抱えていた心の傷の深さに起因しているのだろうし、これから先で少しずつ癒えていくといいなぁ(でもエピローグのブラコン発揮ぶりをみるに、現時点でほぼ癒えてるのでは?)

 

ところで、この兄妹の再会劇に挟まれて頑張っていたのがイリアなんですが。
仲人役を買って出ていただけに、なんというか、めちゃめちゃ空気読めるイリアちゃんでした。
いや、元々人の気持ちに敏感な子だけど、今回はジオに対しても気を使って空気を読んじゃっているから凄まじくおとなしいんですよ・・・・・・

 

これがね、、、、うーーん、、、ごめんなさいっ、物足りない!

 

私はイリアとジオが仲良く喧嘩しながら聖剣と紋章を奪い合ってるのが好きだったんです。

 

いや、そういう場合じゃないんだけども。それは分かるんだけども。でも寂しいぃ・・・・・・

 

むしろ心が弱ってるからか、前巻よりもジオが素直にイリアにデレてません?
イリアもめちゃめちゃ素直にデレてるよね。どさくさに紛れてほっぺちゅーしてるの笑ったw
それはそれで大変美味しくはあるんだけども・・・!でもでもでもでも(ケンカップルが見たかったオタク)

 

とは言え、内容は面白かったです。兄妹愛はよかったし、今回の影の功労者も格好良かったし。
ただ、終盤の戦闘シーンの描写が分かりづらかったのは気になったけれど。

次巻も楽しみに待ってます。

created by Rinker
SBクリエイティブ
著者 串木野たんぼ イラストレーター かれい

 

にわか令嬢は王太子殿下の雇われ婚約者6 /香月航

$
0
0


にわか令嬢は王太子殿下の雇われ婚約者: 6(一迅社文庫アイリス)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★☆☆
2020年3月刊。
タイトルそのまま新婚生活スタート!の第6巻。
慣れないながらも必死に「王太子妃殿下」を頑張るリネット。
そんな彼女の日々はやはり穏やかではないようです。

☆あらすじ☆
ワケあり王太子殿下とようやく結婚した、貧乏伯爵令嬢リネット。アイザックの素敵な旦那様ぶりにうっとりしつつ、自分も王太子妃として相応しくなろうとがんばっているけれど……。王太子妃づきの侍女選びは難航するし、初めて主催したお茶会も不測の事態で中止することになってしまって!? これって私が新米の王太子妃だからですか! それなら、なめられないように、男装してでも切り抜けてみせます!!
ワケあり王太子殿下と貧乏令嬢の王宮ラブコメディ第6弾!

以下、ネタバレありの感想です。

 

王太子妃としての新生活が始まったリネット。
アイザックと共に過ごす生活に幸せを感じるものの、側近となる侍女探しは前途多難な上、がんばって主催したお茶会では令嬢の卒倒騒動が起こってしまう。しかも、その騒動の裏には違法薬物の存在があるようで―― という第6巻。

 

3章タイトルの「違法薬物と恋する令嬢たち」の異様な並びが好きです。
字面は強いのに内容が想像できないワケワカラン感じが良い・・・・・・

 

とはいえ違法薬物ダメ、絶対。
お茶会をぶち壊されたリネットとアイザックは、隣国を股にかけての調査に乗り出すのです。

 

この「覚め薬」の一連の騒動は、結局リネットたちを直接狙ったものじゃなかった、ということで良いんです?
王宮の要人にまで届いた割に、なんとも真相がしょっぱかったような・・・・・・王宮の警備体制を見直す必要がありそうだなー。
悪人サイドもまさかこんな大物が釣れた上に乗り込んでくるとは思わなかっただろうよ・・・・・・

 

運が悪すぎる悪人どもはさておき、クライマックスの雪山アクションはとても面白かった。
リネットは戦場に出るヒロインだけど「こんな死に方は嫌!」というセリフには結構心に刺さった。
彼女はそういう危険がある場所に随行するんだなって。
その上で、絶対に死ぬなよ?と警告を発するアイザックが格好良かったです。
モーゼよろしく雪を割りながらの「世界の敵になるぞ」発言に笑う。怖い怖い。脅し方が怖い。
彼がどこまで本気かは分からないけれど(9割くらい?)、危険な場所に共に行く以上は共に帰るところまでがお仕事ってことですよね。

 

さてさて、最初の問題だった侍女選びの方も無事にクリア出来た様子。
新キャラのマテウスシャノン、かわいいカップルでした。
惜しむらくはマテウスの顔がみえる挿絵がなかったことかな。なぜに???

 

シャノンはリネットの友人兼侍女兼参謀になれそうで、良いポジションに収まった子だと思います。
まぁ彼女発案の「男装で人心掌握」は既出キャラの二番煎じ感があったのだけど、そもそもリネットは男装もするヒロインだからこういう方向にいくのは自然なのかも?
今後もトラブルは山積みだろうし、あの手この手で掌握していく中での最初の一手と考えれば妥当かもしれません。

 

ところでレナルドさんが結局見合いを回避しちゃってるんだけど、このまま回避し続けるのでしょうか。
私はグレアム兄さんの方も気になるなぁ。グレアム兄さんがラブコメしたらめちゃくちゃ面白くなりそうなんだけど(疑似百合しよ)

糸森環はいいぞ糸森環を読むのです ― 少女小説家・糸森環先生のオススメ作品を紹介する

$
0
0

突然ですが、糸森環先生の小説が大好きだ!!(記事タイトルの敬称略すみません)

糸森環先生は、ia名義のオリジナル小説サイト「27時09分の地図」(http://ash-map767.riric.jp/index.htm)で作品を公開されている作家さんで、現在は少女小説・ライト文芸のレーベルから多くの作品を発表されています。

 

そんな糸森環先生の作品が持つ魅力といえば、

・独特の感性によって細部まで作り込まれた、奥行きのある世界観
・セリフ回しやネーミングセンスに感じる「言葉遊び」の妙技
・主人公と読者を容赦なく痛めつけて甘やかすストーリー展開
・個性的すぎて底なしの魅力を発揮するキャラ造形 

など、個人的に推したいポイントはこのあたりでしょうか。

 

・・・・・・いや、全然足りない。

素っ頓狂で変人揃いの美形たち(男女問わず)とか、
人間の理屈なんかサッパリ通じない魅惑の人外とか、
章タイトルまで徹底して凝りまくる遊び心とか、
天国と地獄を紙一重の場所に置くような物語性とか、
どれだけ愛し愛されても一瞬で裏切られる油断できないドラマとか、

本当に色々あるんです。いっぱいある!
何もかもが好きすぎてたまりません。大好きだ。本当に好き。

 

でもこんな短くて拙い説明では1ミリも伝わらない気がします。
それぞれの作品にそれぞれの魅力があり、こんな抽象的な総括で語り尽くせるわけがないのです。

そういうことにしておこう。一番足りないのは私の語彙力だ。

 

前置きはこのへんで。
以下では、糸森環作品の中で特に私がオススメしたい作品を紹介していきたいと思います。

 

 

私が一番好きな作品『恋と悪魔と黙示録』


ツイッターで「みかこさんが一番推してるのはどれですか?」と聞かれてウンウン悩みつつ返した答えがこちら。

人に害をなす「名もなき悪魔」の名を書に記すため、様々な場所に調査官として潜入していくゴシック・ファンタジー。
天涯孤独の少女レジナと、彼女が契約した魔物アガル。
意図せぬ召喚から始まった二人の物語は、様々な波乱や事件を乗り越え、まるで神話のように壮大な運命を描いていきます。

仕事に真面目で優しいレジナと、頬を赤らめもじもじしながら乙女思考を炸裂させるアガル。
二人の恋はふわふわと可愛いけれど、時折ゾッとするような落とし穴が待っていたりして・・・・・・
そこが楽しい作品なんです。

あらすじ
「あなたは特別。契約して差し上げる」
悪魔の名を記した書を複製する森玄使であるレジナ。ある日、彼女は教会内で美しい獣型の高位の魔物を召喚してしまう。慌てて自室に獣を匿うけれど、聖祭の“神の花嫁”候補が悪魔に襲われる事件が発生!レジナは囮役として花嫁の身代わりをすることに―。そんな中、彼女の危機に美青年に姿を変えた獣が契約を迫ってきて…!?
一途な魔物と乙女が織りなす、悪魔召喚ラブファンタジー。

 

 

はじめて糸森環作品を読むなら『椅子職人ヴィクトール&杏の怪奇録』


直近の糸森環作品の中で、老若男女問わず全ての人にオススメしたい作品がこちら。
糸森環作品の魅力はそのままに、現代日本が舞台なので他作に比べて読みやすいと思うのです(他が読みにくいわけじゃないです、念のため)

椅子を偏愛するオーナー・ヴィクトールと、霊感を見込まれて雇われたバイトの女子高生・杏。
なぜか怪奇現象が多発するアンティーク椅子工房を舞台に、ヴィクトールと杏が幽霊騒動に巻き込まれていくオカルト・ミステリーです。

椅子の薀蓄と、幽霊の恐怖と、人の愛憎。
そこに本作の魅力があると思います。

なぜ幽霊は椅子に取り憑いたのか、その椅子にはどんな歴史があり、どんなドラマを秘めているのか。
二人揃って怖がりなヴィクトールと杏が、怯えて青ざめながらも解き明かした真実を、ぜひ見届けていただきたい。

杏とヴィクトールの微妙な距離感にも注目。
これぞ糸森環印のヒーロー!って感じに変人を極めているヴィクトールが最高なんです。
椅子だけが大好きで、人類のことはすごく嫌い。でも杏のことは・・・?

あらすじ
霊感体質の女子高生・杏は呼ばれるように入ったアンティーク椅子工房「TSUKURA」で霊を祓い、請われてバイトを始めることになった。たまのアレさえ出なければ良い職場で、極悪人顔揃いの職人たちはみんな心優しく親切だ。そして店のオーナーの、死にたがりで人類嫌いで変人美貌のヴィクトールに、杏は不意にときめいたりもしている。そんな時、杏がある椅子に座ってから店にはポルターガイストが頻発するようになり……?
椅子談義も楽しい、ふんわりオカルト&ほんのりラブ開幕!!

 

 

いま一番面白い和風ファンタジーはこれだ!『お狐様の異類婚姻譚』


誑かそうとする狐の元夫・白月と、誑かされまいとする人の元嫁・雪緒。
麗しくも残酷な怪の世界を舞台に、再婚をかけた元夫婦の攻防を描く和風ファンタジーです。

今刊行中の和風ファンタジーのなかで、私が知る限りにおいて最も面白い作品だと思います。大真面目に断言する。
日本の民話や童謡をベースに世界観が構築された本作は、糸森環先生の個性とセンスが余すところなく発揮された傑作なのです。

怪が支配する世界における、土着の信仰や風習にまでこだわった設定。
その設定は物語のなかで、後から後から意味を重ねていきます。この構成が秀逸なんだ。

鮮烈な存在感を放つキャラ造形がまた素晴らしい。
誰も彼もが表と裏の顔をもち、油断ならない者ばかりなんですよ。
そこが愛しくて憎らしい。

この物語のなかで、白月と雪緒は何度も「嫁に来い」「いやです!」の掛け合いを繰り返していきます。
痴話喧嘩だと思うでしょ?私も思ってた。でもちょっと違うんです。

ひとつ秘密が明らかになる度に、くるくると変化していく白月と雪緒の想い。
ラストのモノローグが最高なので、ぜひ1巻だけでも読んでみてほしい。

あらすじ
「嫁いできてくれ、雪緒。……花の褥の上で、俺を旦那にしてくれ」
幼い日に神隠しにあい、もののけたちの世界で薬屋をしている雪緒の元に現れたのは、元夫の八尾の白狐・白月。突然たずねてきた彼は、雪緒に復縁を求めてきて――!? ええ!? 交際期間なしに結婚をして数ヶ月放置した後に、私、離縁されたはずなのですが……。
薬屋の少女と大妖の白狐の青年の異類婚姻ラブファンタジー。

 

 

もふもふと偏屈の可愛さに癒やされる英国ロマン『階段坂の魔法使い』


産業革命期の英国を舞台とするフェアリーテイル。
ひねくれ者の魔法使いのところへ、呪いを持った少女が嫁入り―― するはずが手違いで「鳥獣郵便」の工房で働くことに。
雇用主と従業員の関係となった二人のすれ違いを、コミカルに可愛く描くラブコメ・ファンタジーです。

時には恐ろしい魔法使い、時には凛々しい銀狼、時には口の悪い紳士。
一人で何役もこなしながらヒロインの周りをウロウロする、偏屈で素直になれない魔法使いの挙動不審がみどころです。

鳥や動物が手紙を配達する「鳥獣郵便」という童話的な設定も素敵なんですよ。もふもふは良いものだ。

あらすじ
ジュディは触ったもの全てを眠らせる。そのせいで養父に疎まれ悪名高い“階段坂の魔法使い”と婚約することに!なのに魔法使いから結婚するつもりはないと拒絶され、帰る所のないジュディは彼のもとに居座るが…?
「花神遊戯伝」の著者が贈る、悪い魔法使いと少女のフェアリー・テイル!!

 

 

手加減なしのセンスが爆発!和風異世界召喚物語『花神遊戯伝』


私が初めて糸森環作品に出会った、記念すべきシリーズがこちら。

日本の神話がお好きな方に是非ともオススメしたい。
日本神話の世界観を彷彿とさせつつ、オリジナリティあふれる設定と尖ったセンスによって作り上げられた極上の和風ファンタジーです。

異世界に召喚され、女神の如く祀り上げられ、麗しい護衛たちに慕われる女子高生・知夏。
異世界召喚で、巫女で、逆ハーレム。
そんな設定から繰り広げられるのは、鞭・鞭・鞭に次ぐ鞭展開。
そこまで心を折らなくても!?と叫びたくなるほど、知夏を待つ運命は過酷で残酷。まさに苦難の連続なのです。

与えられた役割の重さに震え、信じた人に裏切られ、神代のしがらみにとらわれ、嘆き苦しみ、それでも立ち上がって前に進む知夏。
はじめは騒がしさばかり感じるヒロインなのだけど、終盤は彼女の幸せと安寧を祈ってばかりでした。

正直、『花神』はとてもクセが強い作品だと思っていて、特に序盤は読みづらさを感じる方もいるでしょう。少なくとも私はそうでした。
なので万人にはオススメしにくいのだけど、刺さる人にはめちゃくちゃ刺さるはず。そして沼に沈むのだ。

あらすじ
「流血女神伝」の須賀しのぶ推薦!! 閲覧数750万の人気WEB小説家ia(イア)初登場!!
どこにでもいる、ごく普通の女子高生だった。昨日までは──目を開けたら異世界だった主人公、知夏(ちか)。そこで知夏を助けてくれたのは、格好いいのに暴君的で、体罰上等な美青年、胡汀(こてい)だった。現代っ子でヘタレな知夏だけど、なぜか呪いの式陣(しきじん)も簡単に解いてしまって!?
「この阿呆鳥、それほどまでに調教されたいか」神様にだって立ち向かう、常識外れな少女の伝説開幕!!
WEBで750万PVの大人気作家ia、新ペンネームでビーンズ文庫初登場!!

