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【WEB小説感想】夜猫ジュブナイル /佐々木匙

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オススメされて読んだのだけど、お世辞抜きでハマりました。

自分ではない別の何かに変身してしまう不思議な現象。
それによって暴かれる、自分を見失うほどの不安や不満を抱えた少年少女の憂鬱な心情。

思春期の繊細な心にそっと触れつつ、まるごと優しく包み込んでくれるかのような物語でした。

辛くてしんどくて座り込んでしまう時、「がんばれ」も「わかるよ」もいらないから、ただ誰かに隣に座ってほしいことってありません?
私の印象だけど、これはそういうお話だと思うんです。
そういう風に読んじゃったから、なんかもう刺さるわ癒やされるわで感情が大変だった。

友情と恋愛の青春小説としても大満足です。青春小説特有の終盤の疾走感が満点すぎる。

これは是非とも書籍化してほしいなぁ。手元にずっと置いておきたい小説だ・・・・・・

☆あらすじ☆
音楽が好きな高校生・三田村真也はある日、夜の散歩中にクラスで浮いた存在の美少女・長瀬夜子と出会う。どこかおかしな彼女の態度に、彼は自分が黒猫の姿に変わっていることに気づく。その日からふたりは、人が別の姿へと変わってしまう、不思議な事件に遭遇していく。

以下、ネタバレありの感想です。

 

進路調査の紙を白紙で出した夜、散歩をしていたら黒猫に変わってしまった高校生・三田村真也

彼の身に起こったのは、コンプレックスや現実逃避から「自分ではない何か」に変身してしまう不思議な現象だった。

クラスメイト・長瀬夜子に変身現象のことを聞き、そして彼女に救われた真也。
急速に仲良くなる二人は、それ以降も様々な変身現象に遭遇し、悩める同級生たちに寄り添っていくことになるのです。

 

さて何から書こうか。

まずこれ、少年少女の悩みが等身大ですごく共感できて、それだけに刺さるんです。

「石」になった女子高生の苦しさとかね、昔の自分のことを言われてるかのようだった。

「今のが好きなやつなの。好きでやったら同じになるの。伴くんにはわかんないよ。みんな個性とか自分らしさとか言うじゃん。大事だよね。でも、やりたいように自分らしくやったら他と被る人はどうすればいいわけ?」
だったら石でいいよ。考えなくていいの、楽じゃん。

石になった少女は誰なんだ?と推理するシーンで、彼女を襲った羞恥心とか苦渋とか強烈に理解できてしまった。
私もきっとそうだったから。
自分が好きなものも、得意なものも、何ひとつ個人を判別できるほどの特徴がない。
「これが私だ」という個性が自分で分からない。
たとえ私が記憶喪失の石になっても、きっと消去法で正体を探られるんだろうな、と思ってしまいました。つら・・・・・・
高校生のときとか自分の無個性さに笑ってたなぁ。笑うしかなかったから。

 

この子をはじめ、自分を見失って変身した少年少女が抱える悩みって、他人からすれば何でもないことで、大人になっていく過程で擦り切れていく痛みだとも思うんです。

だから、この瞬間こそ最大限に心が痛いんだと思う。

心の痛みを自覚して、無難にやり過ごすこともできなくて、苦しさの中で自分のことすら分からなくなって。
そうして「変身」してしまって・・・・・・

 

この「変身」が「なりたい自分」に変身するわけじゃないのも、すごく興味深いポイントなんですよね。

黒猫も、女の子も、石ころも、それになりたくて変身するわけじゃない。

「そうなってもいいや」「こうだったら良かったのかな」「自分なんてこんなんじゃん」みたいな、すごく後ろ向きな変身願望なんです。そういうところにも彼らの苦しさを感じてしまう。
どうせなら明るくなれる何かに変身できたら良かったのに。

いや違うな、何に変身しても自分は結局自分でしかないんです。
それを受け入れるための変身だから、これで良かったんだ。

 

むしろ最後はそういう後ろ向きな変身を自分の武器にしちゃうんだからすごいよなぁ。
傷つきやすい柔らかな心を持っているけれど、同時に、彼らはどこまでも強くなることができる。
その無限の可能性がまぶしくて、ああ青春小説を読んでる・・・!と心がたかぶりました。

 

そういう少し不思議な青春に、真也と夜子は関わっていきます。
遭遇した事件を探偵のごとく解決するというよりも、苦悩する同級生たちの話を友達として真摯に聞いてくれる感じ。
「寄り添う」という言葉がぴったりだと思う。
元気を出せと必死に励ますわけでもなく、気負って共感や理解を示すわけでもない。手を引いて正解に導くわけでもない。
でも迷子になってしまわないように、気にかけて付き添ってくれるというか。選択を見守ってくれる感じというか。
この雰囲気がとても心地よくて好きでした。

 

事件を解決する度に一人ずつ仲間が増えていくのも良いですよね。
最終的に4人で仲良く問題に向かっていく雰囲気とか楽しかった。比喩として間違ってるかもしれないけれどRPGみたいで。ペル○ナ的な。
4人それぞれが自分の弱い部分を見せた上で一緒にいるためか、他人の弱さへの思いやりをすごく感じるんですよね。
優しいんだ。とにかく優しいの。
怒っていても、泣いていても、優しい子たちだなって思えるんです。
特に伴くんの優しさが本当に好き。
あんなに繊細で温厚な少年が友達のために怒りをむき出しにするの、ほんと良いなって・・・・・・伴くん幸せになってくれ・・・・・・

 

優しい友情がとにかく印象に残る作品なのだけど、私的には恋愛パートもすごく好きでした。

なんといっても最初の事件が良い。
「夜に溶けたい」(この言葉から伝わるゆるやかな絶望感、大変にエモくて好き)と言って猫になった真也が、夜の化身みたいな夜子に救われるシーン。
あそこで交わされる会話がすごく好きなんです。
なにげなく教えた好きなバンドのことを覚えてくれる女の子がいたなら、それだけでもう少し人間でいる理由になるよ。十分だよ。そういうの好きだよ・・・!

 

「神秘的な転校生の美少女」だった夜子が「寂しがり屋の女の子」として真也の心を救ったところも好き。
これはどこにでもいる普通の少年少女の青春を描くんだなって思えて。
不思議なことは起こるけれど、中心にいるのは何の変哲もない高校生なんですよ。
その象徴的なシーンだと思うし、全部読み終わった今もダントツに好きな一幕です。

 

そしてこの最初の事件が、最後の事件へと繋がる構成がまた最高。
「夜猫リフレイン」っていうサブタイも良いよね。というか本作のサブタイ全部良いです。このセンスとても好き。

かつて、いなくなった真也を探すために走った夜子。
それをリフレインするように、いなくなった夜子を探すために走る真也。

青春とは最後に走るものだよな!という私の勝手な期待に見事応えてくれるクライマックスでした。もう好き以外の言葉はいらないんじゃないか?ってくらい好き。

 

真也と夜子の苦しみが「夜に溶ける」という言葉で繋がるところも好き好きの好き。
相性が良いかわからないとか言われていたけれど、十分に相性が良いと思うよ。
ていうか音楽の話であれだけ仲良く出来たら十分だよ。
冬の夜にふたりで仲良くイヤホンを分け合ってほしい。。。

 

ああ〜〜〜、書きたいことも思うところもたくさんあったのに上手くまとまらない!!
とっ散らかった感想になってしまいました・・・・・・
とにかく好き!大好きなの、これ!!

 

読んで!!!!!!!

 

 


七つの魔剣が支配する5 /宇野朴人

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七つの魔剣が支配するV (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年2月刊。
主人公・オリバーはどんな少年なのか。
それが見えてくる第5巻でした。彼の苦しみと憎悪はどこへ落ちていくのだろうか。

☆あらすじ☆
運命の魔剣を巡る魔法バトルファンタジー、待望の第5弾!
勉強と鍛錬を重ねて己を高めつつ、時には後輩たちを相手に頼れる先達としての一面も見せ始めるナナオたち。魔法生物学でグリフォンと格闘するカティに、魔道工学にのめり込むピート。ガイは迷宮で『生還者(サバイバー)』から教えを受けていた。
一方で、次の仇討ちの標的をエンリコに定めたオリバーは同志たちと共に戦いの段取りを詰めていく。しかし、迷宮に消えたピートとエンリコを追いかけ、エンリコの研究所にたどり着いたオリバーとナナオは、そこでエンリコの魔道工学の脅威と、『魔法使い』と『異端(グノーシス)』の対立の一端を垣間見ることになり──。
宿敵の一人に必殺を期すオリバーたち。彼らが戦場に選んだ場所とは——。

以下、ネタバレありの感想です。

 

次なる復讐が始まる第5巻。

今回は剣花団で何かするわけではなく「王」としてのオリバーのお話だったので、いつもよりも(いつも以上に?)どんよりと暗く、重く、憂鬱にのみこまれていくような心境になりました。

 

母の仇であるエンリコを追い詰めていくオリバー。

エンリコ先生って、すごく狂気を感じるし怖いおじいちゃんなんだけど、どこか「先生」らしさを感じる部分もあって(生徒の成長をよろこぶあたり)、なんだろうなぁ、憎めない人なんですよね。
あのけたたましい笑い方も、象徴のようなキャンディーも、背景を知ってしまうと嫌いになれなくなってしまう。

てかさ、エンリコの人間性を掘り下げてからオリバーの復讐劇に移行するとか、そういう演出は心を削ってくるんだって・・・・・・死んでほしくないな、とかちょっと思ってしまうじゃないか。
たとえ彼が作り出すゴーレムがどれだけ醜悪なシロモノなのかを知ったとしても。

 

しかしオリバーは止まらない。
オリバーの復讐心がむき出しになる終盤は、あまりの暗い熱量に鳥肌がたってしまいました。

仲間たちの屍を踏み越えて、復讐をとげたとして、彼はその先に何を見ているんだろうか。
優しい人が優しいままでいられる世界が、彼にも待っているんだろうか。

あまり優しい結末が見えてこないんですよね。嫌な予感がすごくて胃が痛い。
仲間たちはどういうタイミングでオリバーの真実を知るんだろうか。その時に何が起こるんだろう。
本当にいやだなぁ。怖いなぁ。とても憂鬱です。

 

ところで、今回はまた少し『ななつま』の世界観の広がりを知る内容でした。

異なる生命と『神』によって営まれる無数の異界。
そこからやってくる異界生物『渡り』と、『使徒』と呼ばれる異界の神の斥候。
異界の神に取り込まれた者は『異端』となり、魔法使いたちは自分たちの世界を守るために命を賭して『異端』を狩っていく――

キンバリーの恐ろしい校風の原点を知ったわけですが、さて、これがオリバーたちの物語にどう絡んでいくのか。
オリバーの母であるクロエに何かあるようだけども・・・・・・

 

続きも楽しみです。
願わくば、この物語の結末が幸せなものであると良いのだけど。。。

created by Rinker
KADOKAWA
著者 宇野朴人 イラスト ミユキルリア

 

廃墟の片隅で春の詩を歌え2 雪降らすカナリア /仲村つばき

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【電子オリジナル】廃墟の片隅で春の詩を歌え2 雪降らすカナリア (集英社コバルト文庫)【Kindle】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから

評価:★★★★☆
2020年1月刊。
王位をめぐり衝突する三姉妹の運命を描くヒストリカル・ロマン第2弾。
なかなかに胃が痛い展開になってまいりました・・・・・・めちゃめちゃ面白かったけども・・・!
本当にどういう展開になるのかなぁ。かなり気になります。

☆あらすじ☆
王政復古を果たしたイルバス国・ベルトラム朝。だが、女王ジルダとその妹・ミリアムの反目が、いまだ脆弱な王政を揺るがしている。ジルダの意を受けた寵臣・エタンの手で廃墟の塔から救い出された末妹のアデールは、夫となった幼馴染みのグレンを愛することができず、また姉たちの争いを止められない自分の無力さに苦しんでいた。そんなアデールに、エタンは一時的に国を離れるようすすめてくる。行き先は、常春の国・ニカヤ。三人の兄弟が民を治めるというその国で、アデールが出逢う人々は? そして、アデールが不在のイルバスでは、二人の姉の思惑が交錯して――!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

夫であるグレンの負傷を機に、自ら声を上げねばならないと覚悟を決めたアデール。
姉の言いなりになることをやめ、しかし姉の力にはなりたい。
国をより良くすることを考え始めたアデールは、常春の国・ニカヤに向かい、そこで様々な新しい知見を得ていくのです。

 

アデールが積極的に動き始めたことから、物語そのものも急激に変化しつつあるように感じました。
とは言え、国政に関わろうとするアデールに対しグレン含め周囲の目は冷ややかで、「足かせ」のようなものを感じるところは多々あり、今もまだ爽快な展開とは言えないのですが。
息苦しさ、生きづらさの描写が真に迫っている。

 

特に、グレンが未だにアデールを鳥かごに入れておきたい願望ダダ漏れなのがつらい。
彼にとってアデールの変化は望ましいものではなく、戸惑いだけが強く感じられる。
良き夫婦関係が築けているとは言えないし、この先で良き夫婦となれるのかも分からないんですよね。
「アデールの愛は瞬時にもえあがるものではなく、少しずつ与えられるものなのだ。」と分析されていたけれど、果たしてアデールがグレンを愛する日がくるのでしょうか。
そのためにはグレンがなぁ、、、現状ではお世辞にも魅力的な男性とは言い難く・・・・・・
グレンにとってアデールは唯一絶対の存在だけど、アデールにとってグレンは「大切な人のひとり」ですよね。それはなんとも非対称で切ない形だと思う。

 

姉たちとも他国の王とも堂々と渡り合うアデールの変化は私としては好ましいので、ぜひともグレンに変化してほしいな。
せめて、今のアデールをグレンが受け入れてくれたら良いのに。
唯々諾々と好きな女に付いていくのではなく、好きな女の未来を閉ざすのでもなく、アデールと対等な存在として並び立ってくれるといいのに・・・・・・と思わずにいられません。そういう夫婦が好きだから。

 

ただ、そもそも「夫婦」としての関係すら危うくなっているのが怖いところ。
まさかのNTR危機に震えました。ユーリ王子のことじゃなくて。
たしかにエタンの方がグレンよりもよほど少女小説ヒーローっぽいけども、いやいやいかんぞ、NTRはいかんぞ。
私はそれだけはダメなんだ・・・!超絶地雷なんだ・・・!!
土壇場で思い直してくれたから良かったけども、実際のところグレンの状態はどうなのでしょうか。
この環境において後継問題って大事だからね・・・・・・胃が痛いな・・・・・・

 

後継問題といえば、姉ふたりが抱えていた事情もようやく見えてきました。
うーん。。。これはもう愚かな母親の被害者といってもいいだろうけれど、母への反抗心とプライドから王統乗っ取りを企てているミリアムを見るに「まさに呪いじゃん・・・」となる。
まだジルダの方が正気だった。いや、王家の者としての役割を自覚して身を戒めているというか。それもまた呪いだけども。

 

エタンとの会話をみるに、ジルダは最終的に自ら破滅するつもりなんでしょうか。
揺れ動く彼女の真意はどこにあるのか。
ちょっとジルダに同情的な心境になったので、ふざけた手紙を送りつけたユーリ王子は小指の角をぶつければいいのに・・・と思いました。

 

うーん、この物語はどういう結末を迎えるんだろうか。さっぱりわからん。
続きも楽しみです!

 

幼なじみが絶対に負けないラブコメ2 /二丸修一

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幼なじみが絶対に負けないラブコメ2 (電撃文庫)【Amazon】/【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから

評価:★★★☆☆
2019年10月刊。
あ、なんか私が好きな感じの方向に入ってきた気がする??
何らかの目標に向かって皆で団結して走り出す青春ものって良いよね。
読み口も相変わらず軽快で、すごくスラスラと一気に読めました。
しかしこれ「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」としては、面白いんだけど、面白いんだけど、「嘘つき・・・!」という気持ちが膨れ上がるばかりだ(面白いんだけど!)(ギリィッ)

☆あらすじ☆
幼なじみはやっぱり負けない!? まだまだ続く予測不能なヒロインレース!
幼なじみの黒羽に告白し、見事玉砕した俺。死にたい。フラれるってこんなに辛かったのか……っていうか、あそこまでいったら普通OKするだろ! 笑顔で「ヤダ!」ってなんだよ! マジで女子の気持ちわかんねー。でもまてよ、白草は俺のことが好きなんだよな……今ならイケる……?のか……いやいやいや、ダメでしょ。もしまたフラれたらと思うと怖すぎるし。
そんなモヤモヤ爆発の俺のもとに、子役時代の後輩にして理想の妹、桃坂真理愛が襲来! 玄関開けたら1秒で「おかえりなさいお兄ちゃん!!」っていったいどこのラブコメだよ!?
末晴に芸能界復帰の話が持ち上がり、ヒロインたちの思惑が交差する、先の読めないヒロインレース第2弾!

以下、ネタバレありの感想です。

 

世紀の告白大失敗。百万回振られた男。
末晴が負った心の傷は深く、それはもう黒羽への恐怖で先祖返りするレベルだった―― という哀れみを誘うスタートを切る第2巻。

 

「みんな負ける」から「絶対に負けない」とかふざけんな!
というかヒロイン全部「幼なじみ」だから、誰が本命になっても「幼なじみは絶対に負けない」とか騙された!

などなど、1巻は「ずるい!」という気持ちが強くかったのだけど、2巻はある程度「本作はそういうものだ」という気持ちになれたので、1巻よりは素直にラブコメを楽しめたと・・・・・・

 

言いたくない!(楽しかったけど!)

だって増えてるし!幼なじみ増えてるし!!!

 

とんだ幼なじみの安売り大バーゲンセールだよ。幼なじみは一家に一台にしよう・・・・・・

まぁモモ自体は前巻ラストで登場していたので、こういう流れになることは分かっていましたが。
黒羽の妹たち(幼なじみの妹は幼なじみ)がどどんと登場したから、一気に増えた感すごいのでしょう。

 

でも「妹系幼なじみヒロイン」としてのモモはすごく魅力的でした。
モモは掘り下げもいいんだよなぁ。不遇な環境に置かれて心が荒んでいたところに、その闇を切り裂くように飛び込んできた末晴の言葉がヒーローすぎる。あれは格好よかった。
失望することを恐れるほどの「憧れの存在」になるのもわかる。
本音をカッコで閉じまくる性格の悪さも好きです。近くに寄りたくない感じがいいぞ〜〜笑

 

しかし、肝心の黒羽の掘り下げは圧倒的に足りないのに、他の女の子を先に掘り下げるんですね。
これはもう意図的なのかな。
黒羽、恋心ゆえに軍師級に頭がまわるっていうキャラ付けは好きだけど(でも記憶喪失の詐病は頭良いって言えるのか?笑)、相変わらずその原点や背景がよく分からないんですよね。
というか、冒頭でちらっと描かれた小学校時代の写真が気になるんですが??今後掘り下げる予定はある感じなのかな。
キャラは可愛いから早く掘り下げがほしいなぁ。

 

一方、前巻では不憫すぎて推しになりそうだった白草は、今回は出番が多かった割に前巻よりも「サブヒロイン」っぽい印象を受けました。
活躍はしていたけど、結局モモと黒羽が良いところを掻っ攫ってるから・・・・・・
白草、モモや黒羽に比べて腹芸ができないし素直すぎて負けそう。てかなんか本当に負けヒロインっぽい立ち位置にいない?
おいおい、幼なじみは負けないんじゃなかったのか。

 

でも強いからと言って恋に勝てるとは限らないんだよ、という言葉を信じたいと思います。
その通りだ。白草はここから逆転するんだ。きっとそう。そうだといいな。

 

色々書いたけれど、2巻の内容は個人的に1巻よりも楽しかったです。

末晴の芸能界復帰話が持ち上がり、それを中心に行われる駆け引き。
芸能事務所社長というその道のプロを相手に、CM勝負をすることになった高校生たち。
難敵を前に主人公たちが協力して立ち向かい、ひらめきを武器に絶対的不利を覆す。

こういうお話は大好きです。
まぁルール違反ギリギリっぽい感じは気になったけど(仕掛け的に難しかったんだろうけど、CM制作過程ももっと詳しく描いてほしかったな)

 

今回はざっくりとした方向性を示された感じだけど、「群青同盟」がどんな活動をしていくのか楽しみです。
哲彦と末晴の悪友コンビがどんどん好きになっているのも大きいなぁ。彼らが何を見せてくれるのか期待!

 

幼なじみが絶対に負けないラブコメ3 /二丸修一

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幼なじみが絶対に負けないラブコメ3 (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★☆☆
2020年2月刊。
三角関係というより、もはやハーレムっぽくなってきましたね。幼なじみがいっぱいだぁ。
白草のターンは嬉しいし、今回は特に心情描写が良かったと思います。もうそのまま突き進んでも良いんじゃないかな??

☆あらすじ☆
海だ! 水着だ! 逆襲の白草だ!! 混迷を極めるヒロインレース第3弾!
沖縄でMV撮影ってマジ!? 女子たちの水着姿を見るチャンス到来か……! ヤバい、ハンパじゃないラブコメの波動を感じるぜ……! って、空港に現れた白草の雰囲気がいつもと違うんだけど!? ダメだって。節操なさすぎるって。私服姿を見ただけでトキメキすぎだろ俺。
でもでも? 黒羽とは喧嘩中だしー? またしても俺に嘘をついた黒羽が悪いんだしー?? いや、分かってるんだ。きっと何か事情があったんだろう。だけど、今回、俺は悪くない! 黒羽から謝ってこない限り、絶対に許さないんだからな!
海で、水着で、白草の逆襲が始まる!? 先の読めないヒロインレース第3弾!

以下、ネタバレありの感想です。

 

記憶喪失騒動のせいで険悪になったまま仲直りできずにいる黒羽と末晴。
記憶喪失騒動のせいで恋愛レースに一歩出遅れたことに気づいた白草。

様々な想いを交錯させつつ、群青同盟は本格始動することになるが―― という第3巻。

 

冒頭の白草の権謀術数(?)がとても良かった。
こういう腹芸は苦手っぽいから、すごく頑張って頑張って考えて準備して行動を起こしたんだろうなぁ〜って伝わってくるのが可愛い。
やはり私はヒロインズのなかで白草が一番好きです。応援してる。幼なじみ+初恋の組み合わせが大好きっていうのもある。

 

あと黒羽がね、、、、ちょっと今回はイラッとすることが多くて。

正直あまり応援できないんですよね。末晴との喧嘩シーンの応酬はだいぶキツかった。
「記憶喪失で騙した理由を察しろ」って普通に腹が立たない?
あのときの末晴はすごく心配して傷ついてたのに二重に追い打ちかけてるし、その理由自体が黒羽の都合100%なので勝手だなぁ〜という印象が強い。
沖縄行きに出遅れてる間もダンス練習と勉強の準備を頑張っていたというのは好感ポイントではあるんだけど、そういう努力は他の子もしてるしなぁ。

 

うーーーーーーん、やっぱり白草の方が良いのでは?