 

 

美しくて残酷な海賊の物語は好きですか?『she & sea』


異世界に迷い込んだ女子中学生・笹良は海賊王ガルシアに拾われ、なぜか初対面から異常に気に入られてしまう。
「冥華」と呼ばれ彼に保護された笹良だったが、そこで彼女は海賊たちの陽気な残酷さを目の当たりにする―― という異世界海洋ファンタジー。

言葉の壁があるタイプの異世界トリップものです。
あっちの言葉は分かるけれど、こっちの言葉は通じません。
泣きながら叫んでも、必死に訴えても、通じないのです。

『花神』の紹介で散々「鞭だ鞭だ」と書いたけれど、鞭展開の残虐さで言えば『she & sea』の方が上かも?どうだろう。こちらは飴がそのまま鞭になるからな・・・・・・

物語が進むにつれて、ギラギラとした輝きを増していく残酷で美しい海賊たち。
彼らに怯えながらも、彼らに惹かれていく笹良。

私は彼らの物語を書籍版で読みたかったのだけど、4巻はどこに??
いい加減諦めるべきなのか。悲しい。WEBでも読めるけれど私は書籍版がほしかった!

あらすじ
水恐怖症女子・笹良は、スクリーンから溢れ出た波に飲まれ、気づくと幽霊船の上にいた。海賊が海を支配する世界に飛ばされた笹良は、絶対的な海賊王ガルシアの船に拾われ、船の守り神「冥華」と祭り上げられるが!?

 

 

終末世界で二人きりとなった主従を描く乙女戦記『F -エフ-』


主人公・三島響が連れてこられた異世界エヴリール。
そこは呪いによって人々が生きる屍(幽鬼)に変えられ、滅びに瀕している世界だった。
生き残っていたのは騎士・リュイのみ。
神の加護をうけた響は、幽鬼と化した人々を元に戻し、エヴリールを救うため、リュイを伴い運命に立ち向かうことになるが―― という異世界召喚ファンタジー。

終末的世界観と、ヒロインの役割、そしてヒロインに依存するヒーローが最高に楽しい作品です。
結構グロテスクな物語だし、薄暗さが似合う雰囲気だし、ヒーローは心がやられてヤンデレ気味。
これはね、倒錯的な主従関係が楽しめるんですよ。好きな人は大好きなやつですよ。

あらすじ
春休みに突如異世界に召喚された、三島響。“フォーチュン”と名乗る存在は、響を後継者候補に選んだと言い放ち、荒廃した世界エヴリールへとばす。神々の加護を受けた響は、そこで騎士・リュイを助ける。彼は、幽鬼が跋扈する世界で、ただ一人の生き残りだった。
「あなたを必ず守る。俺は変わらぬ忠誠を捧げよう」
運命に選ばれし、世界を救う二人―孤高の異世界トリップ・ファンタジー!
大人気WEBサイト公開作、書籍化!!

 

 

地上から天へ昇った少女が竜神の心を紐解く――『竜宮輝夜記』


空に浮かぶ「天の都」に住まう貴人と、危険が多い地上「山月府」で生きる身分の低い里人たち。
人が天地に分かれて生きる世界で、都を支える竜王の奴隷として天都に連行された里人の紗良。
地に生きる里人は天上では数年で死ぬと知りながら、彼女は親身に竜王たちの世話に勤めるのだが―― という和風ファンタジー。

人に対して複雑な感情を抱く四竜と、死を覚悟して竜の世話をする少女。
彼らの出会いや設定は重いけれど、コミカルで騒がしい日常が軽快に描かれていく作品です。

心にもない意地悪ばかり言う竜たちが可愛いんですよ。
デレ丸出しのツンデレ人外。振り回される薄幸少女。
彼らの関係はとてもほのぼのしていて、見ているだけでも心が和みます。

糸森環作品を紹介する際「鞭展開」とか「残酷」とか書きがちなのだけど、本作は比較的厳しさも緩め。
ただちょっと「死」が近いだけです。夢見心地で死を待つ少女のお話です。

あらすじ
あなたのために生きる──少女は竜王に全て捧げると決めた。
「おまえは神の皮をかぶった怪獣にはべる」──黒竜・由衣王にそう告げられ、世話係として人間の娘・紗良は召し上げられることに!?
神竜が人を護る世界で、運命の少女と竜王が織りなす和風ファンタジー恋絵巻!

 

 

奴隷少女と青年貴族の男女入れ替わり物語『六花爵と螺子の帝国』

糸森環作品の中でも、特にラブコメとして楽しく笑えた作品がこちら。

厳格な身分制度が敷かれた世界で、奴隷の少女アオと上級貴族の青年ジーンの身体が入れ替わってしまう。
問題だらけの入れ替わり生活(しかも頻繁に戻る)に戸惑いながらも、バカップルのような距離感で斜め上に暴走していく主人公二人の非日常が描かれる学園ファンタジーです。

背景には暗い事情が見えるものの、テンションの高いラブコメで可愛くコーティング。
読み応えも笑いも糖分もばっちりですよ!
バカップルな主役二人の掛け合いがめっちゃ楽しい作品です。

あらすじ
奴隷の少女アオは、精霊王の攻撃から青年貴族ジーンをかばい死亡した…はずだったのに、目覚めたらなぜか二人の身体は入れ替わっていた!?魔導学院でも“六花爵”と呼ばれる特権階級のジーンに、畏れ怯えるアオだったけれど―。「おまえの身体が気に入ったからくれないか」って、ジーン様、それは無理です!全寮制の学院に強制入学させられた少女と無自覚天然青年貴族の、逆転学院ラブ!

 

 

以上です。
まるで信者のように語ってきたけれど(自分では信者のつもり・・・信仰心はある・・・糸森環先生は神様だと思ってる・・・)、私は糸森環作品の全てを読んでいるわけではなくて。
特にサイトの小説には手が回っていません。お恥ずかしい。

勢いでこんな記事を書いたことだし、良い機会なので読もうと思います。
特に書籍版でずっと続きを待っていた『F』と『she&sea』を・・・・・・

本記事に付き合ってくれた皆さまも是非どうぞ。糸森環作品はいいぞ!

27時09分の地図(http://ash-map767.riric.jp/index.htm)

 

超高度かわいい諜報戦 〜とっても奥手な黒姫さん〜 /方波見咲

$
0
0


超高度かわいい諜報戦 ~とっても奥手な黒姫さん~ (MF文庫J)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年3月刊。
面白かった!
無駄に高度な諜報戦と心理戦を繰り広げるスパイたちによる三角関係ラブコメ。
優等生JKとぼっちDKと一匹狼少女。
それぞれの正体を隠したまま、それぞれが「なにが起こってるんだ・・・!?」と混乱する3人。
一人の少女の可愛い初恋が、やたら大きな騒動へと繋がっていき、予想外にスリリングなラブコメを楽しめる作品でした。
後半のシリアスな雰囲気は正直びっくりした。でもちゃんとラブコメでした。
ところで「とっても奥手な黒姫さん」の隣に「とっても頑張る部下の皆さん」って書いてあります?(幻)

☆あらすじ☆
“”一見普通””の高校生による緊張感MAXの「騙し愛」ラブコメがスタート!
「凡田君と、もっと仲良くなりたいの!」
高校生にして秘密諜報機関を指揮する天才少女、橘黒姫は初恋の真っ最中。
好きな人のために組織の力を濫用し、超高度な諜報技術で接触を図る。
「……誰かに監視されている?」
それに勘づいたのは初恋相手・凡田純一。
一見影の薄い平凡な男子生徒の彼は、実はある秘密を持っていて……?
「私が……凡田君と友達になるの!?」
そんな中、組織の命令で凡田と接触することになった暗殺少女・芹沢明希星。
友達の作り方なんて知らない彼女の行動は、とんでもない波乱を巻き起こす!
高校生の三角関係に裏社会の命運が揺るがされていく超本格学園スパイ・ラブコメ、開幕。

以下、ネタバレありの感想です。

 

冷戦の残滓として日本で暗躍する、主を失った諜報組織「御伽衆」。
そのトップである〈翁〉の正体は、生徒会役員も務める優等生な女子高生・橘黒姫
いま、彼女は密かな恋をしていた。
その相手は冴えないぼっちオタクの高校生・凡田純一
彼の全てを知るために「御伽衆」の力を濫用して超高度なストーキングを繰り広げる黒姫だったが、超奥手な彼女自身は好きな人に一歩も近づけないままなのだ――

 

という、有能ポンコツ美少女の脳内ハッピー(ただし部下は死ぬ)な恋模様から始まる本作。
部下は死ぬんですよ。いや、死んでないけど、彼らは死を覚悟しながら諜報任務に臨んでいるのです。

組織に対する詮索は、死あるのみ。

たとえこの任務の目的が「好きな人の写真を撮ってポスターにして飾るの!」というしょうもないワガママだとしても、詮索したら死ぬので、監視にあたる末端構成員は何も知らないのです。

 

なんという不条理!とってもブラックな御伽衆!

 

おかげで事態は更にカオスへと突き進んでいきます。

普通の高校生のふりをして日常に溶け込み、追手から逃げようとする元凄腕スパイの凡田。
凡田の徹底した潜伏スキルによる無成果に焦った諜報部隊は、組織から切り離された「スリーパー」の暗殺者・芹沢明希星を派遣。
これによって何かが激しく間違っているけれど、誰も間違いに気づけない三角関係が爆誕してしまうのです。

 

序盤は黒姫のポンコツ浮かれっぷりが可愛くて、中盤は突如構築された三角関係に笑い(あの女、誰!?ってなる黒姫さん面白すぎる。キミんとこの構成員だよ!)、その三角関係の中で激しく錯綜する心理戦と諜報戦が楽しくて楽しくて。

 

有能たちによるポンコツラブコメってすごく好きなんですよねー。
裏社会最高峰の頭脳をダダ下がりの知能で動かす黒姫も、
暗殺者なのにスパイの真似事をさせられて「私、割とイケてんじゃない??」となる明希星も、
「この女、諜報活動が下手くそすぎるのに動きがプロとは!?」と混乱する凡田も、三者三様に面白い。

 

外からみればコミカルな緊張感は、終盤にかけてシリアス方向に高まっていきます。
自分への失望感で暗い目をする黒姫という、心がヒュンッと冷え込むような展開もくるのだけど「いや、そもそもキミが原因なんだが??」というツッコミがずっと燻ってしまう、なんとも不思議な読み心地でした。
こんなの笑えばいいのか、ドキドキすればいいのか・・・!

 

この終盤は、ラブコメにしてはシリアスに寄り過ぎかな?とか、黒姫さん奥手すぎて明希星の方が凡田とマトモにラブコメヒロインしてるよな?とか、色々思うところがあったのだけど、最終的にちゃんと「黒姫さんと凡田くんのラブコメ」としてまとまったので満足しました。

 

だって途中までほとんど「明希星と凡田くんのラブコメ」だったじゃないですか。
凡田くんの外側を知り、正体を知り、本質を知る―― という段階の踏み方が完璧だったし、「何がが本当で何が嘘だったのか・・・」という衝撃の受け方とか、まさにヒロインの風格だったんですよ、明希星。
これは表紙とサブタイに反してメインヒロインが逆なのでは?と思わざるを得ない・・・・・・
黒姫さん、本当に凡田くんに近づかないから影がどんどん薄くなるんだよ・・・・・・奥手すぎ!

 

なので、そこらへんの引っかかりを黒姫が一気に覆したクライマックスはすごく良かったです。
どうして黒姫は凡田に恋をしたのか?という肝心要の部分を明かすタイミングがばっちり。
「かわいい」ものとして始まった黒姫さんの恋が、ちゃんと「かわいい」ものとして終わってくれたの、私はすごく嬉しかった。これぞラブコメ!

 

さて、あれだけの騒動を起こしながら、結局フェーズ2(知り合いになる)に移行しただけという、ノロマすぎる進行度合いに笑って読み終えた第1巻。
これはもしや全8巻を予定してます?
1巻ごとにフェーズを1つ進める感じ??
遅ッッッッ!

でもそれはそれで面白そうなんですよね。
特に「親友になる♡」のフワっと具合が可愛すぎたので、なんとしても見たいです。
続きも楽しみ!

 

次期風紀委員長の深見先輩は間違いなく病気 /稲井田そう

$
0
0


次期風紀委員長の深見先輩は間違いなく病気(角川書店単行本) 【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年3月刊。
面白かったー!

他者の心が聞こえる少女と、彼女への愛情を暴走させる先輩。
元気に狂った先輩の心の声にドン引きしつつも、風紀委員として共に過ごす中で、彼の人間性を知っていく主人公。
異端の能力ゆえに絶望の淵にいた少女は、自分に異常な執着をみせる先輩の姿に何を思うのか。

内向的で心が死んでるヒロインと、変態的で心が元気すぎるヒーローのすれ違いがとても楽しいラブコメでした。
結構シリアスな話なんだけど、先輩の元気な声で闇が吹き飛ばされていくかのよう。こういう救済物語は大好きです。
先輩、変態は変態でも、健全に真面目な変態なんだよなぁ。
この変態は良い変態(良い変態とは)

☆あらすじ☆
ある秘密を抱え、家族と離れて暮らす高校1年生・石崎鏡花は、特待生に選ばれるために入った風紀委員会で、眉目秀麗にして校内一の優等生・深見先輩に衝撃を受ける。なぜなら、鏡花の秘密とは「他人の心の声が聞こえること」。そして深見の心の中では、初対面のはずの鏡花への、異常な愛の叫びが渦巻いていたのだ。全力で接触を回避し続けようとする鏡花と、冷静沈着を装いながら、内心でとんでもない妄想を繰り広げる深見。2人のすれ違いの行方は……。
心の声が聞こえる少女と本音が言えない優等生の恋の行方は——。
出会いに笑い、ラストは号泣!
「小説家になろう」発、異能ラブコメ×青春小説!

以下、ネタバレありの感想です。

 

他人の心の声が聞こえる高校生・石崎鏡花
生まれつきの異能のせいで、家族関係も友人関係も壊してしまった鏡花に、生きる希望は何もなかった。
生活費を稼ぐためにバイトを詰め込み、特待生を維持するために勉強も課外活動も頑張らねばならない。
そのため時間の融通がききそうな風紀委員会を選んだ鏡花だが、その最初の集まりで、彼女は自分の失敗を悟るのです。

 

間違いない天使だ。絶対に俺の天使だ。天使が俺のもとに舞い降りた!俺に会いに来てくれたんだ!俺の!ために!自ら!会いに来てくれたんだ!)
(天使の声だ・・・・・・鼓膜から俺の醜い内側が浄化されていく。い、し、ざ、き、きょ、う、か。たとえ俺が明日全ての言語を忘れてもこの名前だけは覚え続けている。)
(愛してる・・・・・・愛してる・・・・・・永遠に君を幸せにするからな・・・・・・!)