「初恋の毒」に身を任せたら良いのでは????(「毒」って表現とても好き)

 

ただ、あまりコロコロと好きな人を変える主人公というのも私的に好きじゃないので、これで末晴が白草に振り向いたらそれはそれで複雑だったりして。リアルと言えばリアルなんだけど。
あと、このまま黒羽を好きって言い続けても「どこらへんが?」という気持ちがあって(黒羽への苦手意識高まりすぎか?)

 

なんか上手く楽しめないな・・・・・・どうなったら良いんだろうか・・・・・・
そもそもの設定的に私向きじゃない気がしてきた・・・・・・「幼なじみヒロイン」もどんどん増えるし・・・・・・

 

そういうモヤモヤを抜きにすると、ヒロインたちの思惑が錯綜し、空回り、白草一人勝ちへと繋がる今回の話は面白かったです。
ダメダメだったからこそ勝てた、というのある種の真理がある気がする(適当)
一番可愛かったですしね。まっすぐに恋を頑張ってる感じがあって。腹黒も策略も純情には勝てないんだよ・・・!

 

大正浪漫 横濱魔女学校1 シトロン坂を登ったら /白鷺あおい

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シトロン坂を登ったら (大正浪漫 横濱魔女学校1) (創元推理文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年2月刊。
『ぬばたまおろち、しらたまおろち』の白鷺あおいさんによる、新たなる魔女学校三部作がスタート!
とても楽しみに待っていました。そして今作も面白かった!

時は大正。舞台は横浜。そして今度の主役は魔女学校に通う3人娘。
レトロでモダンでとびきり可愛い大正女学生の魅力が詰まっていました。こういう雰囲気大好き!
物語は意外な方向にすっ飛んでいくのだけど、そこもまた味があって良し。
続きもとても楽しみです。

ちなみに前作と世界観は一緒だけど(時代は違う)、前作を読んでなくても問題なさそうですよ。

☆あらすじ☆
わたしは花見堂小春、横濱女子仏語塾の3年生。うちの学校はちょっと変わっていて、実は魔女学校なの。創立者のマダム・デルジュモンが魔女で、おかげでわたしたち女学生はマダムの母国語フランス語だけでなく、薬草学や占い、ダンス(箒で空を飛ぶことを、そう呼ぶ)も学んでいる。本当はもうひとつ大きな秘密があるんだけど、それはおいおい話すとして。そんなわたしのもとに、新聞記者の甥っ子が奇妙な噂話を持ち込んできた。横濱に巨大な化け猫が出没しているんですって。しかも学校の近くに……。大正時代を舞台にした魔女学校3部作開幕!

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の舞台は大正時代の横浜にある横濱女子仏語塾
そこは、人間の世界に紛れて生きる妖魅たちが、魔女になるための勉強に励む魔女学校だった――

 

前作読者ならピンとくる通り、ここは『ぬばたまおろち、しらたまおろち』の主人公たちが通うディアーヌ学院の前身で、まだ女学校だった頃の魔女学校です。

 

さて、そんな横濱女子仏語塾に通う3年生花見堂小春藤村宮子樹神透子は仲良しの3人組。
小春の年上の甥である新聞記者・花見堂周太郎が持ち込んできた「横濱の街に連続して出没した巨大な化け猫の謎」という与太話に笑ったり呆れたりしながら、3人は日々の勉強に追われる毎日を送るのです。

 

この3人を中心に、大正モダンな雰囲気が実に可愛い作品だったと思います。
小春たちの言い回しが良いんですよね〜。
先進的なんだけど古風。奥ゆかしさを目指しつつも、お転婆が見え隠れ。
それが微妙なバランスで共存しつつ、ちょっとおマセな感じがたまらなくキュートなんです。

 

そして何より本作は妖魅(妖怪)たちの学園モノなので、もちろん主役の3人は揃って人間ではありません。
一番インパクト抜群だったのは主人公の小春でしょう。

 

なんと言っても首が飛ぶ!!

 

いまだかつて飛頭蛮の少女を主人公にした作品があっただろうか。あるのかもしれないが。
私のなかで飛頭蛮といえば「うしおととら」のトラウマ妖怪なので(知らない方はぜひ読んで)、イメージのすり合わせが大変でした。
丸顔眼鏡の女の子があの勢いで首を飛ばすの・・・?「思わず」で頭を飛ばすんだ・・・?みたいな。

 

そうは言っても小春ちゃんはとても可愛いんです。そして勇敢な子。
ピンチのときの首の使い方とか、想像力の限界を試されるけれど、めちゃくちゃ格好良いんですよ。
まぁでも私も現場に立ち会ったら「お化けーっ!」と叫んでしまうと思われる。

 

大正女子の可愛さと、妖魅女子の格好よさをあわせもつ小春たち。
彼女たちは、化け猫の都市伝説をきっかけに、「ル・ジャグワール」と名付けた巨大なアメリカ豹と、夢遊病を患う車椅子の少年・若槻千秋と出会い、意図せず彼らの秘密に迫っていくことになります。

 

物語の鍵を握るのは『グリーン・マンション』。
私は恥ずかしながら未読なのだけど、邦題では『緑の館』というロマンス小説ですね。
南米の密林を舞台にしたこの小説が、大正横濱の女学生にどう絡んでくるのかとワクワクしていたのだけど、いやはや、まさかまさかの展開でした。

 

いやだって、まさか海老茶の袴に編み上げブーツの大正女学生が、密林で南米原住民に槍でつつかれて追われる展開がクライマックスだとか誰が予想できる??

 

めちゃめちゃびっくりしたよ!
しかしこれが面白かった。
『ダンス』で習得した飛行術の実践と、妖魅の個性豊かな身体能力。
その合わせ技の豪快さと破天荒さがとても楽しかったです。

 

さてさて、一難は去ったものの、残された謎が気になるラストでした。
謎の絵画や、ル・ジャグワールの正体、そして千秋くんの身に何が起こっているのか。
この三部作がどういう風に展開していくのか、続きがとても楽しみです。

 

魔法も奇跡もない、この退屈な世界で /渡風夕

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魔法も奇跡もない、この退屈な世界で (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★☆☆☆☆
2020年2月刊。
犯罪者と捜査官がバディを組むクライム・アクションでミステリ要素あり、というあらすじに惹かれて読みました。
でも残念ながら私には合わない作品でした・・・・・・

☆あらすじ☆
改造人間達と超常者達が争う23世紀日本が舞台の痛快SF犯罪アクション!
人体改造による異能者が跋扈(ばっこ)し、犯罪こそが退屈な日々を送る大衆のエンターテインメントとなった23世紀の日本──。
人々を熱狂させる『王』の称号を持つ〈殺人王〉フォルックは、敬愛する師の死体の行方を探し求めていた。
そんな彼の前に、死体の悪用をほのめかす同業者、取引を持ちかける警察組織、そして、冷凍睡眠(コールドスリープ)から目覚めて間もない21世紀人・女捜査官のヒナコが現れる。
同業者を追うべくバディを組む事になったフォルックとヒナコは『人殺し』への理念でぶつかりながらも、巨大な陰謀劇に巻きこまれていることを知るようになる─ ─そして激しい追跡劇を経る内に判明する、二人の悲しい真実とは?
謎解き+どんでん返しが連続する、痛快・近未来クライムバトルファンタジー!

以下、ネガティブな感想です。注意。

 

まず冒頭で一気に置いていかれました。

 

何が起きているのか分からないバトル。
かろうじて主人公は分かるけれど、いま誰と話しているのか、誰と戦っているのか、さっぱり状況が掴めない。
ハイペースでキャラが入り乱れるのに「彼」「男」「女」ばかりで理解させる気あるのかな?と思った。
そういう演出なのかもしれないけど、私はついていけなくて。二回目に読んでようやく意味がとれたけど初読ではきつい。

 

セリフも地の文も、内容を楽しむ前に分かりにくさを感じました。
とにかく一読では判別できないことが多い。
私の問題なのかもしれないけれど、文章の相性が最悪でした。

 

おまけに場面転換もわかりにくくて、同じ場面の続きなのか、時間が飛んで別の場面に移っているのかもすぐには分からない。

 

キャラの登場すら「いつの間に出てきた?」となるし、なんかもう、わけがわからなくて。

 

結局、お目当てだったバディの活躍が始まる前に心は離れ、それでも頑張って文字を追ってみたけど理解できず。

 

設定説明が多い点も気になりました。
近未来SFだからある程度は仕方ないんだけど、説明自体がわかりにくいので、すごく取っつきづらい。

 

うーん。。。

 

「分からない」しか書いてない感想になってしまった。ごめんなさい。

 

シノゴノ言わずに私に甘えていればいーの!2 /旭蓑雄

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シノゴノ言わずに私に甘えていればいーの!(2) (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★☆☆
2020年2月刊。
怠惰に誘う悪魔と勤労に燃える社畜のラブコメ第2弾。
1巻の表紙が膝枕においでおいでされているやつで、2巻の表紙が膝枕状態からのぞきこまれているやつですね。なるほど。順調に落とされている!

☆あらすじ☆
怠惰の悪魔と社畜リーマンのイチャイチャ問答。押しかけ甘々コメディ第二弾
相変わらず勤労への執着が止まらない社畜リーマン拓務は、どうにかして甘やかそうとする怠惰の悪魔・シノと攻防を繰り広げていた。だがとある成り行きから、アパートに引っ越してきた新たなる隣人との浮気を疑われることに!?
「信じられないわ! わ、私がいままでどういう気持ちでいたか知らないで……」
「ご、誤解ですよ! 俺は何も——」
「——シノゴノ言うなあ! この浮気者!」
ドレスをはだけさせ豊かな胸を露わに艶然と微笑む謎の美女の前で、痴話げんかを繰り広げる拓務とシノ。さらには惚れ薬という危険なブツまで持ち出され……まさに修羅場で一体どうなる甘々コメディ第二弾

以下、ネタバレありの感想です。

 

今回は勤労の天使ルルフェルが登場し、シノと拓務の仲を引っ掻き回す―― というお話。

 

勤労の天使と怠惰の悪魔の因縁はなかなか深かったですね・・・(そうか?)
労働者の権利が徹底的に保証されたホワイト天使と、人を怠惰にさせるためなら手段を選ばないブラック悪魔。
ホワイトすぎてニート化するとか最高ですね。やっぱり天使がいちばん!