 

変態がおる!

 

初対面のはずなのに、なぜかテンションMAX・執着心全開で鏡花に重い愛情を示す風紀委員の仕切り役・深見透悟
その心の狂乱は括弧に閉じられ、決して外には出さず、表面上はクールな優等生。
なんだけど、肝心の鏡花本人に全てが筒抜けもちろん読者にも丸見え。
常に興奮してハァハァと幸せを噛み締める変態の高ぶりが、凄まじい勢いで紙面を埋めていくのです。
文字で読んでこれだけうるさいなら、耳で聞いたらさぞ頭痛がすることでしょう。だいぶ同情した。

ただでさえ鏡花の能力はオンオフができず、他人の心の声に聴覚が占領されているんです。
葉のさざめきも小鳥の鳴き声も聞こえないほど、他人の心の声しか聞こえない鏡花。
そこで更に騒音がプラスされたら、そりゃあイライラが募ることでしょうよ。

 

実際、前半の鏡花はひどく余裕がない様子で、深見先輩の病的な愛に心をすり減らしていたようでした。
その心の声を外に出してくれたら通報できるのに、とかね。
酷いこと言うなぁと一瞬だけ思ったけど、よく考えなくても酷いセクハラを受けてるのは彼女の方でした。
先輩が実際には何も言わず行動も起こしていないとしても、体臭を感知されたり目視で体重を看破されるのはキモい!怖い上に嫌すぎて笑う・・・!

 

とはいえ、深見先輩は本当に思うだけ。
何もしないし、勢い余ってそんなことを考える自分を恥じている。

そこに鏡花が気づいてからは、「変態の狂気に怯える少女の物語」「変態の狂気に呆れる少女の物語」へとシフトし、物語は柔らかなラブコメの雰囲気を増していくのです。

 

これ、面白いのは、深見先輩は何も変わってないんですよね。
この物語を通して、深見先輩は最初から最後までブレずに病的な愛を叫び、ひたすら鏡花を案じているだけなんです。

だから、鏡花の態度が軟化し物語の雰囲気が変わっていく原因は、ひとえに鏡花の内面にあるのだと思う。
頭のおかしい深見先輩や優しい風紀委員たちと過ごす時間のなかで、少しずつ広がっていくのは鏡花の視界。
周囲に人がいることの楽しさに戸惑う姿は、なんとも切なくなるのだけど、その戸惑いこそが彼女の変化に思えてホッとするんです。

 

とはいえ、鏡花が変わるのは簡単なことではなくて。
異能ゆえに他者を拒絶し、自分の孤独死を想像しながら絶望感を持て余す鏡花。
その心の傷はあまりにも深いものでした。

 

深見先輩が鏡花に執着する理由を知ってからは、一度は浮上したかに思えた雰囲気が一気にどん底へ。
あの終盤の閉塞感はとても苦しかった。
自分は幸せになってはいけない人間だ、好意を向けられるべきではないという、鏡花の強い自罰的感情が辛い。
彼女が追い詰められる理由が決して理解できないものではないから、余計に心がしんどくなる。
でも幸せになってくれよう、深見先輩を幸せにして、深見先輩に幸せにしてもらえよう・・・!とめちゃめちゃ強く思いました。

 

そこからのクライマックス!

 

変態だけど、頼りになる。
心は自由だけど、自制心はある。
そして何より、鏡花が好きで好きで、ただ彼女の幸せだけを願っている。
そんな深見先輩の本領発揮だったと思います。
理性的な表の顔と、情熱的な心の奥。その両面全てで鏡花を想い、彼女の心の傷を包み込む―― あの告白シーンには深見先輩らしさが詰まっていました。このブレなさが最高なんだよ〜〜
物語を覆う憂鬱な空気を、変態的な愛情深さで見事に吹き飛ばしてくれました。超すっきり!

 

うんうん、本当に良い青春ラブコメでした。
この変態は良い変態で、良いヤンデレ(デレ方が病気の人)だ。

 

ところで、一昔前とは違って最近の電子書籍はカバー下もちゃんと収録されるようになりましたね。
本作でも、美しい桜を描いた表紙の裏にあるものがばっちり収録されていました。
めっちゃばっちり深見先輩でした。「良かったな、桜。」に死んだ。
深見先輩は間違いなく病気!

 

小鳥遊さんはラブコメを勉強中! /高橋徹

$
0
0


小鳥遊さんはラブコメ勉強中! (LINE文庫エッジ)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年1月刊。
おおお・・・・・・・・・あ、甘かった・・・・・・!
すごいですねこれ。甘々の激甘のベタ甘でした。
社会人同士の話ではあるんだけど、初心者×初心者が生真面目に恋愛のステップアップに励むやつなので、なんだろう、この遅れてきた青春の甘酸っぱさは。
実は高校1年生の話だよ、とか言ったら騙される人も割といそう。
一緒に恋愛のお勉強をしよう!という体で繰り広げられるバカップルのイチャイチャの破壊力たるや。
癒やしと甘さだけがほしい!他には何もいらない!という方は是非どうぞ。望みのものがここにはある!

☆あらすじ☆
小鳥遊璃子。知的な雰囲気の漂う同僚で、テキパキと仕事をこなしてみんなに頼られている。
そんな小鳥遊さんとレンタルビデオ店ののれんの奥でばったり!普段はクールな彼女だが、どういうわけか人妻ものを見てハァハァしていて……。何故か流れで擬似恋人に!?
小動物っぽい敬語ヒロインに癒されっぱなし!
ウブで知りたがりのヒロインと、いっしょにラブコメを学びませんか?

以下、ネタバレありの感想です。

 

レンタルビデオ店の18禁コーナーで、職場の同僚・小鳥遊璃子と遭遇した主人公・鞘野直晴
璃子の話によると、見た目と性格と環境のせいで現実の恋愛や性の話から遠ざけられた結果、興味だけが過剰に膨らんでしまった状態(やや暴走気味)にあるという。
もともと璃子のことを可愛いと思っていた直晴(恋愛経験なし)は、勇気をだして「互いに恋愛について学ぶために、お試しで付き合ってみないか」と誘ってみるが―― というのが序盤の流れ。

 

契約恋人もの×初心者カップルのイチャラブもの!
大好物なやつですね!!

 

うぶだけど耳年増な璃子と、いつも「いい人だけど・・・」と言われがちな直晴。
これは、互いに初心者なふたりが、ものすごーーーーーく真面目に恋愛ごとのステップアップを目指すお話なんです。

今日は互いの名前を呼び合いましょう。今日はデートをしてみましょう。今日は手を繋いでみましょう・・・・・・

そんな感じで、具体的な目標を立てて、実践し、反省点を共有していく璃子と直晴。
真面目ですよ?本人たちは超真面目です。だからこそめちゃめちゃ可愛い。

 

璃子さんの暴走ポンコツっぷりも可愛かったし(璃子さん、なんか常に目がグルグルしてた気がする!)、直晴さんがポロポロと本音を垂れ流してたのも可愛かった。
「ごめん、油断するとすぐ可愛いって言っちゃう・・・」には笑いました。正直者か!
うーむ、この二人かわいすぎかな?これは推せる。

 

あくまで「恋人(仮)」なので、微妙に超えがたい一線があるのも良い塩梅。
イチャイチャの空気が高まって暴走しかけても、ギリギリの理性が待ったをかけるんです。主に璃子さんが踏ん張ってた。
あの寸止め連発は笑ったし、ちゃんと我慢した直晴さんは本当に「いい人」だと思いました(笑)

 

クライマックスでは最大の寸止めがくるわけだけど、もはやボーナスタイムというか、関係をリセットしたことでよりイチャイチャしてたというか。
璃子さん、あんなに懐いてベタベタしてたくせに「まだ分からない」とかほざくポンコツっぷりに笑ったけど、速攻で自業自得の地獄におちてて本当に可愛かったです。お幸せに!

 

ところで、なんだかイチャイチャ描写がやたら艶かしくない?とか思っていたんだけど、もともと官能ラノベの作家さんだったんですね。なるほど?だから尾てい骨??
いや、尾てい骨ぐりぐりしてたけど、お尻触るよりもなんかフェチいなと思って。尾てい骨。

 

完璧にストレス要素を排除し、徹底的に癒やしと甘さに特化したラブコメだったと思います。
この手の作品は読み応えが薄いと感じることも多いんだけど、本作は二人の関係だけに話を集中して、設定もキャラもシンプルにした上でイチャラブに振り切っていたのが良かったのかも。

とても満足しました。楽しかったです!

 

 

男女問わず!初心者にオススメの少女ラノベ6選+30【2020年版】

$
0
0

少女小説(女性向けライトノベル)に馴染みがない方向けに、今この時点でオススメしたい少女小説をリストアップしました。
(紹介作品のタイトルだけ確認したい方はこちらから)

男女問わず楽しめそうな作品を選んだつもりですが、今回特にオススメしたいのは最初の6作品です。
残る30作はテーマ別に好きな作品を詰め込んでみました。
「小説家になろう」等から書籍化した作品は、WEB版のURLも載せています。

それでは、各作品を紹介していきますね!

 

今すぐ推したい直近の少女小説6選

「最近の少女小説」ならコレがおすすめ、という6作品を紹介します。

最近の少女小説選びに迷ったら、まずは『茉莉花官吏伝』がオススメ。

ちょっと物覚えがいい少女・茉莉花が、皇帝・珀陽との出会いによって自分の才能を開花させる立身出世物語。
「手柄とってきてね〜」と平気で無茶振りする皇帝の期待に、次々と応えていく女官吏の奮闘を描いていきます。
恐らく内政ものに含まれますが、出張して隣国の内乱に関わったり、遠国でスパイ活動をしたり、茉莉花の仕事は多岐に渡ります。
とても有能なんですよ。このヒロインは可愛くておとなしい化け物です。

 

2020年春アニメの原作小説『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった・・・』
現在の少女小説ジャンルの中で、いま最も旬なタイトルです。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生し、このままでは破滅の未来が待っている主人公カタリナ。
なんとか破滅を回避しようとするカタリナが、彼女を取り巻く友人たちと共に、様々な試練を乗り越えていきます。
恋愛要素が比較的薄めで、天然たらしでポンコツな主人公の活躍を描いたコメディ主体の作風です。

小説家になろう版:https://ncode.syosetu.com/n5040ce/
※書籍版はほぼ書き下ろしです。

 

悪役令嬢もの初心者に強くお薦めしたい作品が『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』

悪役令嬢に転生した主人公アイリーンが、死の未来を回避するため、鍵を握るラスボス魔王を懐柔しようと襲撃するラブコメディです。
押しかけ女房のキレキレなアプローチと、徐々に絆されていくクールで素直な魔王様の攻防が楽しい。
「飼ってあげる」VS「泣かせたい」という、ふたりの主導権争奪戦に注目です。

(男女カプだけど)百合要素も推せという天啓を受信しました。
敵対するゲームヒロインの、悪役令嬢アイリーンに対する巨大感情も見どころです。

小説家になろう版:https://ncode.syosetu.com/n2766dz/

※悪ラスは読んだよ!という方は、最新作『やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中』も作者買いしましょう。めちゃくちゃ面白いです(なろう版あり

 

『どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です』は、私の観測範囲で男性読者受けが抜群に良く、「女性向け恋愛もの」に苦手意識がある方にも読んでほしい作品です。

片思いの相手に惚れ薬を所望される事態に嘆きながら、仕事を口実に彼と会えることを喜ぶ魔女。
一人でジタバタと懊悩する魔女の恋を、とびきり可愛く描いたラブコメディです。

こんな苦しい想いなんて捨ててしまいたいと頭を抱えても、顔を合わせる度にもっと惚れ込んでしまう。
そんな「恋する乙女」の愚かしさと可愛らしさ。
その全てを存分に堪能できる傑作です。

小説家になろう版: https://ncode.syosetu.com/n9512fk/

 

『金星特急』は、鉄道好き、ロードムービー好きにおすすめの作品。

謎の美女「金星」の花婿募集にこたえた、世界各地の男たち。
主人公・錆丸も金星に会うために、花婿候補を乗せて走る特別列車「金星特急」に乗り込みます。
様々な思惑を持つ人々を乗せ、金星が与える命がけの試練を乗り越えながら、「金星特急」は世界各地を巡ります。

物語のスケールは壮大。冒険活劇は痛快。恋愛面ではサブカプにハマる人が続出(?)。そんな作品です。

本編完結済みですが、実は2020年5月から続編の連載が始まります。今こそ読みたい作品ですよ!

 

『わたしの幸せな結婚』はレーベル的に少女小説じゃないでしょ、というツッコミが聞こえる。
富士見L文庫は「大人向け少女小説」と言われているようだし、内容的に少女小説の入り口として最適なのでビクビクしながら推薦します。

虐待による絶望を抱えた少女が、冷酷と噂される青年と出会い、温かい環境のなかで少しずつ立ち直っていく。
その姿を、丁寧な心情描写で綴る王道シンデレラ・ストーリーです。
主人公をはじめとするキャラの心の動きがとても繊細で、物語にどっぷり浸ることができるかと。

帝都×軍服×異能という和風ファンタジー要素も楽しい作品です。

※なろう版は削除されました。近日、カクヨム版が公開されるそうです。

 

朝ドラ・大河的な面白さ:少女の一代記

まずは完結済みの『シュガーアップル・フェアリーテイル』シリーズ。聞くところによると男性読者にも評判が良いらしい。
砂糖菓子職人の少女が「銀砂糖師」になるため、護衛の妖精と共に旅をする物語。
人間が妖精を使役する世界で、一人の少女の成長、挫折、衝突、恋愛、友情を丁寧に描いていく少女小説の名作です。

異能要素がある裏社会サスペンス『デ・コスタ家の優雅な獣』。マフィアものです。
天涯孤独で内気な少女は、裏社会で成り上がり、やがて「デ・コスタの女」として花開いていきます。
緊張感に満ちた生活の中で、運命に怯える繊細な乙女心と、したたかに笑う女マフィアの顔。
彼女の危険な二面性に、ぜひ注目してほしい。

『身代わり伯爵』シリーズは、双子の兄の身代わりとして男装し、王宮に出仕することになったパン屋の娘の冒険を描く王道ファンタジー。
少女の恋と成長、陰謀と冒険などなど、「少女小説」というジャンルに通じる多くの魅力を持つ名作だと思います。

 

壮大で波乱万丈の運命を:ヒストリカル・ロマン

まさに「少女小説」というべき王道のヒストリカルロマン『廃墟の片隅で春の詩を歌え』
革命によって幽閉された王女が、王権復古と共に権謀術数渦巻く王宮に連れ戻される。
望まぬ政略結婚や姉たちの確執に苦しみながら、愚鈍だった少女は自分の進むべき道を見定めるのです。

花街の化粧師ダイは、その腕を見込まれ、女王戦にのぞむ少女マリアージュに仕えることになる。
運命的に出会った二人の主従と、彼女たちを結んだ一人の男。
彼らを中心に、貴族間・国家間の権謀術数や政治闘争を描いていく歴史ロマン。
『女王の化粧師』は設定・構成が緻密な作品で、さりげなく置かれた伏線の数々に後から何度も驚くこと間違いなしです。

著者公式サイト:http://atrium.flop.jp/brc/text/queen/queen_top.html
小説家になろう版:https://ncode.syosetu.com/n2230dk/

虚弱体質の青年文官が辺境に左遷され、太守としてやってきた皇女の副官に選ばれたことで始まるファンタジー『翼の帰る処』
主従が巻き込まれる過酷な政争と、幻想的で謎めいた神話の秘密に迫る物語です。
有能すぎて常に過労死直前の主人公ヤエトが生きてゴールにたどり着けるのか、誰もがハラハラしながら見届けることでしょう。

 

少女小説で読むミステリー

なぜか怪奇現象が多発するアンティーク椅子工房。
そのオーナー・ヴィクトールに霊感を見込まれて雇われたバイトの女子高生・杏は、椅子にまつわる幽霊騒動に巻き込まれていく。
霊感体質だけど除霊はできないので、怯えて半泣きになりながら椅子の謎を解き明かし、幽霊の未練を解いていくオカルト・ミステリーです。
人類嫌いの変人ヴィクトールの愛情たっぷりな椅子講座も楽しいですよ。

『マリエル・クララックの婚約』シリーズは、コバルト文庫で育った少女小説読者にもお薦めしたい作品。
ヒマな貴族のメガネ娘が様々なトラブルに首を突っ込んでは、婚約者の美形メガネに怒られたり、一緒に冒険したり謎を解いたりするミステリーです。
メガネへのこだわりが強いメガネカップルはいいぞ。
神出鬼没の怪盗と戦ったりするので、探偵VS怪盗の構図が好きな人にも楽しいかも。

小説家になろう版 https://ncode.syosetu.com/n4807cv/
※書籍版はほぼ書き下ろしです。

『英国マザーグース物語』の舞台は19世紀ロンドン。
身分と性別を隠して新聞記者として働く貴族令嬢が、ビジネスパートナーの青年と共に様々な事件に遭遇していく物語です。
この作品の最大に面白いポイントは、絶対に何も知らない状態で読み、各自で発見してほしい。
1巻以外のあらすじも読まないでください。本当に何も見てはいけない。
男女バディの推理小説に興味があるなら、全ての情報を遮断し、とりあえず4巻まで読みましょう!

帝位簒奪に現場に居合わせたことから、「ちょうどいい」と皇后にされた少女莉杏。
幼くも聡明な少女は、宮中に起こる謎を解き明かすなかで「皇后」としての器を示していきます。
中華後宮ミステリーとして楽しめる作品で、探偵役の莉杏がとにかく魅力的なんです。
ちなみに本作は冒頭にあげた『茉莉花官吏伝』の姉妹作です。

 

笑えて楽しいラブコメディ!

トンチキ少女小説を推したい!少女小説界の奇書ならこれ!
猫耳カチューシャ男を拾って少女戦士ドリームピンクになった女子高生が、純情僧侶な悪の魔王と出会ってしまう現代FT『巡る世界の黙示録 少女戦隊ドリーム5』
完全物理で戦う、人数が足りてない戦隊ヒロインものです。

ラブコメで迷ったら『(仮)花嫁のやんごとなき事情』が良いですよ。
腹黒な策略皇子とバイトの身代わり花嫁が「離婚」をかけて勝負を繰り広げるラブコメファンタジー。
鬼畜と庶民が離婚ゲームで遊んでいるうちに、えげつなくて切ないドラマも繰り広げられていきます。
でも基本的にひたすら笑える楽しい作品です。夕鷺かのう先生のギャグセンス大好き。

片思いの同級生を追いかけて、普通の女子高生が異世界へトリップする『スキルが強すぎてヒロインになれません』。
汎用性が強すぎるスキルのせいで、少し憧れていた「か弱いヒロイン」はできそうにない。
「むしろ私が彼を守るんだ!」と意気込む主人公アリアの冒険を描いたラブコメです。
能天気で恋愛脳全開なアリアの語り口が楽しい作品。
ひどい時は3行に1回笑います。これを外で読んではいけない。

小説家になろう版:https://ncode.syosetu.com/n6912eh/

「氷の貴公子」がやけくそで投げた指輪に当たったのは刺繍オタクな貴族令嬢。
行き当たりばったりで偽装婚約をすることになった二人の恋を描いたラブコメ『指輪の選んだ婚約者』
コミュ障な婚約者をフォローしようと頑張るヒロインが健気で、ほのぼのしたカップルが可愛くて癒やされます。
キャラ同士の掛け合いが軽快だし、ノリノリで糖度を上げていく楽しい作品です。

小説家になろう版:https://ncode.syosetu.com/n1253cj/
※書籍版はほぼ書き下ろしです。

 

定番ジャンル:和風・中華・英国ファンタジー

※少女小説の定番ですが、最近ではライト文芸に移行しつつあるジャンル。

残酷な怪の世界を舞台に、再婚をかけた元夫婦の攻防を描いた物語『お狐様の異類婚姻譚』
世界観の密度がすごいし、童謡をベースに進むストーリーは隅々まで独特のセンスに満ちています。
「嫁にこい」「嫌です」という何てことない掛け合いが、ひとつ秘密が明かされる度に、ぐるりと意味を変えていく。その衝撃を味わってほしい。

created by Rinker
小学館
著 深山くのえ イラスト 藤間麗

しがらみが多い貴族社会で、政敵同士の家に生まれた二人の男女を描く平安時代版ロミオとジュリエット『桜嵐恋絵巻』
貴族社会の慣習にとらわれない奔放な青年と、呪い持ちの「鬼姫」と忌み嫌われた姫君の恋を、奥ゆかしくも情緒豊かに描いた名作です。

星から運命を読む姫君と、凶相を忌み嫌われる皇子のの出会いと再会を描く平安ファンタジー『平安とりかえ物語』
男装がバレないかドキドキしているヒロインを見て、様々な感情を押し殺そうとする一途な皇子。
お互いに現状維持を望む二人のすれ違いが楽しい作品です。
陰陽師ではなく宿曜師の物語、というのも特色。

created by Rinker
ミズサワヒロ(著) 高星麻子(イラスト)

西遊記をラブコメでアレンジした感じの中華ファンタジー。
俗物仙女と俺様妖魔が「千二百の善行」を積むために下界に放り込まれる―― というお話。
封神演義とか中国神話の世界観が好きな人にもお薦め。
出世欲が強くてツンツンしていた仙女が、だんだんデレつつ、でも精一杯ツンツンします。

人々と妖精をつなぐ妖精博士の少女が、胡散臭い口説き魔の自称伯爵に目をつけられ、彼と共に様々なトラブルに遭遇する英国ファンタジー『伯爵と妖精』
全32巻なので気軽に薦められないんだけど、私の永遠の最推しなんです。

 

独特の読み味を楽しめる:男性主人公の少女小説

created by Rinker
SBクリエイティブ
著者 古森きり イラストレーター ゆき哉

人気ジャンルの悪役令嬢転生ものですが、本作の主人公は悪役令嬢の「旦那様」。
悪役令嬢を助けたことで彼女を押し付けられ、ふたり仲良く国外追放された青年貴族。
実は片思い中だった彼の語りの8割は、ヒロインへの恋心で埋まっています。
好きな子に尽くして尽くして尽くす男の、チート級な尽くしっぷりが痛快な作品です。

小説家になろう版:https://ncode.syosetu.com/n8287fp/

女装王子×男装騎士で、幼なじみ主従+両片思い。これでピンときたら読みましょう。
見た目可憐で頼もしい少年王子と、見た目も中身もイケメンで時折少女の顔をみせる女騎士。
信頼し合う主従が、王子に課せられた試練を乗り越えるため外交に挑む物語です。

カクヨム版(「可憐な王子の受難な日々」):https://kakuyomu.jp/works/1177354054882221156

主従の恋を甘く描いたラブロマンス。
密かに想いを寄せる女主人のため、身も心も尽くす覚悟で傍にいる元騎士の執事。
しかし超鈍感・クソ真面目・朴念仁の彼は、主人の真意に全く気づきません。
一人で「報われぬ恋」を持て余す男をよそに、どんどん外堀が埋められていくお話です。

小説家になろう版:https://ncode.syosetu.com/n0157bl/

 

この少女主人公が強い!

年齢性別出自を偽る腹黒少女の毒気が愉快な、剣と魔法の王道ファンタジー『詐騎士』。
とにかく口も頭も良く回り、周囲から恐怖と畏怖と崇拝の念を向けられる主人公ルゼの活躍が痛快です。
クセ者な少女キャラがお好きな方に。

アルファポリス:https://www.alphapolis.co.jp/novel/785010499/160247348

「王」になる運命をもつ王女が、専属騎士たる「12人の円卓の騎士(ナイツオブラウンド)」を集めるために奔走する物語『おこぼれ姫と円卓の騎士』
内政ものです。
初代騎士王の生まれ変わりにして、神の力を分けた12本の「約束の剣」を持つ最強女王の活躍を描きます。
結構少年向けラノベとの親和性が高いかも?

最恐のヤンデレ嫁の活躍を描いた、墓守貴族の幽霊ファンタジー『幽霊伯爵の花嫁』
美しく賢く自信家で強かでヤンデレで恐ろしく、けれどキュートで格好いい女主人公の物語です。
トラブルに首を突っ込んでは、微笑みながら優雅に我が道を突き進みます。

傍若無人な女執事が、家族関係が壊れた伯爵家を振り回していく物語『悪辣執事のなげやり人生』
この主人公は、有能だけど主家への忠誠心はなく、要領がよくて図太くて色っぽい。
人生なげやりの女執事と人生やけくその伯爵のラブコメも楽しめます。

 

エモーショナルな「恋」を描く

新米バイオリニストと天才指揮者の、恋と音楽を描いた物語『ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンツェルト』
「感覚型で危なっかしい天才少女と、意地悪だけど過保護なヒーロー」という関係性にピンときたらどうぞ。
ケンカップル好きにもお薦めです。
主役二人の「恋と音楽」への情熱を躍動的に描いた作品で、渾身の演奏に一途な恋心が重なっていくシーンは必見。

好きな人が、好きな人と一緒にいられるように。
そう願い、自分の想いを殺して契約結婚を選んだ主人公。
彼女の切ない片思いを描いたラブロマンス『傍観者の恋』
幸福と罪悪感、友情と恋心の間で揺れ動く少女の心が、情緒豊かに描かれていく傑作です。

小説家になろう版:https://ncode.syosetu.com/n2976ck/

恋人だった男に裏切られて殺され、生まれ変わった新しい姿で彼の前に現れた主人公。
『狼領主のお嬢様』は、「殺した男」と「殺された女」が、悲恋で終わった過去を清算するお話です。
因縁に縛られた純愛の物語で、かなり感情を揺さぶってきます。

小説家になろう版:https://ncode.syosetu.com/n9511dh/

憶測ですが、この手のタイトルに漠然とした苦手意識を感じる方もいるのではないでしょうか。
もしそうなら、騙されたと思って読んでみてほしい。

殺し合う運命を定められ、500年間戦い続けてきた魔王と勇者。
その戦いが突然終わり、なぜかラブコメに突入する元宿敵の男女を描いたお話です。
クール美女の魔王(最強の箱入り娘)が可愛い&格好よくて、殺すべき女を愛した勇者の業の深さも良いんですよ・・・!

小説家になろう版(『元魔王は新たな人生を生きる』):https://ncode.syosetu.com/n1389en/

 

以上です。
少女小説開拓のお役に立てれば幸いです。

 

【今回紹介した作品一覧】

・茉莉花官吏伝
・破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった・・・
・悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました
・どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です
・金星特急
・わたしの幸せな結婚
・シュガーアップル・フェアリーテイル
・デ・コスタ家の優雅な獣
・身代わり伯爵の冒険
・廃墟の片隅で春の詩を歌え
・女王の化粧師
・翼の帰る処
・椅子職人ヴィクトール&杏の怪奇録
・マリエル・クララックの婚約
・英国マザーグース物語
・十三歳の誕生日、皇后になりました。
・巡る世界の黙示録 少女戦隊ドリーム5
・(仮)花嫁のやんごとなき事情
・スキルが強すぎてヒロインになれません
・指輪の選んだ婚約者
・お狐様の異類婚姻譚
・桜嵐恋絵巻
・平安とりかえ物語
・天外遊戯
・伯爵と妖精
・追放悪役令嬢の旦那様
・ウチの王子が可憐すぎる!
・金の女領主と銀の騎士
・詐騎士
・幽霊伯爵の花嫁
・悪辣執事のなげやり人生
・ドイツェン宮廷楽団譜
・狼領主のお嬢様
・女魔王は花嫁修業に励みたい

トップに戻る

 


帝都つくもがたり /佐々木匙

$
0
0


帝都つくもがたり (角川文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年5月刊。
WEB小説『夜猫ジュブナイル』が最高に面白かったので(感想記事)、作家買いして読んでみました。
怖がりでアル中の作家と、その悪友で怪談を集める記者が、震災後の帝都で様々な怪奇現象に遭遇する物語。
ホラーな設定・展開ではあるのだけど、恐怖を感じると同時に切なくなるようなお話が多い印象でした。こういうの好き。
悪友二人の関係もとても良かったです。特に人でなしの関くんが好き。関くんはね、ずるい男なんですよ・・・!(後半以降の好感度の上げ方がえげつない)

☆あらすじ☆
第4回角川文庫キャラクター小説大賞〈読者賞〉受賞作!凸凹コンビの怪異譚
舞台は昭和初期の帝都・東京。酒浸りで怖がりの文士・大久保と、腐れ縁の記者・関が、怪談を集めるべく東奔西走。百物語にはどこか足りない、日常の中に潜む怪異巡りの日々が始まる――凸凹コンビの怪異譚!

以下、ネタバレありの感想です。

 

元来虚弱で気鬱を患い、酒に溺れ、たいして売れてる訳でもない三文文士・大久保純
そんな彼のもとに腐れ縁の記者・関信二が訪れ「紙面に載せる怪談を集めているから取材を手伝ってほしい」と頼んできた。
そうして、帝都を舞台にした様々な怪異事件に巻き込まれる大久保と関の騒がしい日々が始まるのです。

 

まずキャラクターが良いと思う。
主人公・大久保の、暗くて、ジメジメしてて、いつも憂鬱で、人情味があるというより共感性が高すぎて、「お前〜〜〜〜しっかりしろぉぉ〜〜〜〜〜」と揺さぶりたくなるヘタレた人間性がとても可愛かったです。お近づきになりたくないけど!