 

速攻で堕落させられていたけど。

 

敵がやってきた!というより、カモがやってきた!だったような??
拓務相手では発揮しきれていなかったシノさんの本領を見せつけられたような。

 

全然やる気がない天使のくせに、いっちょ前に修羅場だけは作っていくのが笑えました。
あらすじで「浮気者!」とか罵られてるけど、拓務のことだしただの誤解だろって思ってたのになぁ。
いや実際に誤解なんだけど、証拠隠滅を画策してるあたりは浮気男のメンタリティが無駄にリアルだった気がします。いや浮気男のメンタリティなんて知らんけど。

 

そんなハプニングがありつつも、1巻同様の甘々じれったい同棲ラブコメで楽しかったです。
拓務もだいぶシノさんに落ちてますよね。惚れ薬のシーンで口走ったことはかなり無意識の本音も混じっていたのでは?そろそろ素直になるか自覚すればいいのにぃ。
はやく二人揃って寿退職しよう!(拓務はブラックから転職、シノは・・・別にそのままでいいか)

 

そんな今回の拓務のセリフで一番好きなやつがこちら。

「え、では出費が倍・・・・・・?」

 


わたしの幸せな結婚3 /顎木あくみ

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わたしの幸せな結婚 三 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから

評価:★★★★☆
2020年2月刊。
嫁姑戦争(?)勃発の第3巻。
異能バトル要素のある和風ファンタジーとしても色々と動きがありました。
鬼引きだから早く続きください!

☆あらすじ☆
旦那さまのご両親に、はじめてのご挨拶。
清霞を信じると決めて、少しだけ強くなった美世。清霞の父から誘われて彼の両親が暮らす別荘を訪ねる。けれど義母となる芙由は、激しく美世を拒絶する。心配する清霞に、美世は一人で頑張りたいと伝えるけれど——?

以下、ネタバレありの感想です。

 

清霞の父・久堂正清が突如現れたことから、前当主夫妻が住む別邸へ招待された美世。
しかし清霞の母・芙由に激しく拒絶され、美世はなんとか義母と打ち解けようと努力するが―― という第3巻。

 

きたぞ、嫁姑戦争だ!

 

美世の出自をチクチクと腐し、使用人のお仕着せを押し付けて仕事をさせ、その仕事ぶりを嫌味たらしく採点する・・・・・・王道というかベタというか「嫁姑といったらこういうやつでしょ」と思い浮かぶ通りの光景がひろがっていました。

 

一方の美世は既にある程度心が強くなっているわけだし、そもそも痛みに鈍感になるのが得意な子(それもどうなんだ)
全力で毛を逆立てて拒否反応を示す芙由に比べると、美寿の方は割と余裕をもって立ち向かっていた印象でした。
いやまぁしょんぼりはしてるんだけど、美世はしょんぼりしてるのがデフォなところがあるので平常運転というか。
それでも、過保護しそうな清霞をやんわりと押し留め、自分で頑張ると宣言する姿は「強くなったよなぁ」と感じるんですよね。
少しずつだけど、確実に変化して成長している。そういうところが好ましい主人公です。

 

そんな感じでベタに嫁姑戦争をやっていたのだけど、村で起こった異能事件をきっかけに関係改善へと向かう展開は本作らしさがあって面白かったです。
芙由さん、「異能の名家の元女主人」として「次期女主人」たる美世を認めたっていう雰囲気なのが良いですよね。
口下手でコミュ障な美世が姑を口説き落とせるわけがないのにどうするんだ?と思っていただけに、非常時での対応という切り口から二人の関係を変化させていくのは説得力がある。あのシーンの毅然とした美世は格好良かったですしね!
あと、互いに託し合う信頼関係を夫婦と呼ぶの好き。そのあり方を親世代に認められるのも良き良き。

 

まだ結婚前ではあるものの、「夫婦」として順調に絆を育んでいる清霞と美世。
今回は大きな変化がきましたね!清霞自覚!そしてキス!!
ど、ど、ど、どういう意味・・・?????とテンパる美世が可愛かった〜〜笑
美世の方は情緒の成長がのんびり進行なのでアレですが、でもそろそろ彼女も変わってくるかな。楽しみです。

 

さて、色々と家庭内の関係が動いた3巻ですが、家庭の外も大きく変動が起きています。

不穏な動きをみせる「異能心教」と、祖師・甘水直。
美世の母と因縁のある男らしいですが、最後のセリフってどういうこと??

斎森の父とは実は血がつながっていなかった?
それとも母のストーカーがこじらせまくって父親に名乗りでちゃった?

なんだその地獄の二択。美世の明日はどっちだ!
続きがとても楽しみです。

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KADOKAWA
著者 顎木 あくみ イラスト 月岡 月穂

 

りゅうおうのおしごと!12 /白鳥士郎

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りゅうおうのおしごと!12 (GA文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年2月刊。
奨励会三段リーグ編クライマックス。
いつも以上に群像劇の様相を呈していて、あちこちで死闘が繰り広げられる第12巻でした。

☆あらすじ☆
奨励会編堂々のフィナーレ!
奨励会三段リーグ。
四段(プロ)になれる者は2人だけという苛酷な戦場。そこに史上初めて女性として参戦した銀子は、八一と交わした約束を胸に封じ、孤独な戦いを続けていた。八一もまた、新たなタイトルを目指し最強の敵と対峙する。
そんな2人を複雑な思いで見守るあいと、動き出す天衣。そして立ちはだかる奨励会員(なかま)たち。
「プロになるなんて、そんな約束をすることはできない。けど――」
大切な人の夢を踏み砕くことでしか夢を叶えられない。それが将棋の世界で生きるということ。
銀子が、創多が、鏡洲が……純粋なる者たちの熱き死闘に幕が下りる。
奨励会編堂々のフィナーレ!

以下、ネタバレありの感想です。

 

今回はどこから感想を書くか迷うほど盛りだくさんな内容でした。

銀子や鏡洲さんの運命が決する三段リーグの最終局面。
そして、八一が挑むソフトと人類の限界を巡る帝位戦。

特に三段リーグの方は才能の篩が容赦ない存在感を発揮し、それによる悲喜こもごものドラマにとても胸が熱くなりました。

 

一番印象に残ってるのは鏡洲さんだなぁ。
個人的には鏡洲さんの好感度爆上げ回でした。
嫉妬や焦りから盤外戦術が横行するなかで、自分らしくあろうとする強さがとても格好良かった。
面倒見のよさや人当たりのよさが貧乏くじを引かせてばかりだとしても、その人格は誰よりも美しいと思うんです。

でも、そういう人ですら容赦なく切られてしまう酷さこそ、悲劇を際立たせるんですけどね。
なんかさ、3人目!って言われた時に「えっ、そっち!?」と思ってしまった。
どれだけ人間性に優れていようと、将棋を愛していようと、将棋の神様に愛されるわけじゃない。
努力は報われるとは限らないし、善行を積めば救われるわけでもない。
ああ、鬱になりそう。

 

そんな鏡洲さんの話は、鏡洲さんと全く正反対の存在によって少しだけ救いをみせてくれました。
鏡洲さんと創多の関係、すごくすごく良かった。
方や年齢的にがけっぷちの努力家、方やまだまだ未来がある最年少の天才。
そんな二人が真っ向勝負で殺し合い、最後には勝者が敗者の夢を担いで先へ行くんですよ・・・・・・めちゃめちゃ熱い!
王道スポ根ものみたいだった。二人の年の差がまた良いんですよね。世代交代しつつも、未来へ繋がっていく感じ。こういうの好きすぎる。

 

しかしなぁ。鏡洲さんはこれからどうするんだろう。
あとがきを読むにまだ物語から退場はしないようですが。

 

もうひとつ印象に残っているのは辛子さん。
これは良い意味じゃないのだけど・・・・・・
悪い人にみえて実はいい人だった的な印象を反転させる展開だったけど、どうにも掘り下げが足りていない気がしました。
銀子との繋がりについて色々語られていたけど、しつこく銀子の心臓を揶揄していた悪印象は変わらないような。
そもそも銀子が元気になっていたから自分も奮起したんじゃなかったのか。心配の裏返しで「他の子はみんな死んだ」とか言うの?
いや、彼の心境は色々と察することもできるんだけど、個人的にはもう少し反転後のフォローが欲しかったな、という感じ。

このあたり、今回は色んな話を混ざりすぎて一人ひとりの扱いが(他の巻と比べて)手薄だった気がするんですよね。。。

 

それはさておき。

 

竜王だの魔王だの、八一の呼び名が「なんかソレって討伐対象ではない?」という不穏な空気を漂わせてきました。
「もし、あいつの視点で書かれた物語なんてものがあったら、それはきっと・・・・・・」というセリフ、なかなかにゾッとした。

あれっ、おかしいな!?
銀子のために「勝つしかない」と戦い抜いた八一と、八一のために心臓を動かして戦い抜いた銀子―― という恋人たちのシンクロが感動的なクライマックスだったのに!?

なんだかとんでもない勘違いをしてしまった気分。
二人の心が重なったように見えて、スルリとすれ違ったような・・・・・・

 

思えば八一と銀子の対比はいつも残酷ですよね。
将棋で繋がり、才能という圧倒的な断絶を抱えた二人。
いつか指す、二人の公式戦のことだけを。
最初はロマンチックに思えた一文なのに、なんでこんな現実逃避の叶わない夢を見てるような気分にさせられるのか。はぁーーーー、辛い。

 

竜に翼を与えた天使と、竜が守ろうとした白雪姫。
この二人の関係もどうなっていくのか。
銀子はあのお祭りのとき、何を思ってあいに八一を託したんだろう。死亡フラグっぽくていやだ〜〜!
うーーーーん。怖い。まだ続くのか。今回も読むのが怖かったのに。
心臓の話はなんとなく今回で終わったようにも見えるけれど(肋骨折る勢いでセルフ心臓マッサージできるの強い)、前回のあれやこれやの伏線は未回収ですよね・・・・・・清滝師匠にまだ何か懸念があるようだし。

 

ところで、まだ付き合ってないから浮気じゃないよね?とか考えてた八一、本人に悪意はなくても押し流されて関係をもってあーだこーだ言い訳しながら浮気を続けるクソ男の素質がある。

 

奨励会編が終わり、次から新展開が始まるわけですが、私の願いは最終巻まで変わりそうにありません。

銀子ちゃん、生きて、幸せになって!!!!!

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SBクリエイティブ
著者 白鳥士郎 イラストレーター しらび

 

結婚初夜のデスループ 〜脳筋令嬢は何度死んでもめげません〜 /焦田シューマイ

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結婚初夜のデスループ~脳筋令嬢は何度死んでもめげません~ (Mノベルスf)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年2月刊。
面白かったー!

結婚初夜、謎の男に殺されてしまった主人公。
そうして始まるのは、結婚初夜の数時間を何度も繰り返し、何度も殺されるというデスループ。

犯人は誰なのか。このループは何なのか。
そして主人公は「犯人絶対泣かす!」の目標をやり遂げ、このループから脱出することができるのか。

猪突猛進脳筋ヒロイン良し、アクション良し、サスペンス良し、ラブコメ良し。
そして予想以上にタイムループ・ミステリーとして面白い作品でした。

たった数時間を延々と繰り返すのに、どんどん話は進んでいくし、これは構成が上手いと思う。
気風の良い主人公の語り口も楽しくて何度も笑いました。この主人公とても好き!

少し消化不良な部分もあるのだけど、そこらへんは続刊が出ることに期待しつつ。

☆あらすじ☆
武人一族の令嬢カトレアは、お金持ちのイケメン公爵様との幸せな結婚から一転、初夜に何者かに殺されてしまう。だが、死んだはずの彼女が目を覚ますと、何故か場面は寝室に向かう直前に巻き戻っていて…!?幾度となく訪れる最悪な死のループから抜け出せ!
小説家になろう発、大人気のサスペンス×ラブファンタジー作品が堂々登場!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

辺境の弱小貴族の令嬢カトレアに、なぜか突然舞い込んできた公爵・クリュセルドとの結婚話。
ほぼ面識はないが条件の良さにOKしたものの、当の公爵はなんだか乗り気ではないように見える。
ガッカリするカトレアは、結婚式の後でクリュセルドが友人と一緒になってカトレアと家族を侮辱しているところを立ち聞きしてしまう。
腹立たしさを抱えたままクリュセルドの主寝室に入ったカトレアを待っていたのは、謎の人物に刺殺されたことから始まる死のループだった―― というストーリー。

 

なぜクリュセルドはカトレアと結婚したのか。
なぜクリュセルドの部屋に暗殺者がいたのか。
なぜ暗殺者はカトレアを殺すのか。
この暗殺者はいったい何者なのか。

 

謎と疑問を抱えたカトレアは、何度も何度もループを繰り返します。
やだやだ結婚しない!と駄々を捏ねる瞬間から始まり、カトレアの生死を問わず夜明けと同時にリセットされるループ。
カトレア以外の記憶もリセットされ、しかも場所は嫁いできたばかりの公爵邸という実質アウェー。
身内の兄が1人いるものの、脳筋だからマトモに話を聞いちゃくれない。
そういうわけで、カトレアは完全に孤立無援状態なのです。

 

武人一族の出とはいえ本人に武術の心得はなく、頭がキレるわけでもないカトレア。
しかし彼女には不屈の魂があるのです。
何度無残に殺されようと、何度ループに失敗しようと、絶対にめげない鋼の精神が・・・!

 

このカトレアの頑丈すぎる心と、やられたらやり返す意思の強さが、とにかく素晴らしかった。
何度も殺してくる相手に、何度もループして立ち向かい、その度に相手の行動を覚え、武術経験ゼロから着実にレベルアップしていったりするんですよ。
死にゲーの攻略法じゃん。非武闘派のヒロインでそれをやるのか!笑
でもこれが本当に格好良くて、序盤の「何やってもダメ」という閉塞感がどんどん解消されていくところがたまらなく爽快でした。

 

が、ここはまだ前半戦。
謎めくループは「観測者」を引きずり出し、不親切な観測者の説明に腹を立てながらも、カトレアは「正しい未来」を求めて更にループを繰り返していきます。

 

この後半戦が更に面白かった。

誰も死なないようにしつつ、犯人を捕まえてループを抜け出すこと。
何を考えてるかよくわからないクリュセルドと腹を割って話すこと。

言わばループミステリーと結婚ラブコメが同時に進行するんだけど、幾度ものループによって強くなったカトレアは、失敗しつつも必死に諸問題を捌いていきます。
ここ、どんどん要約とショートカットが上手くなっていくから笑っちゃった。

 

なんというか、本作、かなりシリアスでハードな展開をしていくんだけど、カトレアの成長と持ち前のキャラの良さが楽しくて、ひたすら笑いながら読めるんですよね。そのバランスがすごく好きでした。
か弱き乙女にして、力強き蛮族思考が頼もしい。
絶対に泣かす!の有言実行もお見事でした。そこ蹴ったら確かに泣くわ。

 

ラブコメパートもしっかり楽しめました。
カトレア、公爵のことを泣かす前から泣かしてたんじゃん。
というかイジケ虫の公爵、可愛すぎじゃないですか?色々ちょろすぎて心配になるレベル。
カトレアの公爵に対する態度が割とひどいので、それがまた不憫を誘って好感度があがる(笑)

 

ラブコメ絡みで特に笑ったのがここ。

「カトレアさん。自分のことを好きだと言ってくれるお金持ちの男前が目の前に現れたら、貴女はどうします?」
「・・・・・・好きになる」

ここのカトレア、素直すぎじゃないです??そうだけど!わかるけど!笑

 

あと公爵をボコボコにする度に「公爵の大事な顔が!」って言うのやめてあげようよ!
大事な、のかかってる部分が正直すぎるよ!!笑

 

ホントめちゃめちゃ笑ったんだけど、ちゃんと幸せになれそうな二人で安心しました。
ラストの「私、絶対に逃げません。貴方と一緒にいます。」というセリフ、この一夜を戦い抜いたカトレアだけに説得力が満点すぎるんですよね・・・・・・

 

欲を言えば、公爵視点で馴れ初め話をもっと読みたかったんだけど、それはどうもWEB版にはあるらしい?

ミステリーパートでも、犯人の正体やループ発生の謎については明かされたものの、カトレアが狙われた理由は謎のままなんですよね。ここ、だいぶ消化不良だった。
そのへんもWEB版では明かされているのでしょうか。書籍版で続きは出るのかな。

 

うーん、気になるので近いうちにWEB版を読もうと思います。

◎結婚初夜のデスループ(小説家になろう版)
https://ncode.syosetu.com/n4466fk/
◎カクヨム版
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889975400

 

天才王子の赤字国家再生術6 〜そうだ、売国しよう〜 /鳥羽徹

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天才王子の赤字国家再生術6~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年2月刊。
売国奴志望の天才王子の快進撃を描く戦記ファンタジー第6弾。
水着回です!ラブコメの波動・・・!(いつもよりウェイン×ニニムのアレがソレして凄かった気がする!)

☆あらすじ☆
「さて、どうしたもんかな」
青い海と白い雲、燦々と輝く南の太陽を鉄格子越しに眺めながら、ウェインは牢内で呟いた。
ソルジェスト王国との一戦に勝利し、不凍港の使用権を得たナトラ王国は、新たな交易相手を開拓するため大陸南方に位置する海洋国家パトゥーラに目を付ける。
ウェインは一気に話をまとめるため自ら交渉に赴くが、アクシデントの発生で、なぜか投獄される羽目に!?
パトゥーラ諸島における覇権の象徴・虹の王冠を巡って繰り広げられる骨肉の争い。嵐のような戦火の中、天才王子が新たな傑物との出会いを果たす、弱小国家運営譚第六弾!

以下、ネタバレありの感想です。

 

相変わらず、大勝利!から赤字危機!への流れがスムーズすぎる。
序盤からめちゃめちゃ笑いました。グリュエール王に毟られてるやん。

 

そんなピンチのウェインの前に現れたトルティラが提案してきたのは、遠く離れた海洋国家パトゥーラとの交渉だった――

 

というわけで今回の舞台は海の国。というわけで水着回です。
なぜか速攻で牢屋にぶちこまれていましたが。急展開すぎて笑うでしょww

 

このウェイン投獄の経緯なんですが、あまりにも、あまりにも、ウェイン×二ニムの巨大感情が凄すぎて最高でした・・・・・・

 

反射的にニニムの身代わりになり、それによって生まれた窮地の中にあっても後悔せず、更にはこのモノローグ!

 

それが一人の少女と出会った結果、今の自分に至るのだから、解らないものだ。
人は良くも悪くも変化するという。自分もその例外ではなかったということだろうか。ただし、自分の変化については間違いなく良い変化だと断言する。なにせニニムが関わっているのだ。彼女によってもたらされた変化が、悪い変化だったなんて、そんなことは考えたくもない。
それでももし、その変化を悪だと主張する輩がいるのならば――その相手は間違いなく自分の敵になるだろう。

 

わーーーーーーー!感情が!!でかい!!!!
ウェインからニニムに伸びる矢印が巨大!!!!

 

ていうかマジでそろそろ出会い編やりません??
平淡で無味で心がなかった幼ウェインに、ニニムが何をしたんです??何があって今のウェインになったの???
気になるーーーーーー!!!!

 

めちゃめちゃ興奮してしまった。すみません。
でもこの後も水着回の本領発揮でニニムがヒロイン力をフルに発揮していたし(超かわいかった・・・・・・あんな忙しなく感情を動かすニニムって珍しいから新鮮すぎて最高だった・・・・・・)、今回のウェイン×二ニムの満足度高すぎィ!

 

さてさて。

6巻の本題はそこではなく(いやそこも大事なのだが)

 

追放された元跡継ぎにクーデターを起こされたパトゥーラの支配者・ザリフ家。
そのお家騒動に首を突っ込むことになったウェインは、劣勢の次男・フェリテを勝たせるべく知略を巡らせていくのです。

 

これがまためちゃくちゃ面白かったです。
ウェインの権謀術数はやはり読んでて楽しくて仕方ない。
特に王冠破壊の一連の顛末は楽しすぎるでしょ。本当にどこまでがアクシデントでどこまでが計算だったんだろうか。怖い男だ(そんなんだからみんなビビって貿易してくれなくなるんだよ!笑)

 

優秀だけど未熟なフェリテが、ウェインに触発されて為政者としての才覚(というかカリスマ)を身に着けるストーリーも読み応えがありました。

海師たちを弁舌でねじ伏せたシーンのカタルシス。
神から人へ、という言葉に感じる「今ここに歴史が動く」という壮大なロマン。

最高なんだよなぁ。
クライマックスで一瞬だけ兄がみせた肉親の情が、快勝に切ない影を落とすのも素敵ですよね。
最初に壊そうと言ったのは誰だったのか。それが果たされていれば、兄弟も家族も違う未来があったかもしれないのに。

 

今回も本当に面白かったです。次巻も楽しみ!

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SBクリエイティブ
著者 鳥羽徹 イラストレーター ファルまろ

 

不思議の国のハートの女王 世界の強制力で毒吐きまくり!? おかげで破滅ルートに入りそう……!/長月遥

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不思議の国のハートの女王 世界の強制力で毒吐きまくり!? おかげで破滅ルートに入りそう……! (ビーズログ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年2月刊。
乙女ゲームの悪役女王に転生したことから始まる、処刑エンド回避物語。
言葉がすべて暴言に変換される呪いを抱えたまま、なんとか破滅の運命を乗り越えようとする主人公の奮闘を描いたファンタジーです。
「不思議の国のアリス」をベースにした世界観は可愛かったし、強制ツンデレの主人公と助っ人翻訳機のヒーローの掛け合いも楽しかった。
1冊で綺麗に話をまとめつつ、もう少し続きが読みたいなぁ〜と思わせてくれる感じです。
ぜひシリーズ化してほしい!