ただでさえ面倒な性格をお持ちなのに、恐ろしい世界から逃げるように酒を飲むんですよ、このひと。

僕は、もう本当に帰って寝ていたかったのだが、どうにか震える手で懐からジンの小瓶を取り出し呷った。酒の香りと酩酊感が、どうにか僕のなけなしの勇気を守ってくれた。
「わかったよ。行けばいいんだろう!」

持ち歩き用の酒を・・・懐に忍ばせて・・・!笑

僕は赤痢にもコレラにもならず、無事に二日程が過ぎた。念入りに中身をアルコール消毒したのが功を奏したと考えている。

これはとても恐ろしいことだけど、大久保くん、真面目にそう思ってそうなんですよね。

その辺りから、僕の記憶はどうにも曖昧だ。気がつけばいつの間にか家に帰っていて、布団にくるまって寝ていた。頭がガンガンと響くように痛いので、飲み過ぎたのだろう。僕はこれで前後不覚になる事などそうそうない体質だから相当だ。ひとまず、迎え酒でもして宿酔いを抑えようと枕元に手を伸ばした。
手は空を切る。寝酒用の酒瓶がない。

笑うところか・・・!?笑うところだろうか!?!?

 

大久保くん、あまりにも自然に酒を飲むからドン引きです。
でも丁寧で落ち着いていて理性的な文体に、スイッと自然に飲酒描写が挟まれるの巧すぎて笑う。

 

大久保の感受性はとても高く、怪異たちのドラマを繊細に切なく見守ってくれるのだけど、同時に真正面から受け止めることに怯えて酒に逃げるんですよね。これを「臆病者め!」と責めたら更に落ち込んで酒を飲みそう。
心が弱くて内にこもりがちで、全てに怯えながら酒瓶を抱えて布団で丸くなっている。そういう主人公なんです。ダメすぎてかわいい。おつまみあげたい。

 

さて、そんな引きこもり男の尻を叩いて連れ回すのが悪友の関。

関くん、途中まではマスコミ根性丸出しで怪異を追いかける姿に引いてたのだけど(引いてばかりだな)、彼の本領発揮は後半からでした。
ていうか第陸話の『炎のあわい』が良すぎた。
「人の気持ちがわからない」と揶揄された関くんの人間性が、ここでようやく分かるんですよ。ずるいよ、こんなどんでん返し。好きになっちゃうじゃん・・・!

儚くて美しく、そして深い哀しみを感じる刹那の抱擁。

その瞬間でさえ涙を見せなかった男の姿に、胸が締め付けられるように痛い。つらい。
大久保と幽霊の恋も切なかったけれど、これは生前のドラマも垣間見せての結末ですから。
奇跡は起きても時は戻らない。すでに失われた者には、もう手が届かないのです。つらすぎる。

 

関くん、これはずるいよー・・・・・・と思ってたら更に追い打ちをかけるのが第捌話『鏡のむこう』。

なぜ関は大久保のもとに現れたのか。なぜ文を書かせるわけでもないのに取材に同行させたのか。

「どうして俺はいつも見送る側だ。」

あああ、、、、あんなに飄々と過去を語っていた男が、耐えきれなくなったように出した言葉がこれかよ。やっぱり抱えてたんじゃないか。関くん・・・!

 

色々と裏事情がわかると、序盤で関のことを大久保が心中でボロクソに貶していたこと自体が、彼が友に守られていた証明なのだと理解できてしまいます。
そうやって外のことを考えさせて、内に目を向けすぎないように気を配ってくれていたんだ。
悪友じゃないわ、これ親友だわ。。。大久保くん、一生お金借りとこ。。。

 

しまった、主役の男2人のことを語ってたら満足してしまいました。
怪異譚自体も面白かったんですよ!
目玉とられる古書店の話が怖くて好きです。
本を読む上で目玉って大切なのに、それと引き換えに本をもらうという本末転倒感。
それに気づかぬ欲に溺れた人間と欲につけこむ怪異のおぞましさ。
まさに怪異譚のお手本のようなお話でした。楽しかった!

帝都コトガミ浪漫譚 勤労乙女と押しかけ従者 /道草家守

$
0
0


帝都コトガミ浪漫譚 勤労乙女と押しかけ従者 (ことのは文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年3月刊行。
帝都×異能×主従の和風ファンタジー。
面白かったです。和モノが好き!という著者の愛が詰まっていたと思う。

本に封じられた神魔「言神」を使役する者たちが活躍する帝都。
その帝都で働く主人公は、あるトラブルから言神の青年に懐かれ、彼と共に言神絡みのトラブルに巻き込まれていきます。
物語嫌いで芯が強くて優しいヒロインと、頬を赤らめつつ押しが強い自称従者。
凸凹なふたりの掛け合いがとても楽しかったです。
このイケメン、かなり面倒くさ可愛い。すぐ照れるし、いじけるんですよ。可愛い。

舞台となる帝都の雰囲気も良かったです。
神魔という超常現象を昔から当然のものとして認識するくせに、近代化によって非科学的だと排斥する空気もある。
果たしてそれは時代の変容の始まりか、それとも・・・?

キャラ・設定が楽しい作品だったからシリーズ化してくれたら嬉しいな。

☆あらすじ☆
――本には神様が宿っている。
想いを紐解くレトロモダン・ファンタジー。
帝都で職業婦人をしている朱莉は、ある日、巷を騒がせている怪異に襲われ、住んでいたアパートが全焼してしまう。
途方に暮れている朱莉を助けたのは、眉目秀麗な青年・智人。
だが彼は本に奉られた神様・言神(ことがみ)で、ある洋館の住み込み管理人の仕事を朱莉に紹介する。
寝食が保証されることで住み込みを了承した朱莉だったが、案内された洋館は一癖も二癖もある言神たちの住まう、問題山積みの物件だった!?
ワケあり洋館ではじまる、個性的な言神たちとの同居生活。
今、緩やかに動き出す、人ならざるものが本に綴られ奉られる時代を生きる恋(?)と物語の奮闘記!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

天涯孤独の身の上にあり、帝都で職業婦人として商社に勤めている御作朱莉
突如あらわれた雷獣に襲われた朱莉は、同じく突如現れた青年姿の言神・夜行智人に窮地を救われる。

言神とは、荒ぶる御霊をもつ神魔を鎮めて書物に封じ、再定義して奉られた神のこと。
そして、言神を封じた「言語リ」を語ることで彼らを使役することができるのが「活動弁士」と呼ばれる存在。

朱莉は物語嫌いであるため、言神や弁士に近づかないつもりだったのに、なぜか主をもたない異質な言神である智人に「僕のご主人様になってください!」と迫られてしまいーー というお話。

 

書物片手に神を使役し、人を害する神魔を調伏する。
そういう「弁士と言神」のバディ・アクション要素があるお話なのだけど、鍵を握る「言語リ」の設定が面白いんです。

封じられた神は様々な逸話を持ち、その一面を脚色したり編集したりして、「言神」として使役しやすいように調整がされている。

仮にも「神」に対する扱いとして、なんだか畏れ多いというか「大丈夫かそれ?」みたいな不安を感じる設定ですよね。
もちろん大丈夫じゃない。
本来の形を不当に歪められた言神は暴走し、災害と化してしまう。それを対処するのも弁士の仕事となるのです。

 

主人公・朱莉は弁士ではないのだけど、弁士としての才能を持っていることから、弁士のお手伝いのようなことをしたり、様々な言神たちと関わっていきます。
「言語リ」という性質上、朱莉もまた独自の視点で言神たちを「語って」いくことになるのだけど、これがとても痛快でした。

歪められたり、失意を抱いていたり、負の側面を強調された神魔たちを、次々と語り直していく朱莉。
そこで見せるのは、朱莉なりの「物語の再解釈」と言えるのではないでしょうか。
優しい彼女の視点から、言神たちの物語を、優しく受け止めていくのです。

それはまさに「物語を読む」行為だと思うし、そんな朱莉のことを「良き読者」と呼ぶのがとても素敵。
特に「鬼神殺し」の忘れられた善の一面を、朱莉が必死に訴えたシーンが好きです。
汚点も欠点も決して間違いではないけれど、それだけで語り尽くせるものじゃない!というのは、物語を読む上で(あるいは感想を語る上で)忘れてはいけない視点だと思う。私も一面だけに囚われないよう、広い視点を忘れないようにしなければ。それが難しいんだけども。

 

さて、そんな「良き読者」としての本質を持つにも関わらず、当の本人は「物語嫌い」を公言している。

なぜ彼女は物語を嫌うのか、なぜ言神を忌避するのかーー

物語は、朱莉と言神たちの愉快でにぎやかな生活を描く一方で、彼女すら知らない彼女の過去を描いてくことになります。

 

この後半で更に魅力を増していくのが、押しかけ従者・智人でしょう。
もうねー、めっちゃ健気。
照れ照れと朱莉を慕って付きまとう姿は面倒くさい&可愛いの権化だったのに、こんな過去エピソードを明かされたら好感度が上がらざるをえないでしょ。
人ではないから話が通じないところもあるけれど、その忠義や親愛も人の尺度で測れるものではなくて・・・・・・
他の言神にヤキモチ焼いて拗ねてるところなんか、あざといくらい可愛かったのにね(真宵ちゃんとバチバチしてるシーンとか可愛いの二乗だった)
そんなに嫌なのに、朱莉のために用意して準備して残していこうとする姿が、本当にいじらしいんですよ。ずるい〜!笑

 

これは今後ますます良い主従になりそう。
てか続くのかな?
なろう版(https://ncode.syosetu.com/n0927fl/)はここまでみたいだけど。
朱莉が弁士として本格的に動き出せば更に面白くなりそうなので、シリーズ化に期待したいと思います。

 

魔神少女と孤独の騎士2 /三月ふゆ

$
0
0


魔神少女と孤独の騎士 2 (ヒーロー文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年3月刊。
面白い!めちゃめちゃ面白い!
内向的でいじめられていた少女の、憂鬱な異世界召喚譚。
この第2巻では、第1巻で仕込まれていた「謎」が大きく動き、徐々に物語の空気が変容してきました。

異世界と現実世界の交錯。過去は未来で未来は過去。
部外者すらも引きずり込み、この世界で一体何が起こっているのか。

ワクワクが止まりません。続きが楽しみ!むしろ今すぐWEB版に飛ぶか!?

☆あらすじ☆
「面白すぎる」「続きが待てない」と大反響! ドキドキが止まらない2ヶ月連続リリース!
黒い本に呑み込まれ、異世界の森へと彷徨いこんだ少女、七子。
七子は自らの「眷属」へと変えた騎士、エリアスとともに、現実世界に帰る手掛かりを探すため、魔の森の「最下層」を目指していた。
七子たちは最下層へ降りる協力を仰ごうと、魔の森で出会ったグレンに連れられ、ティフ神聖国に向かうことになる。
女王アビゲイルと交渉した七子は、大陸会議への参加が決まるが、会議までの滞在中、何の因果か、クラスメイトの瑞樹優花と再会する。
一方、現実世界。
「篠原七子の葬儀」の参列を終えた木島礼津は、その帰り道、突如出現した黒い本に呑み込まれてしまう。
次に礼津が目を覚ますと、そこは過去の世界だった。
――物語は世界と時空を越え、動きだしていく。

以下、ネタバレありの感想です。

 

さぁ前巻の引きは何だったのか??とドキドキしながら開いた第2巻。

 

え・・・・・・

 

ば、バッドエンドしちゃったんですけど???????

 

町の女たちに鍛えられ、ちょっと明るくなった七子の姿に、これからの彼女の成長とか変化を感じていたところだったのに。
あまりにも突然のバッドエンドに「ページ飛ばした?」となりました。
それくらい唐突だったし、受け入れがたい展開だった。
ていうか七子とエリアスの主従関係をそんな悲惨な形で尊く描くとか・・・!
望まぬ主従関係だったとはいえ、エリアスは今度こそ主のために命を散らせたんだね・・・・・・みたいな感動するべき場面!?なのかな!?!?!?(動揺)
いやいや主も死んどるし!

 

混乱著しい読者(私)を置いて、物語は現実世界へ戻っていきます。
前巻から登場していた瑞樹有木島礼津の、この物語における役割がようやく明らかになるのです。

 

この中盤からの展開、これがもうめちゃくちゃ面白かった。
「異世界召喚」という現象を「外側」から考察していく構造なんですね。こういうの好きだよ好きだよ!

 

なぜ七子は異世界に連れて行かれたのか。
七子を飲み込んだ「本」は一体何なのか。
そして、「本」に触れた礼津たちに起こっている「七子の死を起点とするループ」の出口はどこにあるのか。

 

礼津の従兄弟・滝彦が中心人物(あるいは狂言回し)として登場したことで、現実世界の方も物語を動かす準備が整ったように感じました。
この謎めいた展開がどこにつながるのか分からないけれど、少し民俗学っぽい要素というか伝奇譚みたいになっているので私の興奮は止まりません。
1巻だけでも面白かったけれど、その面白さが跳ね上がった感じ。
そういや「うつろ船」の絵って見たことありました。UFOとか言われてるやつじゃなかったっけ?

 

まぁ、礼津たちが直面していく「七子を待つ未来」は、あまりにも憂鬱なんだけど。
いや、今の七子にしてみたら「すでに体験した過去」なのか・・・?吐きそう。
七子の黒タイツとか気にしてなかったなぁ。
時系列の整理に戸惑ったのだけど、1巻時点ですでに暴力は受けていたってこと?
それが更に悪化したきっかけが絵本事件?
なんか他にもやばそうな気配があるんだが(状況証拠しかないから告発できない「犯人」って・・・?)

 

どちらにせよ、結局のところ思い出してしまえば全てが七子の「過去」になるわけですよね。
仮に礼津たちが上手く立ち回って破滅の未来を回避できても、七子の心の傷がなかったことになるわけじゃないのでは・・・?吐きそう本当に吐きそう。
いや、最後に記憶が完全に消去されれば「なかったこと」にできる可能性もあるのか。それが胸糞なのか救済になるのかは描き方次第になりそうだ。

 

鬱すぎて苦しいものの、リスタートした七子に可能性が残されていることだけは不幸中の幸いなのかもしれません。
謎のたぬきのおかげでエリアスとの関係が緩和したのは可愛くて笑っちゃった。
でも今の七子を支えてくれる可能性があるのはエリアスだけだから、どうにかこの主従には上手くいってほしいものです。

 

可能性といえば、あの子の正体もある意味「七子の可能性」のひとつだったわけですよね。
でも随分はっちゃけたな、七子(仮)・・・・・・
その「可能性」は拒み、自分を受け入れたことは大きな進歩。
たとえ一進一退を繰り返していく子だとしても、どうにか救いのある未来へ進んでいけるよう祈るしかありません。

 

まぁ現実世界どころか異世界の状況もまったく改善してないんですけどね。
出てくる度にヘイトを稼いでくる瑞樹優花ちゃんの居候先にご案内!やだー!