☆あらすじ☆
「妾にたてつく者は、死刑だ!!」喋る言葉が全部毒舌!? ——悪役女王、爆誕(したら困ります)!!
国王夫妻の不在により、急遽女王の座に就くことになった私——エリノア。
そのお披露目の場で
「これよりは妾が貴様らの主となる。喜びに打ち震え、跪け!」
って、前世でプレイしてた乙女ゲームの暴言ばかり吐く悪役女王になっちゃった!!
ヒロイン・アリスが現れる前に、攻略対象の帽子屋を味方につけて処刑エンドを回避しようとするけれど……!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

国王夫妻である両親が失踪したことにより、ハートの国の女王となった少女・エリノア
その瞬間、彼女は自分が乙女ゲーム「四印(スート)のアリス」の悪役女王に転生していたことを知る。
衝撃を受けたものの、自分は自分。ゲームのシナリオも覚えている。
これならきっと大丈夫!と思い直したエリノアだったが、なんと口が勝手に動いて「エリノア」らしさ満点の暴言を吐き散らしてしまう。

 

これはゲームの強制力なのか、それとも別の何かなのか。

 

表現しようとした意思を、悪意をもって捻じ曲げて吐き出されるエリノアの言葉。
語尾が「死刑だ!」のせいで、これまで信頼を結んでいた臣下たちにも恐れられてしまう始末。

このままでは破滅まっしぐら。
焦ったエリノアは、ゲームの攻略対象であり、この世界の「ジョーカー」でもある帽子屋・フェデリに協力を求めようと決意するのです。

 

まず、エリノアとフェデリの関係性がとても好みでした。
毒々しいエリノアの言葉でも、フェデリはしっかりと本音を汲み取ってくれる。
序盤でエリノアを襲う焦燥にドキドキしていただけに、フェデリの与える安心感がすごく沁みるんです。セーフティゾーンみたいだった。
エリノアにかけられた呪いを解くために二人で動く間も、信頼できる安心感と微妙に艶を帯びていく距離感がすごく楽しくて。

 

特にフェデリの変化は良かったなぁ〜。
彼の「ジョーカー」という宿業、かなり闇が深い案件だと思うので、続刊が出たらモリモリ掘り下げてほしいものです。
だって、「個」を持たないフェデリが、エリノアへの想いのために「ジョーカー」の運命を乗り越えたらめちゃめちゃロマンチックじゃない??
冷えた世界をハートの女王に温めてもらおうよ!そこまで読みたい!

 

そんな感じでエリノアとフェデリ(というかフェデリからエリノアにのびる矢印)がすごく好きだったんだけど、クライマックスがまた最高だったんですよね。

わたしが愛するハートのスートと、そして最高の協力者に。

この一文のエモさよ。
めちゃめちゃ胸アツな展開してくれるじゃん。好きぃ・・・って唸りました。こういうの弱い。

 

キャラの話ばかりしてしまったけれど、ストーリーや設定も面白かったです。
「不思議の国のアリス」になぞらえたエピソードの数々が楽しかったし(小麦粉の使いみちに笑った)、個人的には「なぜ乙女ゲームの世界に転生したのか」をちゃんと説明しようとする意気込みを買いたい。
そういうものだから、でスルーしないのポイント高い。
フェデリの「ジョーカー」という役割と絡めつつ、そこらへんをしっかり説明してくれたのは本当に良かったと思います。

しかしこれ、一応は話がまとまっているけれど、続けられますよ

ね?
エリノアの呪いの件とか、押しかけペット(!)の問題とか残ってますし。ハートの国以外の国の話も読んでみたい。
あと乙女ゲームヒロインの代わりに出てきたアレフとか(突然のBLゲー疑惑に笑った)、なんだか負けヒーロー的美味しさを匂わせてくる騎士ジャックとか(王女時代からエリノアを見守り続けてきた彼のモノローグすごく好きだった)、そのへんも続刊で更に掘り下げてほしい感じ。

 

ポテンシャルはばっちりです。あとはシリーズ化するだけ!
応援しています〜!

 

妹さえいればいい。14 /平坂読

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妹さえいればいい。 (14) (ガガガ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから

評価:★★★★★
2020年2月刊。
ラノベ作家たちのラブコメ群像劇、ついに完結!
とても面白かったです。いや本当に面白かった。
びっくりするくらい真っ直ぐ刺さって、なんだか表に引きずり出されたような気分になりました。
何もかも満足!

☆あらすじ☆
青春ラブコメ群像劇の到達点、堂々完結!!
「アンチも編集者も俺以外の売れっ子も全員爆発しろ!」作家としてブレイクし、愛する人と結婚し、父親となっても、人は(特に作家は)そう簡単に聖人君子のように生まれ変わったりはしない。羽島伊月は今日も荒ぶりながら小説を書く。そんな彼を生温かく見つめる妹の千尋も、報われない片想いにいい加減疲れていて――。伊月、千尋、京、春斗、那由多、アシュリー、海津、蚕、刹那、撫子……時を経て大きく変わったり変わらなかったりする主人公達が、それぞれに掴む未来とは!? 青春ラブコメ群像劇の到達点、堂々完結!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

あれから3年。
売れっ子作家になった伊月は、妻の和子と息子・宙を何よりも愛する良きパパとなっていた。
しかしまたも襲われるスランプ。今の伊月に、何が足りていないのか―― という最終巻。

 

「妻の和子」と地の文でサラッと書かれるたびに、毎回律儀に「誰っ!?」となっていました。
夫を愛し子供を愛し家事をこなし家庭を守る、良き妻にして良き母。もちろん服は着ている。誰?????

 

あまりのキャラ変(呼び名すら変わった)に、なんだかヒロインが交代したみたいな錯覚に陥って、ちょっと寂しい気持ちになったのですが・・・・・・

 

なるほどなるほど。そういう意図だったんですね。

 

『妹さえいればいい。』という伊月の尖った情熱が、那由多への想いから『主人公になりたい』という切望へと変わり、掴んだ幸せをもって辿り着く『明日の君さえいればいい。』という境地。
それは、「和子」へのラブレターを超えるために書く、「那由多」へのファンレターでもあって・・・・・・

 

なんかもう構成が美しいと思った。
このシリーズが描いてきた伊月の成長と変化を、その中で揺らがない想いを、最後にこんな形でまとめるのかと。

 

だってさ、クライマックスの伊月の演説、最高すぎません??

 

私は伊月たちの青春群像劇と赤裸々なラノベ業界の話を外野から読者として楽しんでいたはずなのに、最後の最後に伊月によって物語の中に引きずり込まれた。
「愛せる主人公になることを、諦めないでほしい」という言葉に、とても深く心を刺されてしまった。

 

こんなのずるいでしょ・・・・・・そして格好良すぎる。
「かかってこい」と挑発されているのに、なんだかエールを送られた気分になってしまうんだけど。もうさぁ、なんなのこれ・・・・・・

 

相変わらずネタがぶっ飛んでるし(栞ちゃんの性癖は育てる方針なの?大丈夫???)、新人賞とネット小説の関係とか気になる話してるし(出版社は新人賞作家を育てる気があるのかもっと詳しく聞いてみたいな、私も!)、でもなんだか最終巻とは思えないのんびりしたスタートだなぁと思っていたのに。
こんなに熱く盛り上げて終わるなんて思わなかった。

 

でもすごく満足です。
ページ数的には短かったけれど、本当に良い最終巻でした。

 

で、半分くらいページが余ってるけど次世代の番外編?ふーん??と思って読み始めたら、これがなかなか面白い。
伊月たちの息子・宙を中心とする幼馴染三角関係と、青春のボーイミーツガール。
まぁ病気ネタはちょっとベタすぎて好きじゃないかな。
でも優羽のコンプレックスまみれの片思いは非常に好きなやつ・・・・・・とかドキドキしながら普通に読んでいたので、オチに笑いました。
そういうことするシリーズだよね!やたら細かい豪邸の描写を思い出して更に笑った。

もうほんとさぁwww

 

最後まで楽しかったです!
平坂読先生の次回作も楽しみに待っています。

 

さよなら異世界、またきて明日 旅する絵筆とバックパック30 /風見鶏

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さよなら異世界、またきて明日 旅する絵筆とバックパック30 (ファンタジア文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年2月刊。
すごく良かった・・・!
滅びかけた異世界。そこで出会い、共に旅をするようになった少年と少女。
たくさんのものを失って、この先に希望があるのかも分からなくて、それでも生きていくことに意味はあるのか。
二人の旅を通して描かれる、孤独と優しさがとても印象に残る物語でした。
他に何もないからこそ、大切なことが鮮やかに浮かび上がるのかもしれません。
本当に良い旅小説だと思う。とても面白かったです。ぜひシリーズ化してほしい!

☆あらすじ☆
旅に出よう、君を助手席に乗せて。この滅びかけた異世界で。
滅びかけた異世界に迷い込んだケースケは、ハーフエルフの少女・ニトと出会う。彼女の母親が遺した手帳に描かれた“黄金の海原”を探し、二人は辛うじて生き残った人々たちとの出会いと別れを重ねてゆくのだが——。

以下、ネタバレありの感想です。

 

多くの人が結晶化し、滅びに瀕した世界。
そんな世界に迷い込んでしまった恵介(ケースケ)は、ヤカンと名付けた蒸気自動車で、あてのない旅を続けていた。

どこに行っても誰もいない、何の馴染みもない異世界。

そんな場所で恵介が抱える孤独と絶望は想像するに容易く、それだけに、ハーフエルフの少女・ニトと出会えた瞬間の彼の喜びも理解できてしまうのです。

滅びかけの異世界に来てしまった少年と、滅びかけた世界に取り残された少女。
これは、出会ったばかりの二人が旅を通して、少しずつ互いの絶望と孤独を癒やしていく物語なのだと思います。

 

完全に人類が滅亡したわけではなく、生き残った人々が僅かながら存在する。
そんな数少ない生き残りとの出会いを重ね、旅を続けるために別れを繰り返していく恵介とニト。

まさに「さよならばかりが人生」だけど、この世界での「さよなら」はずっと意味が重いんですよね。

広い世界で再び巡り会えるかわからない。
さよならと別れた人が、あるいは自分が、いつか結晶になってしまうかもしれない。
そうでなくても、何もない世界に絶望して、自ら死を選ぶかもしれない。

暗い想像はどこまでも広がるけれど、すべての感情を「さよなら」の一言に込める。
だからとても寂しくて、切なくて、無性に愛しい気持ちになるのでしょう。
だってそれは、傍で共に旅を続ける「隣にいる人」の存在がどれだけ価値あるものなのか、深く感じさせるものでもあるから。

 

二人は旅のなかで様々な人と出会い、彼らのドラマを知っていくのだけど、私は老夫婦の話が特に好きでした。
たくさんのものを失って、今も失い続けていて。
それでも「新しい思い出を作れることがとても楽しい」と笑える姿が鮮烈だったんですよね。大事なものを見失わない人だと思ったし、その境地に至るまでにどれだけの葛藤や苦しみがあったのだろうと・・・・・・

 

世界が崩壊しても仕事を続けたヴァンダインさんの生き方にも感銘を受けたものだけど、多くのものが失われた世界だからこそ、人は大切なものを見極めることができるのかもしれません。
あるいは、大切だと思う何かを見つけた人だけが、今なお生きていられるのかもしれないけれど。

 

様々な人と出会いながら、恵介とニトの関係も少しずつ変わっていきます。
出会ったばかりの他人で、「旅の道連れ」としか言いようもない、少しそっけない距離にいる二人。
そんな彼らが、道中で少しずつ互いのことを語り、ごはんを食べて、様々な景色を一緒に見て。
「終末世界での旅」という非日常な環境にありつつ、恵介とニトが送るのは、ある意味とても日常的な営みだと思うのです。

 

特に食事風景は飯テロ本かと思うくらい丁寧に(そして美味しそうに!)描写されていたのだけど、あれこそ二人が「今を生きている」ことの象徴的な営みだと思いました。
すぐそばに死がある世界だからこそ、美味しそうに食事する姿に命の輝きを感じる。そのコントラストが実に鮮やかでした。

 

そういう日常の風景が、最後に二人を繋げたことも素晴らしい。

日々の何でもないことを、誰かと一緒にできること。
この滅びかけた世界で、それがどれだけ価値のある、大切なものなのか。

こういう小さな営みの繰り返しこそが、終末にある世界において希望につながるのかもしれないし、私はそこに光を見ました。

 

少なくとも、恵介とニトは一緒に居続ける間は、一緒に生きていけるのでしょう。
そう思うだけで、なんだかとても心があたたまるし、救われた気持ちになるのです。

 

本当にとても良いロードムービーでした(いやロード小説か?)
ぜひシリーズ化してほしいなぁ。期待しています。

 

それにしても「さよなら異世界、またきて明日」って語呂がいいタイトルですよね。さよなら三角またきて四角・・・・・・


魔法世界の受付嬢になりたいです3 /まこ

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魔法世界の受付嬢になりたいです 3 (アリアンローズ)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年1月刊。
ケンカップル×お仕事ファンタジー完結巻。
様々な伏線が回収され、実にスッキリと読み終わることができました。
喧嘩ばかりしていたナナリーとロックマンの関係も最高の形で着地。とても面白かったです。

☆あらすじ☆
オルキニスの騒動も落ち着き、『受付のお姉さん』も二年目に入ったナナリー。後輩ができ新しい業務も増え、順風満帆。だけど城を襲った魔物が残した「シュテーダル」の謎は未解決のまま、各国からすべての型の魔法使いが集う競技会・ウォールヘルヌスの開催が決定する。
そんな中、ロックマンから魔物がナナリーの属性である「氷型の血」を狙っていると警告されて!? そのうえロックマンとの腐れ縁に実は理由があり……。
「私、喧嘩ばかりだけどロックマンに一度も“嫌い”って言われてない──」
前向き女子の異世界おしごとファンタジー、いよいよクライマックスへ!

以下、ネタバレありの感想です。

 

完結巻ということで、色々な謎が明らかになりました。

 

魔法型を娘に教えていないナナリー母の意味深な正体。
城を襲撃した、人語を解す魔物の正体。
そして、ロックマンがなぜナナリーに執着しているのか。

 

ナナリー母の正体は面白かったと同時に、そのロマンチックな禁断愛にときめいてしまいました。
お父さんが恐妻家で愛妻家になるわけだわ・・・・・・
そうなるとナナリーの身分もぐっと向上するわけで身分差問題も解決か。シンデレラストーリーだなぁとか一瞬思ったんだけど、ナナリーがしっかり拒否したのは彼女らしくてニッコリ。ちゃんとタイトルに戻る結末は読んでいて気持ちが良いものです。

 

そして人語を解す魔物「シュテーダル」の問題についても一気にクライマックスへ。
創世紀の頃からの気合入ったストーカーに震える・・・!
それでも強敵は強敵。
世界崩壊の危機を前に、仲間たちが傷つき、倒れ、それでも支え合って戦い抜いたラストバトル。
まるで王道少年漫画のような熱い展開だったと思うし、その中でナナリーが恋に気付く恋愛小説ならではのカタルシスがありました。いいとこ取りですね!楽しかった!

 

てか、そう、ついに、ナナリーが、気づいちゃったんですよ!!!

小さい頃からの憎々しい感情が一気に反転した瞬間。なんだあのオセロひっくり返したみたいな気持ちよさ。最高でしょうか。
好きにならない奴がアホではないのかっていう、負け惜しみみたいなモノローグも最高。なんといっても惚れたものが負けだからね!笑

 

と言っても、その理論でいくならロックマンは最初から負けているわけですが。

 

ロックマンはいつから、なぜナナリーを好きなのか?という疑問へのアンサーもしっかりあったので私は大満足です。
なんというか、タイムリープ系ロマンスの亜種みたいな展開ですよね。
ケンカップルがケンカップルになったのはナナリーのせいじゃん、と思ってしまった。
そして、それはロックマンにとっては繋がりを持ち続ける理由だったと・・・・・・
受付嬢が「繋がる」仕事であることを考えれば、ナナリーはどこまでも受付嬢なのかもしれない。天職ですね。
魔法世界ならではの展開で、かつ、魔力暴走ネタがここに持ってくるための伏線だったのかというアハ体験も面白かったです。

 

そこでもう一つ面白かったのがこれ。

 

「普通に考えてみて変だとは思わないか。女を殴り飛ばしたり髪を燃やしたり、貴族に生まれた男がやることじゃない」

 

たしかにーーーーーー!!

 

ナナリーも同じくらい殴る蹴るの暴行を返していたから、男女平等ケンカップルの演出かと思っていました。
いやぁ普通に事情もなく人を殴ったらいかんよね。事情があってよかった(?)

 

色々な誤解と事情を知り、ようやく素直になれたナナリー。
そうなると気になるのはロックマンガチ勢のマリスの反応なんですが、あまりにも、あまりにも、良い子すぎて彼女の幸せを願わずにいられなくなりました。
マリス、ロックマンのこともナナリーのことも大事に思って見守ってきた人だから、きっと色々すべてを察してたよね。
引くべきところでサッと引く潔さと気高さが格好良すぎました。幸せになって!!!号泣

 

最初はどうなることかと思っていたナナリーとロックマンの関係も無事にハッピーエンドに着地。
番外編の「微睡みの朝」がとても良かったです。「今日はやけに素直だな」と言葉的に、きっと何をするにも喧嘩と勝負でコミュニケーションを取っていくのは変わらないんだろうなぁ。

 

楽しいシリーズでした。
まこさんの次回作も楽しみです。その前に前作を読んでみよう!

 

小泉花音は自重しない2 美少女助手の甘デレ事情と現代異能事件録2 /高町京

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小泉花音は自重しない2 美少女助手の甘デレ事情と現代異能事件録 (GA文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★☆☆
2020年2月刊。
お姉ちゃん系甘デレ(強制)ヒロインと、ハンデ付き最強主人公の現代異能バトルアクション第2弾。
1巻同様、花音のウザかわっぷりが良かったです。れー君へ愛が痛い(色んな意味で)
今回の事件も面白かったんだけど、もう少し掘り下げがほしかったかなぁ。なんか少し薄め・・・?
でもキャラと設定は相変わらず良いので次巻以降の盛り上がりに期待します。

☆あらすじ☆
イチャ甘ヒロインと最強主人公コンビのバディアクション第2弾!!
発電能力を操る小泉花音と俺は異能の力が絡んだ事件を追う捜査官ストレイドッグ。精神観測者の澪ちゃんが弟子入りしてから、花音の愛がますます重いんだが……
「れー君のパートナーは、この花音お姉ちゃんだからね!」
祭りで賑わうN市内では、特異犯罪組織に対する警戒態勢が敷かれていた。先日の事件で《剣帝》の秘密が撮られた動画がネットに出回っているし、街で助けた謎の男も気がかりだ。油断していられないぞ花音。
「きゃああぁあ! 私のことで怒ってるれー君超絶かっこいい!」
おいおい、空気を読んでくれ……
イチャ甘ヒロインと最強主人公コンビのバディアクション第2弾!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

最強の犯罪抑止力でもあった《剣帝》の弱体化を示す動画が拡散され、異能犯罪者の暗躍の気配が漂い始めたN市。
パトロールを委託された「れー君と愉快な仲間たち」は、他のエリアから侵入した特異犯罪組織と対峙することになるが―― というのが2巻のストーリー。

 

今回も花音のれー君愛が強烈でした。
愛の重さが痛い。物理的にも精神的にも。
そんなんでも「可愛いなぁ」とか「勝手にやってろ!」とか思えてしまうのは、二人の間にある絆を前巻でよく知ったからなのでしょう。
ぶつぶつ言いつつれー君が花音を大事にしてるのは読者にも花音本人にも筒抜けですからね!
そこまで花音を甘やかしたのはれー君本人であることは否めないので、これはもう責任もって引き取るしかない・・・!

 

そういう二人の間に澪ちゃんが弟子入りすることで何が起こるんだろうと思っていたら、なんというか、イチャイチャ(強制)のダシにされてる感じ?
澪ちゃんが大人の対応をとってくれてよかったよね・・・・・・でも花音も澪ちゃんのことを猫可愛がりしてるので、三人の関係がほのぼのしているのが良いなって思いました。なんか澪ちゃんの扱いって年の離れた妹みたいな雰囲気ある(しっかり者の妹ですね)

 

というわけで、3人組となった「れー君と愉快な仲間たち」。
N市に入り込んだ《集団(ネームレス)》という異能犯罪集団を調べていくうちに、3人は強力な異能者と行き当たることになるのです。

 

弱点動画が拡散され、綿密に戦略を練ってきた強敵と対決するという展開は面白いと思いました。
こちらへの対策はばっちりなのに、敵の情報はほぼないという圧倒的に不利な条件。
頼りになるはずの澪ちゃんも罠にはめられるジリジリとした緊張感が良い。複数対複数の入り乱れた戦闘にもワクワクしました。

 

ただ、敵リーダーと恋人の話を冒頭や途中で意味深に描いていた割に、あっさり終わったのが少し物足りなかったかな。
灯火さん、回想エピソードと設定だけは立派に描かれていたのに、なぜかキャラ立ちがいまいち印象に残らない不思議・・・・・・
あの敵カップルの話は結局どこに持って行きたかったのか、何を描きたかったのか、正直私にはよくわかりませんでした。

 

一方で、玲紀と花音のバディな活躍は今回も良かったです。
あれだけ花音の謎テレパシーに文句言ってるくせに、ピンチではしっかり通じ合うところを見せるあたり、花音の言う通り愛しか感じないんですよね〜〜〜笑
玲紀が自罰的な思考に陥りそうになったところを、花音が励ますために無理やり明るく振る舞って、その真意ごと玲紀に見抜かれてるシーンとか超好きだった。そういうところですよ!

 

それはさておき。

今回の話は猫化状態の問題解決に微妙につながる感じ、なんですかね?
ブースターの件は結局謎のままですが。
続刊で何か動きがあるのでしょうか。期待したいと思います。

 

そうだな、確かに可愛いな /刈野ミカタ

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そうだな、確かに可愛いな (MF文庫J)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年2月刊。
めちゃめちゃ良い・・・・・・
表紙とあらすじから想像していたものとは微妙に(?)違う内容だったのだけど、これは良い・・・!

明るくて笑い上戸な後輩女子と、訳アリで挙動不審な先輩男子の恋人なりたてラブコメ。
初々しくて可愛らしいイチャラブなんだけど、先輩からヒロインに向けられた愛が強すぎてニヤニヤが止まりません。
ヒロインもすごく良い子なんだよなぁ。これは惚れるってなる。むしろ私が惚れる。この子は天使ですか?

もっと掘り下げてほしいところがあるし、ぜひぜひシリーズ化をお願いします。応援してます!

☆あらすじ☆
ちょいウザ後輩彼女とワケありクーデレ先輩彼氏のお前らさっさと結婚しろ系ラブコメ!
この小説はイチャ甘ラブコメ——彼氏彼女の交際が始まった直後の二人の初々しい日々の記録だ。
彼氏は渡世戒理。17歳、高校一年生(二留)。
二年間の眠りから目覚めたばかりのワケありの少年。
彼女の名は桑折那乃。16歳、高校一年生。
オシャレと面白いことが好きなちょいウザ美少女。
そんな二人の毎日は……大体こんな感じ。
「せーんぱい♪ 今日のあたし、トクベツ可愛くないっすか〜? ほらほら、褒めてくれても——」
「そうだな、確かに可愛いな」
「〜〜っ」
「桑折?」
「……そーゆうとこっすよ、先輩!!」
これは少しズレた先輩の無自覚デレに後輩彼女が赤面しまくるだけのお話。
ヒロインレースも破局の危機もない、尊死必至なラブコメ。

以下、ネタバレありの感想です。

 

二年間、昏睡状態にある先輩・渡世戒理を見守り続けてきた女子高生・桑折那乃
ようやく目覚めた戒理と想いを確認し合った那乃は、彼と付き合うことになり、仲良しでラブラブな毎日がスタートするのだった――

 

というのは、あらすじから読み取れる部分なのだけど、意外だったのはこの次。

 

なんと戒理は昏睡状態だった2年間、彼の体感では20年もの間、意識だけを異世界に飛ばして大冒険を繰り広げていたのだという。
その証拠に戻ってきた現実世界でも魔法を使いこなし、代わりに現代日本の常識を置いてきてしまった戒理。
そんな戒理を、同級生になった那乃は懸命にフォローしていくことになるのです。

 

そう、異世界帰り!