次巻も楽しみです・・・!

created by Rinker
主婦の友社
著者 三月ふゆ イラストレータ ともぞ

 

継母の連れ子が元カノだった4 ファースト・キスが布告する /紙城境介

$
0
0


継母の連れ子が元カノだった4 ファースト・キスが布告する (角川スニーカー文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2020年4月刊。
うあああ・・・・・・これは、なんというか、ちょっと良すぎでは????
なんだこの揺れる乙女心の瑞々しさは????
結女は元々好きなタイプのヒロインだったんですが、更に大好きになりました。
こじらせて、こじらせて、こじらせた末に、彼女が選んだ道。
不敵に可愛く笑う姿に惚れてしまいそう・・・・・・
俄然楽しくなってまいりました!これは続きが待ち遠しい!!

☆あらすじ☆
そういうところが、好きだったから。終わった初恋と“今”が交差する帰省編
親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
“家族”らしさも板についてきた二人だが、ときおりあの頃の思い出が蘇り、やっぱりお互いが気になる日々で——。
そんな夏休みも半ば、伊理戸一家は父方の実家に帰省する。
「水斗くんじゃ〜ん!! ひっさしぶりぃーっ!!」
水斗をハグで出迎えたのは、親戚の清楚風陽キャお姉さん・種里円香。
なぜか彼女には従順な水斗に、結女は察する——この人、水斗の初恋相手!?
昔の恋は振り切って、今の関係——“きょうだい”を受け入れたはずの元カレと元カノに、未練が渦巻く三度目の夏祭りが訪れる。
結女の決断に元カップルが大いに揺れ動く、夏休み帰省編!

以下、ネタバレありの感想です。

 

伊理戸一家揃って、父の田舎に里帰り。
恋人だった頃には知ることのなかった水斗のルーツに触れるなかで、結女の心は騒がしく揺れていくーー という第4巻。

 

今回、ほぼ結女視点でした。
これがすごく良かった。私、結女視点が一番好きなパートだったんだなと実感するくらい最初から最後まで楽しかった。

未だに距離感の再設定が難航している、「きょうだいになった元カレ」との関係。

彼女だったから知ることができた水斗の顔。
家族になったからこそ知っていく水斗の顔。

二つの立場から余すところなく水斗を見つめる結女の姿に「どんだけ見てるの??」と無粋にツッコミたくなるほど、結女はひたすら「伊理斗水斗」という男のことを考え続けます。
彼に対して、自分はどういう立場から、何を思えばいいのかを考え続けるわけです。

 

もう二度と戻ってはこない、初恋の残像。
切なく胸を衝くものはある。それは認めるけれど、・・・・・・だからこそ、思い出に留まってはいけない。
未練にしがみついてはいけない。
私と彼は、同じ『伊理戸』――結婚したわけでもない、義理のきょうだい。
かつて付き合っていたなんて些末なことだ。
それが、今の私たちの、すべてなのだから。

 

言い訳のように、言い聞かせるように、結女は自分の立場を確認するんです。
それは意地もあるけれど、母への気遣いも多分にあって。
「再婚夫婦の連れ子として再会した元恋人」という設定の妙が、ここにきてググッと存在感を増したように感じました。
この設定だからこそ描ける恋なんだと改めて思った。
そんなに気になるなら素直になっちゃえよ!と簡単に言える話ではないんですよね。
過去のしがらみも、現在のしがらみもある。
だからこそ、その気持ちの正体は慎重に見極めなければいけないのです。

 

そうやって悩んで迷いながら迎えた、リベンジの花火。

いいじゃん〜〜過去の自分と戦う展開!
思い出は美しく、逃げやすいものだから。
ぶん殴る勢いで現実に目を向けさせるのは有りですよめっちゃ有り!そのアグレッシブな不意打ち最高!

 

「未練」と「昔の恋」を乗り越えて、「新たな恋」が始まった。
過去に居座る水斗をおいて、結女は颯爽と現実を歩みだした!

言い訳と未練タラタラな面倒くさい情緒もすごく楽しかったけれど、それを一気に吹っ切った爽快感は本当に素晴らしいものでした。
あの宣戦布告が格好良すぎなんだよな〜〜
そこまで言うなら、「綾井結女」に「伊理戸結女」が打ち勝つところを、是非とも見せてもらおうじゃありませんか。
水斗の中でくすぶる「綾井結女」への未練を、「伊理戸結女」が蹴り飛ばしてくれるんでしょう?
ははは本当に面倒くさいな、このふたり!その拗らせ具合が最高です!

 

しかしこれって要するに「強くてニューゲーム」なのでは・・・?

 

めちゃくちゃワクワクしてきました。楽しみすぎる。
次巻はいつだろうか。正座して待ちます!

 

2020年3月のおすすめライトノベル

$
0
0

読了ペースががくんと落ちています。
心が安定しないと本は読めないなぁ、としみじみ思う。ブログ更新も滞りがちになっています。

でも面白い本を読めば元気になるんです。それもまた本当。
浮いたり沈んだりしながら、今月もがんばって乗りきろうと思います。

それでは、3月に読んで面白かった本を紹介していきます。

 

created by Rinker
主婦の友社
著者 三月ふゆ イラストレータ ともぞ

内気ないじめられっ子が、謎の本に喰われて異世界へ突き落とされてしまう。
ダンジョンにて魔神と化した少女は、亡国の哀れな騎士を眷属とし、彼とともに迷宮を進む―― という異世界ファンタジー。

何かあればすぐに謝り、そういう自分を責め倒して内側に沈み込むような主人公のお話なので、正直とても暗いです。
陰鬱で、残酷で、息が詰まるような圧迫感がある物語だと思います。

でもこれがめちゃくちゃ面白い。

少女の成長と後退が繰り返される一方で、彼女が消えた現実世界では「異世界召喚」という現象に対する考察が進められていきます。

なぜ少女は異世界に送られたのか。異世界と現実の世界でそれぞれ何が起こっているのか。

異世界と現実世界が交錯し、物語は徐々に混沌を深め、この先に一体何が待つのかと興奮が止まりません。現代伝奇好きとしても推せる。

1巻時点では主人公の性格的に少し薦めにくいかな?とか思っていたのだけど、連続刊行された2巻を読んで考えを改めました。
これは凄いぞ!読もう!!

 

created by Rinker
KADOKAWA
著者 逆井 卓馬 イラスト 遠坂あさぎ

豚になったオタク男子と、底抜けに優しい少女。
そんな二人(?)の出会いから始まる異世界ファンタジーです。

PVのパワーに釣られた作品なので、PVを貼っておきます。

予想外にしんどい内容に驚いたのだけど、豚と少女の純愛物語としてかなり面白い作品でした。

人の思考をもつ以外は正真正銘ただの豚。
しかし豚は侮れない生き物なんですよ。

 

婚約者に殺される瞬間、なぜか6年前の世界に戻った主人公。
身体は10歳の幼女。その中身は強大な魔力を操る16歳の「軍神令嬢」。
外と内がチグハグな存在となった彼女は、本来あるべき未来を物理で捻じ曲げ、人生のやり直しを目指します。

そんな主人公ですが、勢いで夫婦になった敵国の皇帝との偽おにロリラブコメも繰り広げていくことになります。
この二人の攻防が楽しくて楽しくて。本当に癖が強いんですよ。特に皇帝が!事案だよ!

自分は恋に落ちたくないが、相手は恋に落としたい。
そんな二人の思惑が錯綜する、楽しいラブコメ・ファンタジーなんです。

武闘派ヒロインならではの格好良いアクションにも大満足。
コミカライズも重版も決まったし、これは今後も期待できそうな新作ですよ。

 

created by Rinker
SBクリエイティブ
著者 古森きり イラストレーター ゆき哉

悪役令嬢転生×辺境スローライフな異世界ファンタジー。
ただし、主人公は悪役令嬢の夫となった青年です。

婚約破棄された悪役令嬢を助けたことで彼女を押し付けられた青年貴族。
実は密かに片思いをしていた主人公は、内心ウキウキ気分で辺境生活をスタートさせるのです。

この主人公が、とんでもない尽くし系ヒーローだったりして。
愛する嫁のためにめっちゃ頑張り、その頑張り方がチート級。
一途な青年の片想いを堪能できる作品なんです。

 

こちらは一途な少女の片思いを堪能できる作品。
恋した人の全てを知るためにめっちゃ頑張り、その頑張り方がチート級なんです。・・・・・・主に犯罪方面で。

無駄に高度な諜報戦と心理戦を繰り広げていく、スパイたちによる三角関係ラブコメ。
一人の少女の可愛い初恋が、やたら大きな騒動へと繋がり、予想以上にスリリングなラブコメを展開していきます。

優秀な頭脳を持ち、ポンコツな初恋をこじらせた美少女の威力を見よ!

 

他者の心が聞こえる少女・鏡花。
ある時、彼女は自分に対する恋心を暴走させた、だいぶ怖い「心の声」を聞いてしまいます。
その声の持ち主は、鏡花が所属する風紀委員を取り仕切る深見先輩。

表面上はクールで頼れる深見先輩は、心の中で元気よく狂っている――

先輩の一方的に重い愛情にドン引きしながらも、異能ゆえに絶望の淵にいた少女に変化が起こり始めるのです。

結構重たい話なんだけど、先輩の元気な声のおかげか、シリアスさんは仕事がやりにくそうでした。
変態は変態でも、この変態は健全で真面目な良い変態なのです。

 

帝都×異能×主従の和風ファンタジー。
本に封じられた神魔「言神」を使役する者たちが活躍する帝都。
そんな帝都で働く主人公は、あるトラブルから言神の青年に懐かれてしまいます。

頬を赤らめながらグイグイと慕ってくる自称従者。
そんな彼に押されつつ跳ね返していく、芯が強くて自立心のあるヒロイン。

凸凹なふたりの掛け合いが楽しく、言神が引き起こすトラブルを描いた異能ファンタジーとしても面白い作品です。
面倒かわいい赤面系イケメンがお好きな方、本作の従者くんは楽しいかもですよ。

 

怖がりでアル中の作家と、その悪友で怪談を集める記者。
腐れ縁でつながった男二人が、震災後の帝都で様々な怪奇現象に遭遇する物語です。
ホラーな設定・展開ではあるのだけど、恐怖を感じると同時に切なくなるようなお話が多い作品でした。

本作は様々な事件を通して描かれる悪友二人の関係がとても良かった。
これは「友情」のお話だと思うんですよ。
「悪友」と書いて「親友(とも)」と読むんです・・・!
ちょっと捻くれてるけれど、優しくて温かくて気負わない、イイ年した男2人の友情に感動するお話でした。でも酒は止めるんだ!

 

最近、観測範囲で惚れ魔女読者が増えてきたように感じます。
嬉しいので私も布教に貢献すべく、惚れ魔女はいいぞ!ともっと叫ぼうと思いました。惚れ魔女はいいぞ!

可愛い魔女の可愛くて切なくて可愛い片思いに浸れるんですよ。可愛いがゲシュタルト崩壊。
2巻も可愛いが可愛いで最高に可愛くて幸せでした。

ちなみに夏にコミカライズが始まります。
本編は2巻で一応完結かな?綺麗に終わっていますよ!

 

戦闘シーンが私の読解力を超えてきているので、ついていけるか不安になりつつ、でもやっぱり面白すぎる第2巻でした。
空中艦隊戦の迫力は圧巻だし、幼なじみのピュアで悲恋へと向かいそうな関係がツボ。

 

椅子と謎と愛憎のミステリー第2弾。
「ふんわりオカルティック」と名付けた方の「ふんわり」観が気になる。普通に怖いです普通に。
すっとぼけた変人ヴィクトールと苦労性霊感JK杏の掛け合いが最高に楽しい作品。
ヴィクトール先生の椅子学講座も安定の面白さでした。

 

孤高で健気な吸血鬼・凜音の人気爆上げ回。
転生しても続く鬼夫婦の愛も素晴らしいんだけど、二人の手下たちの巨大感情も最高に心を揺さぶるんですよね・・・

 

異世界に転生し、そこで出会って恋をした少年と引き裂かれた少女・マキア。
彼女の数奇な運命を描くファンタジー第2弾ですが、今回もとても面白かったです。
このシリーズ、魔法学校ものとしてもユニークで良いんですよ。

 

女性官吏・茉莉花の立身出世を描く中華ファンタジー第8弾。
茉莉花の仕事は多岐に航るので、新章ごとに様々な楽しさがあるんですよね。新鮮さが継続している。そこがやはり魅力的です。
あと茉莉花が化け物すぎるんですよ。
可愛らしい少女の皮では隠しきれぬ怪物感、めちゃめちゃ楽しいです。

 

愛されることに怯える王と、彼だけは愛さないと誓ってあげる寵姫。
いびつに執着し合う夫婦の奇妙な関係を描く中華ファンタジー第3弾。
宮野美嘉先生は、毒気の強い関係を描くことにかけて天才的ですよね。
よくもこんな業の深い執着を思いつけるものだな・・・と感動します。すごく好きだ。

 

以上です。
最後に、3月に書いた企画記事を再掲して終わりたいと思います。

 

 

 

 

それでは、色々と大変な時期ではありますが、今月もよろしくお願い致します。

 

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?21 /聴猫芝居

$
0
0


ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.21 (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年4月刊。
最終巻だと思ったら違った・・・!
ちょっと番外編っぽい感じのホワイトデー回でした。
次巻が最終巻とのこと。なんだか死刑執行が伸びた気分ですが(過言)、あとがきを読んで少しホッとしました。

☆あらすじ☆
残念で楽しい日常ほぼ=ネトゲライフ、第21弾!
ネトゲはずっと終わらないと思った? ……残念!どんなものにも終わりはきます!
ついに訪れるレジェンダリー・エイジのサービス終了を控えた、三月。二月でイベントはやり切り、残されたのはせいぜい——ホワイトデーくらい。
……ホワイトデー?
「やらかした! バレンタインにチョコレートをもらったの、忘れてた!」
今年も残念美少女・アコ、そしてネトゲ部のみんなへのプレゼントお返しツアーを敢行しながら、英騎はちょうど一年前、同じように奔走していた「この日」のことを思い出す……。
現在と過去を行き来しながら次々繰り出される、ヒロインたちのエピソード満載の特別編!
カクヨム内「電撃文庫公式アカウント」で掲載された連作短編に、文庫だけの書き下ろし&文庫未収録イラストを加えて、最終巻直前の一日をお届け。
残念で楽しい日常だいたいネトゲライフ、時を超えてこれまでとこれからをたどる、第21弾!

以下、ネタバレありの感想です。

 

カクヨムに掲載されていた連作短編とあわせて送る、「去年のホワイトデー」と「今年のホワイトデー」。
アコやネトゲ部のメンバー、一人ひとりに贈り物を渡すために奔走するルシアンの姿を描いていきます。

 

ホワイトデーなのにアコ優先じゃないの!?とびっくりしたのだけど、終盤でちゃんと種明かしがされて笑いました。
メインは最後に取っておくのはフィクションの手法だけども、現実に考えれば「後回し」ですからね。これはルシアンやっちまったな!と。

 

てかこのへん、秋山さんの行動がすごすぎません?
茜から話を聞いてすぐに事態を把握、即座に実家を襲撃してシュシュを牽制(お仕置き)、ルシアンに気を使わせないようにプレゼントはしっかりもらい、デート仕様のコーデを手伝ってアコのもとに送り出す――

なんという有能参謀・・・!