 

私はあまり事前に情報収集するタイプではなく、本作はイラストの可愛らしさとキャッチコピーだけで買った本だったので、冒頭から不意打ちの展開すぎて笑ってしまいました。

 

さて。

 

そこから始まるのは、「現代日本の高校生」という自分に馴染めなくて暴走する戒理の奇妙奇天烈トラブル祭り。
元々こちらの世界の人間なのに、なぜか逆異世界召喚ラブコメみたいになってる・・・!もしくはフルメタの相良宗介!
異世界の常識と現代日本の常識の齟齬に戸惑いまくり、たくさんの失敗を重ねていく戒理の姿は、少し可哀想だけどすごく面白かったです。那乃に指摘される度にしゅんとする戒理先輩、可愛いすぎか?

 

で、そんな戒理の手助けをするのは彼女である那乃の役割なんだけど、これがまためちゃめちゃ良かった。
だってこの子ずっと笑ってるの。嫌味な感じは欠片もなく、変なことをする戒理と一緒にいるのが楽しくて楽しくて仕方ない感じ。
何をやってもおおらかに受け止めて、笑い飛ばして、気にせず次にいきましょー!って励ますんですよ。可愛い。可愛すぎる。このギャル、天使すぎない?
そもそも恋人でもない男を2年間健気に見守り続けただけでもポイント高いのに。これは戒理くんも惚れ込みますわ・・・・・・

 

色々と(可愛い)トラブルを起こしつつも仲良く恋人生活を満喫する戒理と那乃。
その合間に戒理が異世界でどんな経験をしてきたのか、主に女性トラブル方面の話がたくさん登場するんだけど、それら全部「いかに戒理が那乃を強く想い続けていたのか」という説得力の補強ばかりなんです。
「ヒロインレースも破局の危機もない」というあらすじに偽りなしでした。付き合う前どころか物語が始まる前から那乃一強だった。
おかげで何度も何度も「戒理先輩、那乃ちゃんのこと大好きすぎかよ!」と悶えるハメになりました。これが尊いということ・・・・・・

 

そういう戒理の気持ちは全く隠されていないし、オブラートにも1ミリも包まれていないので、正面からぶつけられまくる那乃は赤面して動揺しまくり。
これがまた可愛くて可愛くてたまらんのです。

 

那乃ちゃん、見知らぬ異世界の女たちに対して優しいのも魅力的なんですよね。
彼女たちの気持ちを無下にしないのがすごく良い。呪いのペンダントの件とかね。
必死に嘘をついた女の子には同情しつつ捻り出した「名案」がとても素敵でキュンキュンしました。
それは恋人としての余裕も少しはあるんだろうけど(モヤっとはしてるし)、でも彼女の根っこにある優しさがすごく伝わってくるんです。
「それならシャルティニアさんのつけててもセーフにできるし」と考えてるところとか。やっぱ天使か〜〜??好き!!!

 

「異世界帰り」という飛び道具を十分に活かしつつ、高校生カップルの初々しいイチャラブをたっぷり楽しませてくれる作品でした。

でも、できれば2年前の二人がどんな感じだったのか知りたかったなぁ。
異世界行く前の戒理と那乃はどういう流れで惹かれ合っていたのでしょうか。気になるー!

そのへんは、あとがきに「新シリーズ一巻」と書いてあることだし、続刊に期待します。
もっと掘り下げつつ、二人のイチャイチャを堪能できたら嬉しいな。楽しみに待っています!

 

おいしいベランダ。 8番線ホームのベンチとサイダー /竹岡葉月

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おいしいベランダ。 8番線ホームのベンチとサイダー (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年2月刊。
神戸編スタート!
関東から関西へエリアが移動したことで、登場する食の雰囲気にも変化がでてきました。
食文化の違いってだいぶ面食らいますよね。あって当然のものが存在しない衝撃・・・・・・
就活本番でまもりのメンタルもやばやば状態。
今回もとても面白かったです。

☆あらすじ☆
プロポーズからの神戸編スタート! しかし関西でまもりの就活は逆境に!?
大学生の栗坂まもりと、お隣に住む亜潟葉二は恋人から婚約者に! 葉二からのプロポーズを受け入れ、卒業後はまもりも神戸で暮らすと決めたのだ。
次は結婚挨拶にお互いの実家へ。さっそく栗坂家を訪ねて、年末には亜潟家へ向かう……って、行動が早いですね葉二さん!
同時に、まもりは二人の暮らしと目指す仕事の両方を叶えるため、関西で再び就職活動に挑むことに。
神戸のおいしい食材と料理で、気合いは充分——と思いきや、亜潟家での結婚挨拶にも、就活戦線にも異状が発生!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

ついに婚約したまもりと亜潟さん。
まずはそれぞれの実家に挨拶・・・・・・という段での亜潟ママ家出に笑っちゃいました(いやその前にまもりの大仏火傷で笑ってたか)
自分の子供が一番良くわからんと嘆く元教師とか、なんだか不憫だったけど、お父さんの血が濃いんだろうなぁというのはすごく伝わってきました(笑)
でも皆いい人ですよね。兄嫁さんに「まずはそれを言うべきだった」で亜潟ママの好感度爆上げ。これは嫁姑問題の発生率ゼロですよ。

 

そんな通過儀礼を経てからスタートした神戸編。

 

まもりが就活に苦労するのは、ある程度予想していたことではあったものの、あれはメンタルが死ぬよなぁ。
まもりが追い詰められていく一方で、亜潟さんは大人の余裕全開だったのが印象的でした。
婚約にこぎつけたことでかなり安定しましたよね、この人。
あとがきでは「言動がかなりおめでたい人」と切り捨ててあったけど、まぁ、そういうのがバランサーになる時も、ある、気が、する・・・?(同棲は逃げ場がないというのもその通りだと思うし)(そもそも一人暮らしじゃない限り家が逃げ場にならないことは割とある)

 

まもりの就活の行方も気がかりだったのだけど、それ以上に気を引いたのが関西の食卓事情。
スーパーで「あれがない!」となるシーンは遠方への引っ越しあるあるではないでしょうか。
引っ越してはじめて「あれはローカル食材(食品)だったの!?」と知ることの衝撃。
そしてスーパーに見慣れぬものがたくさん並んでる違和感。ちょっとワクワクして楽しいやつですね。
あと、すき焼きの作り方とかも面白かったです。肉は最初に焼くものです。

 

そんな感じでカルチャーショックだったり、就活地獄だったりと、なかなかに大変な出足となった神戸編。
「神戸編」とわざわざ新章をアピールするということは、まだまだシリーズは続くのでしょうか。
まもり社会人編?いや次巻はまだ大学生かな。遠距離恋愛はどれくらい続くのか。

 

色々と気になりますが、続きも楽しみです。
しかし志織さんの出番が減るのは寂しいなぁ。漫画だったら同じ顔使って別人扱い、みたいな新キャラが出てきたけども!

 

転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す2 /十夜

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転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す 2 (アース・スターノベル)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★☆☆
2019年11月刊。
規格外な新米騎士の破天荒な騎士団ライフ第2弾。
1巻に引き続き、フィーアのすっとぼけキャラがとても良いです。彼女に振り回される騎士団長たちの胃が心配だよ。
読んでる間はとても面白いんだけど、そろそろこの物語の方向性が見えてこないかな?とも思います。

☆あらすじ☆
天と地の全ては、ナーヴ王国黒竜騎士団と共に!
念願叶って新人騎士になったフィーアが配属されたのは、エリートぞろいの第一騎士団。
聖女の力を隠し普通の騎士としておとなしくしているつもりが、
思わずベテラン騎士を指揮して魔物を討伐したり、うっかり泉の水を全部回復薬に変えちゃったり…⁉
そんな時、長期遠征からクェンティン第四魔物騎士団長が帰還し、
「星降の森」で黒竜が目撃されたとの情報が!
フィーアたちは探索のため出発するが、
そこで明かされるザビリアの壮絶な過去。そして――。
小説家になろうで、2019年6月~現在ジャンル別年間第1位の超人気作!!
本編大幅加筆&書き下ろしエピソードも大ボリュームでお届け!

以下、ネタバレありの感想です。

 

騎士団のなかで、徐々にその異質さが認知されつつあるフィーア。
とはいえ本人が根っからの善良気質&裏表のないトボケたキャラクターなので、「お前は本当に何なんだよ!」と思われつつも愛されポジションを確保しているのが流石です。

 

今回はやっぱり第四魔物騎士団長クェンティンの反応がよかったなぁ〜
一番事情がわかるひとが一番の変人扱いされている不憫さ。ふむ。なんか私、クェンティン推せそうな気がする!
新米騎士にへりくだって「様」呼び、緊張しすぎてM疑惑。そのままフィーア女王様の下僕になるしかない勢いに笑うんですが。大丈夫か。クェンティン団長の将来を心配してしまう。

 

そんな団長の奇行にドン引きのフィーア。
お前が引くのかよ、と思うけど、大の大人(しかも上司)にあんな態度とられたら引くよね。
むしろ引きつつ普通の対応とれるフィーアはやっぱり大物なのでしょう。

 

で、今回は挙動不審なクェンティン団長を皮切りに、フィーアの従魔ザビリアの正体が一部の上層部にバレてしまうという内容。
フィーアの正体も察してはいるようだけど、そこはまだ踏み込みません。流石にあのフィーアを見たらなぁ。
ザビリアの正体だけでも大事ですしね。
ところで、このザビリアの正体のくだり、クェンティンの説明が何度も重複しているのが気になりました(黒竜にも自己治癒できない怪我を直せたのがおかしい云々)。
色んな人に同じ説明をしていくのは良いんだけど、読者には1回でいいかなって。

 

一方、当のザビリアについては、彼の生い立ちからフィーアとの出会いまでのストーリーが明らかに。
ザビリアの孤独と、フィーアへの執着がリンクしていく流れがとても良かった。
いやぁ、こういう過保護な執着って大好物だし、2人の命が繋がる一蓮托生な関係が最高だし、これはもうザビリアが本作のヒーローなのでは!?人化しない!?(少女小説脳)(カプ厨脳)

 

それはまぁ戯言だとして。でも本当にここからどうなるんだろう。
2巻まで読んでみても、ちょっとこの作品がどこへ向かう物語なのか見えてこないんですよね。目標はどこに設定されているのか。
最後に出てきたカラフル三兄弟が本編に絡んできそうな雰囲気はあるけれど、それが何を引き起こすのか。
そもそもフィーアが恐れる魔物との対決もあるのかないのか。

 

もう少し先まで読まないとわからないのかな?
期待したいと思います。

 

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