雑な扱いされて喜ぶけど、このひとは雑に扱えないタイプの優秀さですよね。だから雑に扱われて喜ぶんだけど(以下エンドレス)
これだけ優秀だと先に会って普通に楽しんでた茜やマスターがポンコツに見えるじゃないですか。ポンコツだけど。いや、気を使わない関係だからこれで良いんだけど(ぽんこつ可愛い)

 

色々あって、満を持してアコとのホワイトデーにこぎつけたルシアン。
アコはさすがのメインヒロインでした。ていうか両親の話にとてもしみじみしてしまった。
ルシアンとの出会いは、意図せずして玉置家も救っていたんですね。
アコの性格的に、「両親仲良くて幸せだなぁ」よりも「両親仲良しだから私はお邪魔虫だな・・・」となるのは理解できる話なんだけど、想像以上に重い感情だったんだろうなって。
アコの人生にとってルシアンがどれだけ重要な存在だったのか、こういうエピソードからも知れるのがすごく良い。

 

あああ、、、ネトゲ嫁のもつ、柔らかくてぽかぽかした空気、本当に好きだ〜〜!!
読むだけで幸せになれる貴重な癒やし枠。
これが終わったら私の大事な栄養ドリンク系ラノベがひとつ失われてしまう・・・・・・

 

とか何とか考えながら落ち込んでいたのですが(幕間で再掲された過去イラストが懐かしくて寂しい)、どうもまだ終わらないらしい。

というか、あとがきを読むに最終巻のあとも終わらないらしい?

と真面目に言っていますが、ストーリー的にここが区切りだね!というだけで、多分まだ出ます。むしろ出せる限り出します。
私はきっちりエンドマークのつく作品も好きなのですが、それ以上に、いつまでも終わらずにずっと続くお話の方が好きなんです。彼ら彼女らの世界に、ずっと居たいタイプなのです。

わかるー!超わかる!

エンドマークは大事ですよ。ずるずると蛇足が続く作品はいやだと思う気持ちもあります。きっちりすっぱり終わらせることに意味がある作品は多いですから。
でもそうじゃない作品だってある。ネトゲ嫁は良いんです。ずるずると続く日常こそ見たい。見たくない人は知らん。私は見たい!
年に何度か私を幸せな気持ちにしてもらえるよう、永遠に続けばいいんだ・・・!(わがまま)

 

とりあえず大学生編が読みたいです。
なんかラストで二人暮らししてるんだけど、大丈夫???退廃的なの???どうしたの!?!?
あと、この調子だとLAも終わる終わる詐欺で終わらない気がしてきました。どうなるかな??笑

 

薬師の受難は、だいたい自分のせい /さばみそに

$
0
0


薬師の受難は、だいたい自分のせい (アイリスNEO)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2020年4月刊。
うっかり惚れ薬を作った薬師と、うっかり惚れ薬を飲んだ騎士が織りなすお仕事ラブコメ。
悪くはないと思いつつ、私とは微妙に波長が合わない部分もある作品でした。特に前半。
何かがダメと言うより、ひとつひとつの要素が私の好みと少しずつズレていく感じかなぁ。
でも後半は面白かったです。お仕事もラブコメも後半に入ってからは楽しく読めました(惚れ薬ラブコメなのは前半だけども)

☆あらすじ☆
ある日、騎士団一の堅物なスタッグ隊長の甘い言葉を聞いた薬師のアルカは、途方に暮れることに。それは自分がうっかり作ってしまった惚れ薬を、彼が誤って飲んだせいだと分かったからだ。しかも、惚れ薬には解毒剤がないばかりか、とんでもない効果があり――。隊長が私に甘く囁いたり、私のそばから離れられなくなったのは、私のせいです。でも、そのせいで四六時中一緒に過ごすことになるなんて!?
うかつな薬師と、不器用で恋に鈍感な堅物隊長のお仕事ラブファンタジーが、書き下ろし中編を収録して書籍化!

以下、ネタバレありの感想です。

 

騎士団所属の薬師・アルカは、自白剤を作るつもりが誤って惚れ薬を作ってしまう。
その惚れ薬を誤って飲んだのは、騎士団第三部隊のスタッグ隊長
なぜかポロポロとアルカへ甘い言葉をはきだし、離れると不安がるスタッグ隊長のため、アルカは彼のそばで任務に付き添うことになり―― というお話。

 

惚れ薬を飲んで大パニック!というラブコメです。
いや、大パニックというほどでもないか・・・?
薬の効果で衝動的になるというよりも、うっかり本音がこぼれる感じなんですよね。混乱はあるけど、理性の範疇というか。
なので「惚れ薬」の正体については納得するばかりでした。

 

本作、タイトルから抱いたイメージに反して「アルカの受難」というより「スタッグの受難」の方が印象が強いんですよね。
自分でも無自覚な本音がぽろぽろ出てくるの、ほんと可哀想だなぁって(笑)
女性を褒めたり愛でたりする表現力や語彙の乏しさ(というか拙さ?)から「なるほど女性経験のない堅物・・・」と納得してしまうの、不憫すぎない??
滑空に失敗したモモンガっていう分かるようで分からんたとえは何なのw

 

アルカの方は感情の変化にぎこちなさを感じて、そこが気になりました。
惚れ薬を飲ませてアタフタしていたと思ったら、いきなり嫉妬とか独占欲を滲ませてくるので「えっ?」と戸惑ってしまう。
元から無自覚にスタッグへ好感を持っていたという話みたいだけど、そのへんがどうも回りくどく感じて、話に乗れない感覚があって。
でもこれは私の感覚というか好みの問題なのかも。説明はあるわけだし・・・・・・

 

なんだか乗れないぞ・・・と思いながら読んでいたのだけど、二部構成の後半である「薬師の受難と、愛の花」は面白かったです。

これを読んで気づいたんだけど、前半は最初に惚れ薬作ったシーン以外はアルカが薬師としての仕事をほとんどしてないんですよね。傷の手当くらい?
聖女の護衛任務は薬師の仕事と直接関係がないから、そこでも「思ってたのと違うなー」と消化不良を起こしていたのかも。

その点、「愛の花」では薬師としてのアルカが知識と技術をもって活躍しているところが面白かったんだと思います。
すごく「お仕事もの」っぽかったんですよね。こういうのを期待していたし、後半は期待通りでした。
仕事に誇りを持つアルカは格好良かったし、スタッグとのイチャラブコメも楽しかったです。

 

惚れ薬ラブコメとしては私の好みから外れてたけど、「愛の花」みたいな薬師のお仕事系だったら続きも読みたいな。

 


偏屈王の妖精画家2 はじまりの騎士と狙われた花嫁 /彩本和希

$
0
0


【電子オリジナル】偏屈王の妖精画家2 はじまりの騎士と狙われた花嫁 (集英社コバルト文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年3月刊。
ますますフェアリーテイル感を強めているファンタジー第2弾。
1巻で終わりかな?と思っていたので2巻も刊行されて嬉しいです。ラストをみるに3巻も出るのでしょう。
まだちょっと心の傷が痛そうなヒーローと、愛があふれすぎて失神しがちなヒロインのいちゃいちゃがとても楽しかったです。
そして新たな騎士(イケメン)が登場してヒロインが沼落ちのピンチ!そっちか・・・!

☆あらすじ☆
妖精が見え画家でもある伯爵令嬢のフィオナは、無類の筋肉好きでちょっと変わった審美眼の持ち主。そんな彼女のまさに「理想の姿」を体現した青年ディオンにフィオナは出逢うのだが、彼の正体は実はパラルビオン国王で・・・・・・!? 互いに惹かれあい、王国の強い運命に導かれた2人は紆余曲折の末婚約する。しかし、大きな試練が待ち受けていて・・・!? 波瀾万丈! ファンタジーラブロマン第2弾!

以下、ネタバレありの感想です。

 

無事に婚約して、あとは式を挙げるだけとなったフィオナとディオン。
しかし、アルビオンの騎士・パルヴァが千年の眠りから覚めたり、「真の王」の結婚に必要なアイテムが見つからなかったり、市井の少女たちを謎の「眠りの病」が襲ったりと、トラブルが次々と起こってしまう―― という第2巻。

 

誰の目にも妖精がみえるようになったことで、ますますフェアリーテイル(おとぎ話)感が強くなってきました。
はるか昔の伝説と、フィオナたちの現実が交錯していく――そういうの、なんだかロマンチックで大好きです。
まぁトラブルは難題ばかりで主人公たち的には全然ロマンはないのだけど、、、でも指輪探しのくだりとかユーモアがあってワクワクしてしまうんですよね〜

 

「見えない恋人たち」という展開も、ストレートにロマンチックで楽しかったです。
他の人間には見えるのに、互いだけが相手を認識できなくなってしまう。
それは悲運だし大変な事態なんだけど、「仕方ないよね・・・」とばかりに公開イチャイチャに転じるフィオナとディオンが流石でした。
だから他の人には見えてるんだって!笑
自重したら不安になるから思いっきりイチャつくしかないという、なんだこれ。理論武装カンペキか???

 

もうひとつ面白かったのは新キャラ・パルヴァの扱い。
序盤こそは、「お?フィオナをめぐるイケメン同士の三角関係展開か?当て馬登場でディオンが燃えちゃうパターンか??」と予想してたんだけど違った。
これはあれですよ。危険な沼ですよ。オタ絵師がハマると大変なことになる沼ですよ。フィオナが新しい扉を開いちゃう!
友情と忠義を交わす美形筋肉と美形筋肉が互いを高めるため訓練に励む構図、フィオナ的にはごちそうすぎてキャパを超えるのね・・・・・・

 

色々と笑いつつも、今回の騒動は終わらず。
これはどうも次巻が出るようですね。
緊急避難的公開イチャイチャも楽しいけど、見えない二人はとても寂しそうで切ないので、やはり呪いはちゃんと解かねば(当たり前でしょ)
次巻も楽しみです。

 

僕は婚約破棄なんてしませんからね /ジュピタースタジオ

$
0
0


僕は婚約破棄なんてしませんからね (一迅社ノベルス)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2020年4月刊。
悪役令嬢を婚約破棄して追放する「予定」の王子様が主人公の悪役令嬢ラブコメ。
婚約者を悲しませないために、彼女と一緒にゲームの強制力と戦う少年の物語です(という体の、ショタとロリがイチャイチャする話ですね!)
大人顔負けの活躍で自分たちの地盤を築きつつ、来る運命と戦おうとする子どもたちが頼もしくて可愛い。
ゲーム開始時点に辿り着かずに終わったけれど、ゲームヒロイン側の不気味さが良かったし面白くなりそうです。
あと、序盤は10歳児の語り口が慣れなかったんだけど(ひらがなが・・・)、成長に応じて地の文も読みやすくなっていくので、次巻からは戸惑うことなく楽しめるはず?

☆あらすじ☆
「き……、きゃああああ――――!」第一王子の僕の婚約者になる、公爵令嬢のセレアさん。十歳の初顔合わせで、悲鳴を上げて倒れちゃいました! ええええ!? なになに、思い出した? 君が悪役令嬢?  僕の浮気のせいで君が破滅する? ひどいなその設定の僕。でもね、そんな『イベント』とか『設定』なんて関係ないって。一緒にいるうちに、控えめで優しい君が、どんどん好きになってきているんだから! でも、ヒロインだという女の子に会ったとき、強烈な胸のドキドキと、運命の鐘が頭で鳴り響いて……。これが”強制力”? それでも僕は、絶対に婚約破棄なんてしませんからね!!
これは、乙女ゲーのストーリーという過酷な運命にラブラブしながら抗い、ゲームの強制力とイチャイチャしながら戦う、十歳から始まる王子と悪役令嬢の物語。

以下、ネタバレありの感想です。

 

婚約者となる予定の公爵令嬢セレア(10)に出会った第一王子シン(10)は、なぜか挙動不審な様子の彼女から「乙女ゲームと悪役令嬢」の話を聞きだす。
破滅の運命に怯えて泣くセレアのために、シンは「乙女ゲームの強制力」と戦い、自分が「攻略対象のシン」とは違うということを示すため奮闘することになり―― というストーリー。

 

何を期待して本作を読んだかというと、あらすじに書いてある「強制力」の部分でした。

実際に強制力の影響を受けるとき、攻略対象は何を選ぶのか。
セレアを大事にしようと思っているのに、別の女の子に運命を感じたらどうするのか。

そのへんをどういう風に描くのかなぁ、とワクワクして読み進めたのだけど、期待に違わず面白い演出が待っていました。

あらかじめセレアから話を聞いていたにも関わらず、「運命」の体当たりをくらって動揺するシン。
彼は、問題を打破するために即座に行動を起こすのだけど、これがすごくロマンチックで可愛いんです。

だってふたりとも10歳ですよ??そんな子どもたちが「二人だけの深夜の誓い」って可愛すぎじゃない??

彼らの焦燥は本物だから決して「ごっこ遊び」ではないのだけど、そうは言っても10歳が永遠の愛を誓う姿はおマセな感じが拭えなくて可愛い〜〜〜!!!ってなる。
こういう可愛さって「10歳児っぽい地の文」が担保してるんでしょうね。
正直、ひらがなが多すぎて読みにくさを感じたんですけどね、地の文。でも演出としては良かったのかも。

 

ところで、結局ゲームの強制力はこれでクリアってことでいいんでしょうか?
ゲーム突入前の子ども時代でフラグを折ったのは、少しだけ拍子抜け感があったり・・・・・・

 

強制力の問題はさておき、ゲームヒロインとの勝負がこれで終わったわけではないようです。
来たるべき対決のために、今の自分たちができることを一つずつ増やしていくシンとセレア。
この後半は現代知識チートの連発でした。しかも医療分野だよ。
セレア、精神年齢も10歳のはずなのにその知識量と理解力はなんなの。
それに付いていけるシンはナチュラルボーン・チートでしょ。恐るべき子どもたち・・・!

 

もっとも、彼らが対峙する予定のゲームヒロイン側も現代知識チートを連発して勢力を伸ばしているので、対決の構図としてバランスが取れているとも思う。
世界観的にはインフレ甚だしいんだけど、主人公カップルVSゲームヒロインの対決としてはワクワクします。
まぁ、彼らがどこに向かって対決してるのか、よく分からないところはあるんだけど・・・(学園で何する気??)

 

ゲームヒロインといえば、彼女の背後には謎の黒幕がいる様子?
かなり不気味な存在感を示していて期待が高まる。
割とテンプレに沿ったストーリーだったのに、黒幕が登場したことで一気に展開が読めなくなりました。これは良いテンプレ外し。

 

次巻から学園編に入るようなので、物語の本題もそこで動くことになるのかな。
運命と対決するなかで、シンとセレアがどんなイチャイチャを繰り広げるのかも楽しみです(笑)
ショタとロリから年頃の少年少女に育ったけれど、やたらと生理現象を描いていたのはどう影響するんだろう。
特に自重する理由もないので(だって夫婦だし)、ぱぱっと全年齢から飛び出しそうな。

created by Rinker
一迅社
著者 ジュピタースタジオ イラスト Nardack

 

平安後宮の薄紅姫 物語愛でる女房と晴明の孫 /遠藤遼

$
0
0


平安後宮の薄紅姫 物語愛でる女房と晴明の孫 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2020年4月刊。
本の虫の女房が探偵役となり、青年陰陽師が持ち込む事件の謎を解く平安ミステリー。
平安京で起こる不思議な事件と源氏物語の共通項を見出し、興奮してオタク語りをしてしまうヒロインが良い。
日々のお勤めが聖地巡礼になるオタクは強いですね。

☆あらすじ☆
「平穏に読書したいだけなのに!」読書中毒の女房が宮廷の怪異と謎に挑む
怪異や難事件の最後の駆け込み寺・薄紅の姫。彼女に依頼が成立するのは、物語にまつわる品が差し出されたときだけ。薄紅は重度の物語中毒で、特に『源氏物語』には目がないというのだ。
——この異名が広がったのは、晴明の孫である若き陰陽師・奉親のせい。訪ねて来た彼に早く帰ってほしい一心で、物語知識を駆使し怪異の謎を解いたのが悪かった。薄紅を使えると判断した奉親は、言葉巧みにたびたび彼女をモノで釣っては謎解きにかり出すことに。
「また相談ですか? 私は読書に集中したいのでございます!」

以下、ネタバレありの感想です。

 

時は長元十年。
後朱雀帝の即位によって慌ただしい日々が続く後宮に務めている女房・菅侍従には、周囲に秘密があった。
それは、怪事難事変事を解決してくれる駆け込み処「千字堂」の主・薄紅の姫を名乗っていること。
噂をききつけた安倍晴明の孫・安倍奉親は、とある事情から千字堂を訪ね、薄紅の姫の手腕を確かめようとするのだが―― というのが本作のストーリー。

 

『源氏物語』の大ファンである薄紅は、奉親が持ち込む事件のなかに、『源氏物語』との共通点を見出していきます。
彼女の鋭い洞察力と『源氏物語』への深い愛は、事件の裏に潜む人々の愛憎を次々と解き明かしていくのです。

 

これは源氏物語が好きな人ほど楽しい作品なんじゃないかな。
源氏物語にある様々なエピソードや解釈を、薄紅は楽しそうに語っていくんです。そんな彼女の話を聞くだけでも面白かった。
私は学校の授業で触れた以外は『あさきゆめみし』を読んだ程度の人間なので、薄紅の解説をフムフムと楽しく読むに留まったけれど、自らも『源氏物語』のファンであれば更に深い部分で共感や対論ができたりして、そこでも楽しめたんでしょうね。

 

薄紅自身もそういう相手を欲しそうな感じ。
色ボケした坊さんの目を覚まさせるために源氏物語クイズを出してるときとか、本当は心を折らなきゃいけないのに、相手がどんどん知識を蓄えていくもんだから、本題を忘れて楽しんじゃったりとか。
そういうオタクしぐさがやたら可愛いんですよ。
わかるわかる、オタクだもんな。って頷くシーンが多い。
『源氏物語』のことは分からないけれど、推しを布教したい薄紅の気持ちなら分かるよ!笑

 

そんな源氏物語オタクの薄紅が、オタク語りをしながら事件の謎に挑むミステリーである本作。
問題を持ち込んでくる奉親と、彼に気を許さない薄紅の心理的な駆け引きも面白い作品でした。
そういえば、このふたりってアラサー女と二十歳男なんですよね。結構な年の差の組み合わせで意外だったり(そして恋愛色はなかった・・・)
なにが意外って「姫」というからてっきり薄紅も二十歳前後かと・・・・・・
ノリノリで名乗ってる薄紅自身も正体がバレたら出家するレベルだと自覚してるのは笑うでしょ!

 

薄紅と奉親については、二人とも自分たちのルーツにコンプレックスを持っているところが印象的でした。
偉大な祖先を引き合いに出され、見劣りする自分の現状を考えるたびに、彼らはどんな感情を心に抱いていたのでしょうか。
薄紅が「薄紅の名にかけて」を口癖にしたり、奉親が「若輩者の陰陽師なれば」としつこく繰り返す姿をみるたびに、必死にアイデンティティを保とうとしているように見える。
自分は自分でしょ、というのは薄紅の言だけど、あれは似たもの同士の経験者だからこそ実感をもって言えたセリフなのかも。
アラサーの彼女はもう乗り越えた問題なのかな。若い奉親はまだ囚われているように見える。

 

まぁ薄紅はご先祖に関係なく『源氏物語』の世界に耽溺できればそれで幸せなんでしょうけども。
読書仲間の義盛もいるしね!
薄紅と義盛の仲良し感はよかったな〜。
男女の友情とかそういう話ではなく、ただのオタ友感。
みじんも色めいた雰囲気がないオタ友感。あの空気、とても好きでした。

 

クラスメイトが使い魔になりまして3 /鶴城東

$
0
0


クラスメイトが使い魔になりまして (3) (ガガガ文庫 か 13-3)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年4月刊。
全ケンカップル好きはこれを読め!
ケンカップル好きにはたまらない主従ラブコメ第3弾。
今回も良きケンk・・・・・・・・・・・・・・・あれぇ!?

☆あらすじ☆
言葉で言えないなら……直接行動で示して。
落ちこぼれの俺、芦屋想太には藤原千影という分不相応な使い魔がいる。
紆余曲折はあったが一応主従関係は継続中。
いや「一応」どころか、藤原は俺のことをはっきりと「好き」と言った。それが恋愛感情かはわからないけどなんて言い訳つきだが。
もはや俺も藤原のことを好きなんだろう。俺だってそれが恋愛感情かは分からないが……。
そんななか、俺の魔術の師匠・真紀美がやっかいな頼みごと(命令?)をしてきた。
「新魔術」使いの俺を手に入れたくて仕方ないらしい魔術結社「宵の明星」(今、一番危険な連中)をおびき出すために、俺と藤原で婚前旅行にでかけろと。
ふざけんな!婚前!?……そうか、俺と藤原、許嫁どうしだったんだよな(ため息)。おまけに藤原と犬猿の仲の生徒会長・三条茉莉花までなぜかくっついてきて最低。ただし「3人いっしょに温泉につかろうじゃないか!」の提案だけは、俺は一応、拒否しません。
そして案の定、肝心の囮作戦は激しくヤバい展開となり、藤原が「宵の明星」のヤツのとんでもない「謎の一撃」を食らってしまって――。
喧嘩ップル好きに贈る、「険悪時々デレ」主従ラブコメ第3弾!

以下、ネタバレありの感想です。

 

めちゃめちゃデレてる!!!!

 

デレてるんですけど!?!?!?!?

 

あの、腐り果て、捻じくれ曲がった性根をして、暴言とセクハラの権化みたいだった主人公・芦屋が・・・・・・

 

めちゃめちゃデレとるよ!?!?!?!?!?!?!?

 

どうしたの!?!?!?!?!?!?!?!?

 

1章の章題が「ケンカップル、盛大にデレる」だったのでワクワクしながら読んだのだけど、なんじゃこの破壊力抜群のツンデレのふりすらできてないデレデレ・・・!

 

すごく・・・・・・すごく・・・・・・すごく良い・・・・・・!

 

千影の方が前巻までと同じく通常営業ツンデレしてるので(デレは増大してるけどツンも普通にある)、余計に芦屋のデレデレが際立つというか。
千影ちゃんへの悪態祭りだった芦屋くんのモノローグが、なんというか、必死にツンしようとする強がりデレに満ちているというか。

 

もっかい書くけど、どうしたの!?!?!?!?!?

 

たしかに前巻で心の内を盛大に吐き出して、これで関係改善の道が見えたね!と思ったのは事実だけども。
それにしても芦屋の陥落っぷりが予想以上だったんですよ。
千影への愛がもはや隠しようもないというか(でも何かと戦っているので素直に認めないんだけど)(戦っている時点で認めてるやんけ)(なーにが「俺は千影に対して抱く感情に整理をつけていない」だ

 

いや〜〜〜なにこれ〜〜〜〜〜ニヤニヤ止まらんですな〜〜〜〜〜!

 

そもそも千影への愛は幼少期からクソ重だったわけだし(神様召喚するレベル)、一度気持ちを認める方向に振れたら急スピードで感情が膨れ上がっちゃうんですね。
前半の婚前旅行(偽)中の芦屋のモノローグとか、もはやツンツンもしていない。
芦屋のそういう気持ちの変化を千景も察知してるのか、千影は千影でド直球にデレてるし、お前らもう付き合っちゃえよ!結婚しろ!

 

今回、会長のお邪魔虫工作とか、会長VS千影とか、千影のソフィア化危機とか、本物ソフィア襲来とか、色々あったんだけど、私の脳内は芦屋のデレっぷりにひたすらぎゃーぎゃー騒いでいました。めちゃめちゃ小休止いれながら読んだ。楽しすぎて。。。笑

 

だが、しかし。

 

このラストはどういうことです? は? リセットした?
ねぇねぇ、どういうことなんです?泣いていい?

 

あんまりだよ鶴城せんせい・・・・・・鬼すぎないですか・・・・・・

 

ケンカップルの超激甘なデレを投下しまくって散々悶えさせてこの結末?なにこれ?えっ、待って、なにこれ?

 

メンヘラソフィアの方が可愛いやんって思うくらいに神様がクソオブクソなんですけど・・・・・・

 

つらすぎ。これって千影の記憶はどこまで連続してるんでしょうか。
もしも今回のデレまくってバカップルした記憶が残っていたら1巻開始時点よりも辛くない?
彼女の胸中はどうなってるの・・・・・・・

 

しかもシレっと彼女席に座ってるとはどういうことでしょうか。図々しすぎて笑う。NTRダメ絶対!
いや、待って、でもこの展開を最大限好意的に解釈すれば、またケンカップルのツンツンしたデレデレが見れる・・・のか・・・?

 

わぁぁぁぁ続きが気になるーーーー!!!!泣

 

 

お飾り王妃になったので、こっそり働きに出ることにしました 〜うさぎがいるので独り寝も寂しくありません!〜 /富樫聖夜

$
0
0


お飾り王妃になったので、こっそり働きに出ることにしました ~うさぎがいるので独り寝も寂しくありません!~ (ビーズログ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2020年4月刊。
これはビーズログ読者なら好きでしょ!って感じの、ビーズログらしいビーズログ作品でした。

政略結婚先で軟禁された王妃が、ストレス解消がてら市井にお忍びして労働に精を出す。
夜には謎のうさぎをもふって幸せを感じつつ、しかし夫である国王との関係は断絶状態。
そんな生活が続くなか、自分の命を狙った陰謀の存在を知ったヒロインは、「自分の命は自分で守る!」と決意するのだが―― というお話。

あらすじと表紙だけで何かを察知した人が結構いそう。
そんなあなたは訓練されたビーズログ読者だと思います。

☆あらすじ☆
どうせお飾りの妻ですから……昼はバリバリ給仕係、夜はもふもふうさぎを溺愛します!
ルベイラ国王ジークハルトの元に嫁いで半年、その間手を出されず事実上“お飾り王妃”となってしまったロイスリーネ。
それもそのはず、ジークにはとある呪いがかけられ、夜を共に過ごすことができないのだ!
そうとは知らず、毎晩寝床に遊びに来るうさぎを溺愛することで開き直ったリーネは、ひょんな偶然から下町の食堂で給仕係(ウェイトレス)をやることになり!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

これ、あらすじがネタバレすぎじゃないです?

本編を読んでから気づいたんですけど、あらすじの段階で「ジークハルトの呪いのせいで夜を一緒に過ごせない」って書いてるじゃないですか。
一応、本編では「ジークハルトには平民の恋人がいるからお飾りで王妃に迎えられたロイスリーネは冷遇されてる」というミスリードがあるんだけども。
実際はミスリードするつもりが全くなさそうな設定で、バレバレの誤解だからいいのかな?

 

さて、

「ジークハルトは呪いで夜を共に過ごせない」+「夜になると現れる謎のうさぎ」=うさぎの正体!!

というのはベタすぎるベタな設定だけど、正直好きです。

良いよね〜〜。ひとりで2役も3役もこなしつつヒロインの周りをうろちょろするヒーロー。
だいたいがヘタレとセットの設定ですが、もちろんジークハルトもヘタレです。
「カイン」のフランクなノリと「うーちゃん」の甘えっぷりを「ジークハルト」にも分けてやれ。

 

ジークハルトの呪いとヘタレのせいで、「ジークハルト」とロイスリーネの絡みが本当に少ないのは笑ってしまいました。
割と終盤までほとんど会話がないよね?
まぁその代わりずっと一緒にいるんだけども。
私的には「カイン」のビジュアルがとても好きで眼福だったので満足。もうずっとこちらでいればいいのに(黒髪フェチ)

 

そういえば、あとがきに「もうずっとうさぎでいいじゃないか」と書いてあったけれど、「うーちゃん」はちょっと欲望に忠実すぎません?胸にすりすりしまくってて笑ったんだけど??
あのうさぎは不埒なやつなので、はやく正体がバレたらいいのにと思いました!笑

 

一方、何も知らないまま守られ、全てお膳立てされていた箱入り娘の主人公・ロイスリーネ。
設定だけみれば「籠の鳥」と言えそうなポジションですよね。
守るためとはいえ全てがジークハルトの手のひらの上だったわけだし。
でもロイスリーネの場合、「自分のことは自分で守らなきゃ!」という彼女のメンタルの強さもあってか、主体性を失わないヒロインだったと思います。
彼女の規格外な能力も一役買ってるのか、設定の割に自分で動いている主人公だったのは良かったです。こういう子は好き。

 

何重にも込み入った事情が解けていく中で、自身に隠された秘密を知っていくロイスリーネ。
ジークハルトとの政略結婚に隠された設定やギフトの話は面白かったです。宗教や伝説と絡めたストーリーも読み応えがありました。
あと何気に好きだったのは「緑葉亭」の裏設定。
店主と女将の夫婦、めちゃめちゃツボです。特殊部隊設定と最強凹凸カプの馴れ初め妄想だけでご飯何杯もいける。この二人にもっとスポット当ててほしいなぁ(話が逸れちゃうでしょ)

 

まだ解決してない問題もあるし、これはシリーズ化する感じかな?
続きに期待したいと思いますでも「うーちゃん」の正体バレが一番楽しみだ!

 

Viewing all 1679 articles
Browse latest View live